2019年7月16日 報道ステーション

2019年7月16日 報道ステーション

7月16日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは、以下の点です。

・後藤氏のアメリカやトランプ大統領に関する報道

まずは放送内容から確認していきます。

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【スタジオ】
富川悠太アナ:アメリカの民主党議員4人が、トランプ大統領からTwitterで「さっさと国に帰れ」と差別的な発言をされたとして、そろって会見を行いました。一方でトランプ大統領は、今度は会見で「嫌ならアメリカから出て行けばいい」と攻撃しました。

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【VTR】
記者:もっと寛容になれないのですか。

トランプ大統領:大事なのは経済発展で、どれだけわが国が好景気かだ。

ナレーション:しかし、アメリカ製品をアピールするこの場で差別発言は再びされました。

トランプ大統領:国に不満があるなら出て行けばいいんだ。この国が嫌いで不満があるなら出て行けばいい。いつも言っていることだ。アメリカに不満があって文句ばかり言うならただ出て行けばいい、今すぐに。

ナレーション:トランプ大統領が出て行けと言っているのは、非白人系の民主党議員たちに向かってです。

トランプ大統領:彼女たちはこの国を憎んでいる。この国を憎んでいるんだ。情熱を込めて憎んでいると言ってもいい。

ナレーション:子どもの頃に内戦下のソマリアから難民として逃れてきたオマル下院議員に対しては。

トランプ大統領:この議員たちは――静かに静かに、静かに。1人は政府が失敗し国家も失敗したソマリア出身だ。ソマリアからここに来た。

ナレーション:特定の国の出身者であったり、その子孫であることを理由に「国から出て行け」と言うのは典型的なヘイトスピーチです。つまり、トランプ大統領は差別主義者ということになります。今さらですが。

記者:白人至上主義者が共通点を見いだしているが。

トランプ大統領:何の懸念もない。大勢の人が賛同してくれている。

ナレーション:トランプ大統領による一連の差別的なツイートや発言に対するアメリカ国民の反応です。

アメリカ国民:明らかに差別主義者だ。誰も驚かないよ。トランプはいつでもそうさ、選挙のためだろ。

アメリカ国民:彼は人種差別主義者で、この国にとってよくない。賢くなれ、二度と彼に投票するな。政権から追い出せ。

ナレーション:15日、トランプ大統領から重ねて国から出て行けと言われた女性議員たちが会見を開きました。

民主党 オカシオコルテス下院議員:まず全米の子供たちに伝えたい。大統領が何を言おうとこの国は君たち、そしてみんなのものだと。そして今日この考え方を否定しようとする発言があった。

民主党 プレスリー下院議員:ホワイトハウスの住人がのけ者にし、黙らせようとしても、私たちは4人だけではない。私たちには無視され取り残されてきた人たちの声を代弁する義務がある。より公平で公正な世界を築く意欲があるなら誰でも私たちの仲間だ。

民主党 オマル下院議員:この国に住む有色人種なら一度は同じ事を言われた経験があるはず。つけ上がらせないように反応しない。大統領のようにイスラム嫌いや憎悪や偏見を持つ人たちは、私たちが身を守ろうと反応するのを楽しんでいるから。

民主党 トレイブ下院議員:残念ながら今後も大統領から不快で偏狭な言葉が発せられるだろう。だが、それが彼の本音だ。トランプ政権はこの国に住む人を繰り返し傷つけてきた。私たちは今後も大統領に、アメリカの法と国民に対し責任を取らせるように力を尽くす。

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【スタジオ】
徳永有美アナ:いま、「偏狭な」という言葉がありましたが、本当に差別発言だと思うんですね。トランプ大統領というのはこういうような方なんでしょうか。それとも何か意図があってということなんでしょうか。

後藤謙次氏:一番の意図はやはり大統領選挙での成功体験でしょうね。岩盤と言われるトランプ支持層。これさえ固めておけば次の大統領選挙も当選できると確信に近くなってきてるんじゃないでしょうか。今日非常に注目をしたのは、ワシントンポストが報じているんですが、これまで共和党の中からもこの種の発言があれば批判的な声が出たのが、今回は共和党内からも出なくなってしまったと。つまりそれだけいっそう分断化が進んでしまったと。一方この民主党内からも、民主党内の亀裂を呼び起こそうと発言したんではないかと言われているわけです。ですからトランプ大統領がこうやって発言すればするほど、世界No.1のビッグカントリーがこの種の発言を流布させる、それが海外に伝播する。つまりアメリカ・ファーストもそうですよね。そしてこの種の人種差別的な発言がどんどん広がっていくと、世界全体がこの寛容の社会からほど遠い、非常に差別的な空気に満ちてしまう。そういう意味ではトランプ大統領の責任はきわめて大きいと言っていいと思います。ただ、トランプ大統領にしてみれば、これによって、イスラム教徒を批判することによってイスラエルを支持している福音派と呼ばれるようなキリスト教徒の票を自分たちの手許に引き寄せるという意味では、やはり大統領にとっては確信に近いことなんでしょうね。

