7月18日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。
・後藤氏の憲法に関するスタジオ解説
早速放送内容を確認していきます。
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【スタジオ】
富川悠太アナ:参院選まであと3日となりました。今日はですね、憲法改正についてお伝えします。安倍総理は憲法9条に自衛隊を描き込むと訴えていますが、これについて各党はどう考えているんでしょうか。賛成?反対?どちらでもない?
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【VTR】
自民党 安倍晋三総裁:しっかりと憲法を議論していく候補者や政党を選ぶのか、あるいは議員としての責任を放棄して、審議を拒否して、議論すらしない候補者や政党を選ぶのか。それを決める選挙でもあります。
ナレーション:憲法を議論するのか、しないのか。これまでの国政選挙では、街頭でほとんど触れてこなかった改憲について、今回安倍総理は繰り返し訴えています。これは参院選の公示前日、自民党が全所属議員に配った資料です。そのタイトルは「憲法を議論する政党か、憲法を議論しない政党か?」こう打ち出しています。他の党は、これについて街頭ではほとんど触れていません。改憲を目指す日本維新の会の松井代表は。
日本維新の会 松井一郎代表:我々以外の野党の皆さんが妨害活動をされ、議論することすらできておりません。真面目に議論する、そういう形をきちんと作っていただきたい。
ナレーション:一方、公明党の山口代表は。
公明党 山口那津男代表:議論を全く否定しているような政党はないのではないでしょうか。そうした課題、総点の設定自体が有権者にはもう一つ響きづらいのではないか。
ナレーション:この一年、憲法の具体的な中身は議論されていません。国民投票の際のCM規制を巡って与野党で折り合いがつかなかったからです。
立憲民主党 枝野幸男代表:国民投票法に欠陥があるから改正しましょうということで、与野党で議論を始めていて、それがまだ途中なんです。ところがその議論をしないで、まずは自分たちのやりたいことだけ採決すると。これでは先に進みません。
国民民主党玉木雄一郎代表:公平公正な国民投票を実現するためにも、資力、お金の差によって差が出てはいけないという立場ですから。しっかりとした議論を速やかに行っていただきたい。
ナレーション:問われるべきは、安倍総理が掲げる9条改憲の是非だという訴えも。
共産党 志位和夫委員長:自民党の参院選公約では、早期の憲法改正を目指すとあります。安倍首相による9条改正を許すかどうか、そこに争点があります。
社民党吉川元幹事長:いま安倍政権は、この憲法をまさに変えようとしている。絶対にこの策動を許すわけにはまりいません。
ナレーション:安倍総理は、こうも訴えています。
自民党安倍晋三総裁:私たちはこの自衛隊、憲法にしっかりと明記をする。憲法論争に終止符を打つために、憲法にしっかりと自衛隊と明記しますと公約でお約束をしている。
ナレーション:他の党は、どう考えるのでしょうか。
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【スタジオ】
富川悠太アナ:安倍総理、訴えていましたけれども、自民党は憲法9条1項2項を維持したうえで「自衛隊」を明記すると主張しています。
徳永有美アナ:そうなんですね。ではこの自民党の主張を自衛隊を明記することに関して、賛否というものを他の各党に聞いてみたところ、賛成という回答は得られませんでした。どちらでもないというのがこちらの2党(公明・維新)です。公明党は「多くの国民は自衛隊を理解・支持し、違憲とは考えていない。今後慎重に議論されるべき」と主張しました。日本維新の会は「自衛隊は合憲だが、違憲という声があることも承知している。だから「憲法裁判所」を設置して考えるんだ」というふうに言っています。そして反対がこちらの4党(立憲・国民・共産・社民)です。立憲民主党は「いわゆるフルスペックの集団的自衛権の行使が可能となりかねない。専守防衛を旨とした平和主義が覆る」という回答でした。国民民主党は、「国が自衛権を行使できる限界を曖昧にしたまま明記するべきではない」と答えています。そして共産党は「自衛隊を憲法に明記することによって、9条は死文化され、無制限の海外での武力行使が可能になる」ので反対だという風に答えています。社民党、「集団的自衛権を行使する違憲状態の自衛隊の明記は9条を死文化する」ということで反対をしています。
富川悠太アナ:後藤さん、これまでの選挙で安倍総理は憲法改正についてほとんど触れていなかったんですけども、今回は争点の一つとして訴えています。なんでなんでしょうか。
後藤謙次氏:安倍総理は2020年中に憲法改正して、新しい憲法を施行したいという目標を掲げていましたね。ところがこの間の通常国会では、衆議院ではたった3分しか憲法審査会、議論してないんですね。そこで今回の参議院選挙で、議論する政党を選ぶんですか、しない政党を選ぶんですかと有権者に訴えてですね、これで仮に今維持している改憲勢力の3分の2に届かなくても、過半数を取ればこのお墨付きを得たということで、次の臨時国会以降、憲法審査会を動かしながら次のステップに行こうと。そのために敢えて今回、争点化したんだと思いますね。
徳永有美アナ:となるとその3分の2に届かなくても、憲法改正に向けて現実味が増してくると言うことになるんでしょうか。
後藤謙次氏:ことはそれほど単純じゃないと思いますが、野党側はこの参議院選のあとを非常に警戒しているんですね。つまり3分の2が減ったとしても、これまでの自民公明維新を中心にした改憲勢力、これでは物事は動かない。つまりここにプラスアルファの勢力を加えることによって、枠組みを変えて次のステップに行こうと、そこを非常に警戒しているわけですね。ただそこから先の、本当の中身はどうなのか、これだけバラバラでですね。風呂敷では憲法改正の一つにくるまれていますが、その結び目を解いてしまうと、中から出てくるのはバラバラで、つまり審議が始まったとしても一気に発議まで行くというのはなかなかハードルが高いんじゃないかと思いますね。
