2019年7月7日 サンデーモーニング(前編)

2019年7月7日 サンデーモーニング(前編)

サンデーモーニング、2019年7月7日分の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
① 貿易規制上の優遇措置「ホワイト国」からの韓国除外について報道された部分
② 参院選の選挙活動について報道された部分
③ 「風を読む」にて捕鯨問題と正義について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
① 貿易規制上の優遇措置「ホワイト国」からの韓国除外について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
韓国は、日本に輸出規制の強化を突き付けられ、韓国は大きな痛手を受ける恐れがあると伝えられる。韓国外務省報道官の会見映像に切り替わり、「この措置の撤回を促します(字幕)」と話す映像が流される。韓国では怒りの声が上がり、韓国政府は強く反発。WTOに提訴する構えだと伝えられる。日本政府は安全保障上の措置と説明するが、韓国では徴用工問題の対抗措置との見方が広まっているとナレーション。安倍首相が「禁輸するのではない。今までの優遇措置は取れませんね、ということ」と話す映像の後、ホワイト国について簡単な説明がされ、日本政府は韓国をホワイト国からはずす方針だと伝えられる。
専門家は、今回の措置は日本に跳ね返ってくる恐れがあると指摘するとナレーション。日本総合研究所・向山英彦研究員のインタビュー映像に切り替わり、「韓国の半導体輸出の8割が中国向け」「日本が世界から批判を受けてしまうような事態になることを考える必要がある」と話す映像が流される。
日韓合意に基づき設立された「和解・癒やし財団」も正式に解散され、両国の対立はさらに深まっている、と伝えられVTRは終了した。

【アナウンサーによるパネル説明】
・輸出規制の対象となった品目は、半導体に塗る感光材や洗浄、ディスプレイを作る際に使われる
・韓国がホワイト国からはずれると、契約ごとに輸出審査を行うことになる
・輸出審査には90日がかかるため、半導体製造が基幹産業である韓国経済への打撃となる可能性がある
・対象品目は、日本メーカーが高い技術力により70~90%のシャアを占める
・高純度の維持には高額な設備が必要となるため、外国企業が新規参入しづらい
・対象品目は長期保存ができないため、来月には生産に影響が出始めるおそれがある

【コメンテーターの発言】
田中秀征氏(全文):この間あの、中国と日本の首脳会談で、永遠の隣国という。再確認しましたよね。だけど、永遠の隣国って言ったら、韓国がまさにね。もっと近いところにあるわけなんで。それで、やっぱりこれから、政治経済、社会文化、あらゆることが、歴史的に重なり合ってきてるということと、安全保障の問題とか、もちろん国際政治の問題。あるいは自然災害の問題。何か起きた場合には、必ず一心同体のようにして対応しなきゃいけない問題もあるし、韓国の場合には特にその、自由陣営の一員としてね、やっぱりアメリカと日本と韓国って形のつながりの中で、これからアジアでね、一つの筋を通していかなきゃいけない。そういうことですから、僕はね、最近の韓国を見てると腹の立つことばかりで正直に言ってね、打ち明けて。文政権なんて特にそうなんですが、しかし、どちらかが我慢しなければ終わらないとしたら、やっぱりこちら側が我慢した方がいいというふうに僕は思うんですね。だから、相当の報復合戦になるにしても、とにかくいつかこちらからね、先に我慢しようと。そういう気持ちでいるんですけどね。

大宅映子氏(全文):世界中がね、自国ファーストで自分の国だけが大事っていうふうな風潮ってありますよね。なんか角突き合わせてるっていう、イライラしたね、がちがちのところがあって。ある種チキンレースみたいになって、どっちがやるかみたいなことになって。その中にね、真っ只中に日本が突っ込んでいくっていうのは、うーんちょっとなっていう。もう私も本当に韓国のやることは、なんでっていうことは山のようにありますけれど、でもこのやり方見てると、世界から言われてるなんか、安倍さんがトランプになったとかね、そういう言われ方をする。そこまでやるのかなっていうのは、ちょっと私もあんまり、肌感覚として合わないって言う気がします。

岡本行夫氏(要約):文政権に対して対抗措置を取りたいという気持ちはよくわかるが、ずいぶん拙劣なやり方だと思う。韓国をWTO提訴に追いやって、日本はそこで勝てるのか。この間も韓国の水産物の輸入規制対して自信満々でWTOに提訴して、無様に負けた。今度は勝てる保証はない。輸出管理をしていない相手国に輸出しているところを、麗々しく言わずに事実上規制していけば、国際的非難をかわせる。もっとうまいやり方があると思う。

