サンデーモーニング、2019年7月28日分の検証報告(中編)です。
今回の報告では、
① 日本の対韓輸出優遇措置廃止がWTOで取り上げられた件について報道された部分
② ボリス・ジョンソン英首相誕生について報道された部分
③ 「風を読む」にて参院選の結果について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
中編で検証するのは、
② ボリス・ジョンソン英首相誕生について報道された部分
となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
【VTR要約】
トランプ大統領から祝福を受けながら、ポリス・ジョンソン氏がイギリスの新しい首相に就任した。しかしロンドン市内では反ボリスデモが連日行われている。ジョンソン氏は英国のトランプ大統領とも呼ばれ、オックスフォード大学を卒業したエリートでありながら庶民さを演じ人気を集めている。3年前の国民投票では、離脱派のリーダーとしてイギリスの労働者が移民に仕事を奪われていると訴え勝利に導き、離脱強硬派を閣僚に次々と起用。10月末にEUを離脱すると宣言した。
【アナウンサーによるパネル説明】
・合意なき離脱により、GDPが一年以内に最大8%縮小し、関税手続きなどで経済活動が停滞し、10分の1の会社が倒産する可能性があるとの試算が出ている(イングランド銀行の試算)
・3年前の国民投票について正しかったと答えた人は40%。間違っていたと答えた人が47%。
【コメンテーターの発言】
関口宏氏:ちょっと待って、これ、イングランド銀行による試算。真音さん、これはこうなる可能性は高いんですか?
幸田真音氏(全文):はい、あり得ると思いますね。あと、まあ日本から企業1000社ぐらいいってるんですけど、既にいろんな手当をしてるところが結構多いんですけれども、実際になるかどうかっていうのはわかんなくてこう、余計なコストをかけてるところがありますよね。ただあのこの、トランプに確かに似てるってよく言われますけど、この方、もっと悪いんじゃないって声もあって。っていうのは、直前で手のひら返し、平気でやっちゃうところがあるので、やるぞやるぞって言ってて、直前になってやめたってことも無きにしも非ずってところの懸念もあるのと、本当に離脱しちゃったらスコットランドが独立ってまた言い出すかもしれないと。その辺でもかなり欧州の混乱が予想されますよね。貿易と流通だけじゃなくてね。
古田大輔氏(全文):あの、そもそも、このEU離脱に賛成した人って、52%。反対48%で本当に白票の勝利だったんですよね。で、今回のこの世論調査以外でも、例えばその、ジョンソン首相の誕生に関して、支持が28%。失望が47%っていう状況なのに、今ジョンソン首相は「いや、離脱が民意だから離脱する」と言っていると。で、あの、彼は民主主義のルールです。間違いなく。ただ、じゃあ彼が言っていることが民主主義の理念に則っているのかというと、これは本当に疑問視されないといけないし、じゃあその理念とルールが解離したときに、じゃあ我々は民主主義をどう考えるべきなのかっていうのも議論する必要が、これはもうイギリスだけではなくて、日本でもアメリカでもあると思います。
寺島実郎氏(要約):ジョンソン氏は合意なく離脱に踏み切ったときの清算金を支払わないと言い始めてるが、その後には英国民のリスクとコストが重くのしかかる。イギリスの危うさと日本の危うさが国際論壇、アメリカの論壇では大変話題になっているということをよく日本人は考えておいた方がいい。
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。
1、幸田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、古田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
それぞれ順を追って解説します。
1、幸田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
幸田氏は今回の報道で、以下のように述べています。
幸田氏(抜粋):トランプに確かに似てるってよく言われますけど、この方、もっと悪いんじゃないって声もあって。っていうのは、直前で手のひら返し、平気でやっちゃうところがあるので、やるぞやるぞって言ってて、直前になってやめたってことも無きにしも非ずってところの懸念もあるのと、本当に離脱しちゃったらスコットランドが独立ってまた言い出すかもしれないと。その辺でもかなり欧州の混乱が予想されますよね。貿易と流通だけじゃなくてね。
要旨をまとめると、
・ジョンソン英首相はトランプ米大統領に似ていると言われるが、実際はもっと悪いのではと言われる。
・この人は直前で手のひら返しをよくするので、EU離脱についても手のひら返しをするかもしれない。
・また、EU離脱を本当にしてしまうとスコットランドが独立を要求し始める懸念もあり、欧州の混乱が予想される。
というものです。
しかしながら、
・ジョンソン英首相に対してその断片的な発言などを根拠に「良い」「悪い」という主観的な指標でレッテル張りをすることは事実に基づいておらず、政治的に公平とは言えない。またトランプ米大統領に似ているから悪い、という主張はトランプ米大統領が悪いという前提に立った主張であり、これも政治的公平性を欠く。
・EU離脱とスコットランドの独立には直接的な因果関係はない。
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での幸田氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
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2、古田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
古田氏は今回の報道で、以下のように述べています。
古田氏(抜粋):あの、そもそも、このEU離脱に賛成した人って、52%。反対48%で本当に白票の勝利だったんですよね。で、今回のこの世論調査以外でも、例えばその、ジョンソン首相の誕生に関して、支持が28%。失望が47%っていう状況なのに、今ジョンソン首相は「いや、離脱が民意だから離脱する」と言っていると。で、あの、彼は民主主義のルールです。間違いなく。ただ、じゃあ彼が言っていることが民主主義の理念に則っているのかというと、これは本当に疑問視されないといけないし、じゃあその理念とルールが解離したときに、じゃあ我々は民主主義をどう考えるべきなのかっていうのも議論する必要が、これはもうイギリスだけではなくて、日本でもアメリカでもあると思います。
要旨をまとめると、
・EU離脱に賛成したのは国民投票のうち52%で薄氷の勝利だった一方、ジョンソン英首相の誕生を支持する人が28%、不支持が47%という状況がある。にもかかわらずジョンソン英首相は「離脱が民意だ」としているのは問題だ。
・ジョンソン英首相は民主主義のルール(に則って誕生した代表)であるが、彼が言っていることが民主主義の理念に則っているかどうかは疑問視されるべきだ。
というものです。
しかしながら、
・ボリス・ジョンソン氏がイギリス首相になったことについての国民の評価と、EU離脱についての国民の意思はまったく別の話である。EU離脱はイギリスの国民投票の結果を受けて決まっており、イギリス国民の民意を受けて決定しているため、EU離脱が民意に寄らないという主張は誤りである。
・ジョンソン英首相が民主主義の理念に反したリーダーであるという主張には根拠がなく、またこうした反EU離脱等の立場に偏った主張は政治的な公平性を欠く。
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での古田氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「EU離脱がイギリスの民意かどうかは疑わしい」「EU離脱を強引に進めると英国や欧州にデメリットが生じてしまう」という立場に立った意見ばかりが出てきました。
ですがこの問題に関しては「国民投票の結果は即ちイギリスの民意だ」「開かれた国境という理念が先行し経済低迷やテロ対策などの危機管理能力の低さを考えればEU離脱を先延ばしにすべきではない」といった反対の意見があります。
にもかかわらず、今回の報道におけるVTRやパネル説明ではそうした意見をほとんど取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の中編となります。中編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
③ 「風を読む」にて参院選の結果について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。
① 日本の対韓輸出優遇措置廃止がWTOで取り上げられた件について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。