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【検証部分】
今回検証する発言は以下の部分です。
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富川悠太アナ:安倍総理、訴えていましたけれども、自民党は憲法9条1項2項を維持したうえで「自衛隊」を明記すると主張しています。
徳永有美アナ:そうなんですね。ではこの自民党の主張を自衛隊を明記することに関して、賛否というものを他の各党に聞いてみたところ、賛成という回答は得られませんでした。どちらでもないというのがこちらの2党(公明・維新)です。
公明党は「多くの国民は自衛隊を理解・支持し、違憲とは考えていない。今後慎重に議論されるべき」と主張しました。
日本維新の会は「自衛隊は合憲だが、違憲という声があることも承知している。だから「憲法裁判所」を設置して考えるんだ」というふうに言っています。そして反対がこちらの4党(立憲・国民・共産・社民)です。
立憲民主党は「いわゆるフルスペックの集団的自衛権の行使が可能となりかねない。専守防衛を旨とした平和主義が覆る」という回答でした。
国民民主党は、「国が自衛権を行使できる限界を曖昧にしたまま明記するべきではない」と答えています。
そして共産党は「自衛隊を憲法に明記することによって、9条は死文化され、無制限の海外での武力行使が可能になる」ので反対だという風に答えています。
社民党、「集団的自衛権を行使する違憲状態の自衛隊の明記は9条を死文化する」ということで反対をしています。
後藤謙次氏:安倍総理は2020年中に憲法改正して、新しい憲法を施行したいという目標を掲げていましたね。ところがこの間の通常国会では、衆議院ではたった3分しか憲法審査会、議論してないんですね。そこで今回の参議院選挙で、議論する政党を選ぶんですか、しない政党を選ぶんですかと有権者に訴えてですね、これで仮に今維持している改憲勢力の3分の2に届かなくても、過半数を取ればこのお墨付きを得たということで、次の臨時国会以降、憲法審査会を動かしながら次のステップに行こうと。そのために敢えて今回、争点化したんだと思いますね。
徳永有美アナ:となるとその3分の2に届かなくても、憲法改正に向けて現実味が増してくると言うことになるんでしょうか。
後藤謙次氏:ことはそれほど単純じゃないと思いますが、野党側はこの参議院選のあとを非常に警戒しているんですね。つまり3分の2が減ったとしても、これまでの自民公明維新を中心にした改憲勢力、これでは物事は動かない。つまりここにプラスアルファの勢力を加えることによって、枠組みを変えて次のステップに行こうと、そこを非常に警戒しているわけですね。ただそこから先の、本当の中身はどうなのか、これだけバラバラでですね。風呂敷では憲法改正の一つにくるまれていますが、その結び目を解いてしまうと、中から出てくるのはバラバラで、つまり審議が始まったとしても一気に発議まで行くというのはなかなかハードルが高いんじゃないかと思いますね。
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この発言の問題点は以下の2点です。
・多くの論点を提示できていない解説であった可能性がある
・事実と異なるおそれのある発言があった可能性がある
1点目から順に検証していきます。
各党の9条に関する意見について触れており、9条を変えないのか、変えるべきなのかについてと、その理由について述べられています。
しかし肝心な自民党案についてなぜ自衛隊を明記するのかといったことについての報道がありませんでした。
自民党の憲法観として、自衛隊は日本の国防を担っていく上で必要なものであるにも関わらず、自衛隊の存在について論争がある現状がある。そこで自衛隊の存在を文句なしに認めるために自衛隊を明記する、こういった目的で憲法改正を目指しています。
また自衛隊明記の改憲をするかどうかについては日本国憲法ができた経緯や自衛隊ができた経緯についても触れるべきでしょう。
日本国憲法はGHQが8日間で作った素案を基に作られていきました。日本が連合国にとって脅威にならないよう、戦力を放棄しました。
しかし、1950年に勃発した朝鮮戦争では米軍が朝鮮半島に行き、日本の安全を守るために自衛隊の前身組織である警察予備隊が組織されました。
その後も日本の安全を守るために自衛隊は存在してきました。
このような多くの論点が欠けた放送は以下の放送法に抵触する恐れがあります。
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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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次に2点目についてみていきます。
後藤氏は選挙後の野党の動きについての解説を行っています。
解説を簡単にまとめます。
選挙の結果、改憲勢力が3分の2に届かなかった場合、与党は野党側を巻き込んで憲法改正に動いてくると思われるため野党側としてはその部分を警戒している、といったような解説をしていました。
そして、憲法に対する各党の考え方はバラバラであるため、発議までもっていくことは難しいといった解説をしています。
これは与党側が求めていることと論点がずれています。
与党が主張しているのは、憲法に関して議論をしていこうという主張です。
与党はどういった憲法が望ましのいか、議論していこうとすることを求めているのに対し、後藤氏の解説では発議は難しいという解説をしています。
与党が求めていることが誤って視聴者に伝わってしまう可能性があるこういった発言は以下の放送法に抵触する可能性があります。
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放送法4条
(3)報道は事実をまげないですること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して、今後も監視を続けて参ります。