徳永有美アナ:そういう発言が受け容れられるというか、票に繋がるという土壌がアメリカの抱える混迷ぶりみたいな、闇みたいなものを。

後藤謙次氏:そうですね。今までそういうアメリカではなかったですよね。アメリカ合衆国憲法は、アメリカで生まれた人はアメリカ人なんだと、真っ先に決めてるわけですね。それすらにも反しているわけですから、これはしっかり考えていく必要があると思いますね。

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【検証部分】

今回検証する発言は以下の箇所です。

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後藤謙次氏:一番の意図はやはり大統領選挙での成功体験でしょうね。岩盤と言われるトランプ支持層。これさえ固めておけば次の大統領選挙も当選できると確信に近くなってきてるんじゃないでしょうか。今日非常に注目をしたのは、ワシントンポストが報じているんですが、これまで共和党の中からもこの種の発言があれば批判的な声が出たのが、今回は共和党内からも出なくなってしまったと。つまりそれだけいっそう分断化が進んでしまったと。一方この民主党内からも、民主党内の亀裂を呼び起こそうと発言したんではないかと言われているわけです。ですからトランプ大統領がこうやって発言すればするほど、世界No.1のビッグカントリーがこの種の発言を流布させる、それが海外に伝播する。つまりアメリカ・ファーストもそうですよね。そしてこの種の人種差別的な発言がどんどん広がっていくと、世界全体がこの寛容の社会からほど遠い、非常に差別的な空気に満ちてしまう。そういう意味ではトランプ大統領の責任はきわめて大きいと言っていいと思います。ただ、トランプ大統領にしてみれば、これによって、イスラム教徒を批判することによってイスラエルを支持している福音派と呼ばれるようなキリスト教徒の票を自分たちの手許に引き寄せるという意味では、やはり大統領にとっては確信に近いことなんでしょうね。
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この発言の問題点は以下の2点です。

・印象操作と思われる発言があった可能性がある
・政治的に公平ではない発言であった可能性がある

1点と2点目を合わせて、検証していきます。

後藤氏は今回取り上げられているようなトランプ大統領の発言は非常に差別的なものであり、そういった差別的な発言が世界に広まってしまう恐れがある、という趣旨の解説を行っています。
またトランプ大統領の今回の発言に対して、共和党内から反対の声が上がらなかったことはアメリカの分断化の象徴であるといった解説も行っています。

これらの発言についてですが、後藤氏の主観によるものであり、解説としては不適切なものであるといえます。具体的にはこの解説はトランプ大統領の発言を一面的にしかとらえていない解説であるといえます。この点について検証していきます。

トランプ大統領が登場する以前から、グローバル化が進んだ現代では国境に堺がなくなっていく「ボーダレス化」が進んでいきました。様々な地域で様々な人々が暮らすようになっていったのです。

こういったトレンドがあるため多様性が広まり、寛容な世界を目指していくべきというのは大変聞こえは良いですが、問題も発生しています。

シリアの難民を大量に迎えたドイツを主としたヨーロッパ国々では治安が悪化し、ドイツではメルケル首相は国民からの支持を失い、党首の座を追われてしまいました。

トランプ大統領のアメリカでも同様に、不法移民が大量にアメリカへと入国しています。

アメリカで特筆すべきなのは「サンクチュアリシティ」の存在です。
「サンクチュアリシティ」とはアメリカ国内へと入国してきた“不法”移民に寛容な政策をしている都市のことを指します。

不法移民に対してどのような待遇をしているかは都市によって異なりますが一例を紹介すると、低所得者向けの医療保険を受けられることや住宅補助や職業訓練を受けられることなどが挙げられます。

こういったサービスの財源はアメリカ国民が納めた税金です。
また正式な手続きをして移民となった人々に対してもフェアではありません。移民と認められるまでの手続きは非常に煩雑であり、3年ほどかかってやっとアメリカで暮らせる人がいる一方で、不法移民はサンクチュアリシティに行けば苦労もせずに同様のサービスを受けることができます。

こういった事情こそ、トランプ大統領が当選し、こういった発言があっても支持されることの背景なのです。

アメリカ国内の事情を深く組み取らずに主観によった解説は視聴者に誤った印象を与えかねず、我々はこういった発言を問題だととらえます。

またアメリカの国内の事情をある一方向からしか取り上げないことは以下の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(2)政治的に公平であること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して、今後も監視を続けて参ります。

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