新井紀子氏(要約):アメリカ企業が使う品目もある。万が一アメリカから「やめろ」と言われたら、どうするのかなと思った。そういうことを言われたら、拳を下すのか、どうやって拳を下すのか、気になった。

青木理氏(全文):ちょっと本当冷静になった方がいいと思いますね。この間、ついこの間、大阪でG20サミットがあって、そこで自由公正透明な貿易の実現に努力するっていう、一応首脳宣言をね、不十分だけど出して、議長国の日本が、その直後にこんなことやったら、自由貿易体制ってものを傷つけるっていうのもあるし、直後に、このあとやるんでしょうけれど、米朝が板門店で会いましたですよね。これどうも、動き出すんじゃないかと。これまあ、ご存知の通り、二人のトップっていうのは、気ままな人達なので、本来は変な合意しないかとか、支えたりとか連携しながらしなくちゃいけない日韓なのに、その芽をここで思いっきり叩き潰して大丈夫なのっていうのもありますし、そもそもなんですけど、1965年の日韓請求権協定で、これはもう解決済みだっていうのが日本の立場で。それは一応一理あるんですよ。あるんだけれけども、しかし国家間の協定で個人までの、個人の権利までは消せないっていうのは、これは日本政府も認めてきたわけですよね。だから、こういう形で徴用工が出てきたってのは、1965年の協定、政治的な妥結の、ある種穴が今になって、いろいろ噴き出てるわけ関口さんがおっしゃるように、本来は日本と韓国の首脳が、政治的スタンスが違っても向き合って努力しなくちゃいけないのに、こんなことをして、かつ、これそもそもは日本の戦争中の問題ですから、これ中国や北朝鮮はもちろんですけど、こんな通商圧力でやるってことに対して、欧米も多分支持してくれないですよね。っていうことなので、もう少し冷静になって考えて、ひょっとすると選挙目当てなのかもしれないですけど、取り返しのつかないことになるんじゃないかなという気はしてますけどね。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の4点です。

1、田中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、大宅氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
4、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、田中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
田中氏は今回の報道で、以下のように述べています。

田中氏(抜粋):この間あの、中国と日本の首脳会談で、永遠の隣国という。再確認しましたよね。だけど、永遠の隣国って言ったら、韓国がまさにね。もっと近いところにあるわけなんで。それで、やっぱりこれから、政治経済、社会文化、あらゆることが、歴史的に重なり合ってきてるということと、安全保障の問題とか、もちろん国際政治の問題。あるいは自然災害の問題。何か起きた場合には、必ず一心同体のようにして対応しなきゃいけない問題もあるし、韓国の場合には特にその、自由陣営の一員としてね、やっぱりアメリカと日本と韓国って形のつながりの中で、これからアジアでね、一つの筋を通していかなきゃいけない。そういうことですから、僕はね、最近の韓国を見てると腹の立つことばかりで正直に言ってね、打ち明けて。文政権なんて特にそうなんですが、しかし、どちらかが我慢しなければ終わらないとしたら、やっぱりこちら側が我慢した方がいいというふうに僕は思うんですね。だから、相当の報復合戦になるにしても、とにかくいつかこちらからね、先に我慢しようと。そういう気持ちでいるんですけどね。

要旨をまとめると、
・日中会談で互いに永遠の隣国ということを確認したが、韓国はもっと近いところにある。また政治経済や社会文化などが歴史的に重なっている。よって安全保障や国際政治、自然災害など一心同体で対応しなければならない。
・韓国は自由主義陣営の一員で、日米韓で連携していく必要がある。よって日韓の対立はどちらかが我慢すべきであり、報復合戦をするくらいなら日本が我慢すべきである。

というものです。

しかしながら、
・日本からの距離や社会文化の類似は、現在の安全保障や国家間の関係とは何ら関係がない。したがって、日韓で軌を一にする必要があるという主張の根拠にはならない。
・韓国が自由主義陣営だという主張に間違いはないが、現在の文政権は北朝鮮との協調を強く志向しており、また国際的な制裁を無視した「瀬取り」や今回の制裁の背景にある危険物品のずさんな管理など、自由主義陣営の一員としての資格が疑われている。
・日本が一方的に我慢すべきだという主張には何ら合理性がなく、政治的に偏った意見である。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での田中氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、大宅氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
大宅氏は今回の報道で、以下のように述べています。

大宅氏(抜粋):世界中がね、自国ファーストで自分の国だけが大事っていうふうな風潮ってありますよね。なんか角突き合わせてるっていう、イライラしたね、がちがちのところがあって。ある種チキンレースみたいになって、どっちがやるかみたいなことになって。その中にね、真っ只中に日本が突っ込んでいくっていうのは、うーんちょっとなっていう。もう私も本当に韓国のやることは、なんでっていうことは山のようにありますけれど、でもこのやり方見てると、世界から言われてるなんか、安倍さんがトランプになったとかね、そういう言われ方をする。そこまでやるのかなっていうのは、ちょっと私もあんまり、肌感覚として合わないって言う気がします。

