TBS「サンデーモーニング」、2019年8月4日放送回の検証報告(前編)です。
今回の報告では、
① 韓国によるGSOMIA破棄の示唆について報道された部分
② 輸出優遇措置撤回に対する韓国の対抗措置について報道された部分
③ 「表現の不自由展」中止について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
前編で検証するのは、
① 韓国によるGSOMIA破棄の示唆について報道された部分
となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
【VTR要約】
韓国の日本大使館前でGSOMIAの破棄を訴えるデモが行われた。韓国側は、ホワイト国除外の報復としてGSOMIAの破棄をちらつかせている。そんな中、北朝鮮は宣伝サイトでGSOMIAの破棄を主張しており、短距離弾道ミサイルをこの1週間で3回発射。日韓の間に楔を打ち込む狙いがあるとみられる。ロシア・メドベージェフ首相は、北方領土の択捉島を訪れ、改めて実効支配を強調した。ロシアは中国と初の合同軍事作戦を実施。ロシア軍機が日本の領空を侵犯するなど、日韓の対立につけこむような動きを見せている。
【アナウンサーによるパネル説明】
・GSOMIAの破棄が実施されると、日米韓の安全保障の連携にも悪影響を及ぼしかねない
・北朝鮮は飛翔体を相次いで発射している
・中国とロシアも竹島付近で軍用機の合同飛行を実施した
・メドベージェフ首相が北方領土の択捉島を視察し、日本に揺さぶりをかける動きを見せている
【コメンテーターの発言】
岡本行夫氏(要約):韓国は自分を見失っていると思う。GSOMIAのおかげでいろんな情報が韓国にいっているのに、破棄するとそれがなくなってしまう。そんな中、中国とロシアが揺さぶりをかけてきた。ただ基本はアメリカが北朝鮮に対してきちっと対応してないからだと思う。
西崎文子氏(要約):トランプ大統領が北朝鮮に甘いことで、安保がかなり揺らいでいる。日本はアメリカを頼りにしているが、駐留米軍の負担を増大を求めてきている。日本は歴史的にも地理的にも叩きやすい国だと思う。南北朝鮮・中国・ロシアが何かと文句をつけやすい国。そこはきちんと考えて対応しないといけない。
大宅映子氏(全文):ちょっと経済的にもね、韓国が上り調子みたいなところがありますよね。それ、やる気っていうのかな。強くなってる気がしませんか。違いますか? 韓国側がね、日本との差がずーっとあったのが、もうかなり追いついてきたっていう自信みたいなものがあるのかなって。はい。(関口氏の「日本が揺さぶられていて、今こそ外交力が試されてるんじゃないかって思うんだけど」という発言に対し)その戦略がね、あって、将来の着地点が見えてるんならいいんだけど、どうもそうじゃなく剥き出しの感情でこう、やってるように見えるので。外務省は大丈夫なんですか、外務省は。
青木理氏:(全文):だからね、GSOMIAがね、日本が理屈を与えちゃったわけですよ。だって日本が、韓国は安全保障上信用できない国だって言っちゃたわけだから、韓国にしてみれば、じゃあGSOMIAだってできないじゃないかって話になっちゃうわけですよね。で、米朝の問題で、米朝が首脳会談やって、短距離ミサイルはトランプさんもOKだって言い出してるんですよ。ということは、 短距離、長距離じゃなきゃOKだって言ってるわけで。これね、米朝が短距離とか中距離が容認するようなことなったら、困るのは日本と韓国なんです。だから本当は日本と韓国が協力して、そんなところで合意しないでくださいねってやんなくちゃいけないのに、こんな、こんなって言ったら怒られるけど、いがみあってると。皆さんおっしゃるように場当たり的。感情的。戦略がない。その通りだと思うんですよ。
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。
1、大宅氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
それぞれ順を追って解説します。
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1、大宅氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
大宅氏は今回の報道で、以下のように述べています。
大宅氏(抜粋):ちょっと経済的にもね、韓国が上がり調子みたいなところがありますよね。それ、やる気っていうのかな。強くなってる気がしませんか。違いますか? 韓国側がね、日本との差がずーっとあったのが、もうかなり追いついてきたっていう自信みたいなものがあるのかなって。はい。(関口氏の「日本が揺さぶられていて、今こそ外交力が試されてるんじゃないかって思うんだけど」という発言に対し)その戦略がね、あって、将来の着地点が見えてるんならいいんだけど、どうもそうじゃなく剥き出しの感情でこう、やってるように見えるので。外務省は大丈夫なんですか、外務省は。