要旨をまとめると、
・自国ファーストの流れが世界中で起きており、互いにチキンレース化している状況に日本が突っ込むべきではない。
・こうしたやり方をしてしまうと、安倍首相がトランプ化したと言われてしまう。肌感覚に合わない。

というものです。

しかしながら、
・今回の決定は「危険物品の安全な管理ができない韓国へ、輸出上の優遇を止める」ということに過ぎない。したがって、「韓国への報復だ」「チキンレースだ」という主張は事実に即していない。
・「安倍首相がトランプ化したと世界に言われる」という主張に何ら根拠はない。また、大宅氏の肌感覚は根拠足りえない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での大宅氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。

青木氏(抜粋):ちょっと本当冷静になった方がいいと思いますね。この間、ついこの間、大阪でG20サミットがあって、そこで自由公正透明な貿易の実現に努力するっていう、一応首脳宣言をね、不十分だけど出して、議長国の日本が、その直後にこんなことやったら、自由貿易体制ってものを傷つけるっていうのもあるし、直後に、このあとやるんでしょうけれど、米朝が板門店で会いましたですよね。これどうも、動き出すんじゃないかと。これまあ、ご存知の通り、二人のトップっていうのは、気ままな人達なので、本来は変な合意しないかとか、支えたりとか連携しながらしなくちゃいけない日韓なのに、その芽をここで思いっきり叩き潰して大丈夫なのっていうのもありますし、そもそもなんですけど、1965年の日韓請求権協定で、これはもう解決済みだっていうのが日本の立場で。それは一応一理あるんですよ。あるんだけれけども、しかし国家間の協定で個人までの、個人の権利までは消せないっていうのは、これは日本政府も認めてきたわけですよね。だから、こういう形で徴用工が出てきたってのは、1965年の協定、政治的な妥結の、ある種穴が今になって、いろいろ噴き出てるわけ関口さんがおっしゃるように、本来は日本と韓国の首脳が、政治的スタンスが違っても向き合って努力しなくちゃいけないのに、こんなことをして、かつ、これそもそもは日本の戦争中の問題ですから、これ中国や北朝鮮はもちろんですけど、こんな通商圧力でやるってことに対して、欧米も多分支持してくれないですよね。っていうことなので、もう少し冷静になって考えて、ひょっとすると選挙目当てなのかもしれないですけど、取り返しのつかないことになるんじゃないかなという気はしてますけどね。

要旨をまとめると、
・G20で不十分ながら自由貿易を掲げた日本が、その直後にこんなことをしたら自由貿易体制を傷つけることになる
・米朝のトップが気まぐれだからこそ協力しなければならない日韓の関係に傷をつけることになる。
・「徴用工問題は日韓請求権協定で解決済み」という立場を日本は取るが、個人の請求権はまだ解決されていない。政治的な妥結の穴が今になって噴き出ている。
・日韓首脳が政治的スタンスの違いを超えて努力すべきなのに、選挙目当てで通商圧力をかけるなどということをすべきでない。さらに日本の戦争中の問題なので、欧米も支持しないだろう。

というものです。

しかしながら、
・今回日本が韓国に対して実施する措置は「危険物品の安全な管理ができない韓国へ、輸出上の優遇を止める」というものであり、自由貿易体制に対して何ら逆行するものではない。
・「米朝のトップとどう向き合うか」という問題と「日韓の通商上の問題をどう解決するか」という問題とは何ら関係がない。
・日韓請求権協定により、個人の請求権についてその責任を持つのは韓国で日本ではない。また、協定締結時に日韓双方の政治的な妥結が存在するという主張は明確な虚偽である。
・今回の措置は優遇の停止であり、通商圧力ではない。また、選挙目当てだという主張には何ら根拠がなく、こうした決めつけは政治的公平性を欠く。
・「戦争中の問題だから欧米は日本を支持しない」という主張に根拠はない。また、慰安婦問題解決の際に日本を支持した欧米諸国の反応を見れば明らかな虚偽であると分かる。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

4、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「日本は徴用工問題などに対抗して韓国に圧力をかけるべきではない」「日韓は対立せず連携していくべきだ」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「今回の措置は安全保障上の優遇の停止であり、通商圧力ではない」「たいりつではなく措置でしかない」「日本はしっかり韓国に対して主張をするべきだ」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② 参院選の選挙活動について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

③ 「風を読む」にて捕鯨問題と正義について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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