要旨をまとめると、
・韓国が経済的に成長して自信をつけ、日本に対する対抗意識がどんどん強くなっていることが今日の日韓対立の背景にある。
・中露から外交的な揺さぶりを受けるなかで、日韓対立の将来の着地点を日本は考えていない。日本政府や外務省は剥ぎ出しの感情で動いている。
というものです。
しかしながら、
・財閥企業と中国に大きく依存する韓国経済は決して上がり調子とは言えない。また、小中華思想や日本文化の締め出し、反日教育など、韓国において反日感情は一貫して展開されてきた歴史があり、経済成長がその要因だとする大宅氏の主張は事実に反している。
・輸出管理を管轄するのは経済産業省で外務省ではない。また、今回の輸出優遇措置撤回は安全保障上の懸念を払しょくするために実施されたものであり、日韓対立の将来の着地点を考えていない、感情的に動いているだけだとする大宅氏の主張は事実とは言えない。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での大宅氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
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2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。
青木氏(抜粋): GSOMIAがね、日本が理屈を与えちゃったわけですよ。だって日本が、韓国は安全保障上信用できない国だって言っちゃたわけだから、韓国にしてみれば、じゃあGSOMIAだってできないじゃないかって話になっちゃうわけですよね。で、米朝の問題で、米朝が首脳会談やって、短距離ミサイルはトランプさんもOKだって言い出してるんですよ。(中略)だから本当は日本と韓国が協力して、そんなところで合意しないでくださいねってやんなくちゃいけないのに、こんな、こんなって言ったら怒られるけど、いがみあってると。皆さんおっしゃるように場当たり的。感情的。戦略がない。その通りだと思うんですよ。
要旨をまとめると、
・日本が「韓国は安全保障上信用できない」と言うことが、韓国に対してGSOMIAを廃止する理屈を与えてしまった。
・短距離、中距離ミサイルを容認するなど北朝鮮とアメリカが接近して一番困るのは日韓なので、本来は日韓が協力すべき。にもかかわらずこうした問題で対立する日本は場当たり的で感情的で戦略がない。
というものです。
しかしながら、
・明確な根拠を元に「安全保障上問題がある」と指摘されたことを理由に、指摘した側の国を根拠なく「安全保障上問題がある」と言い返すことは理屈として成立しない。したがって日本が韓国にGSOMIA廃止の理屈を与えたとする青木氏の主張は事実とは言えない。
・アメリカが北朝鮮との融和プロセスの一環として短距離、中距離ミサイルの実験を容認したからといって、日韓の安全保障を脅かすことを承認したということではない。また、安全保障上の懸念払しょくのために行われた今回の輸出規制は戦略的に行われたもので、場当たり的でもなければ感情的でもない。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
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3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「日本が今回輸出規制を行うことは場当たり的で感情的なものだ」「外交的な揺さぶりを受けており、日韓は対立すべきではない」という立場に立った意見のみが出てきました。
ですがこの問題に関しては「安全保障上の懸念を払しょくするために輸出優遇措置を撤回することは戦略的な対応だ」「外交的な揺さぶりがあったからと言って管理貿易の問題を放置すべきではない」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の前編となります。前編では政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
② 輸出優遇措置撤回に対する韓国の対抗措置について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。
③ 「表現の不自由展」中止について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。