TBS「サンデーモーニング」、2019年8月4日放送回の検証報告(中編)です。
今回の報告では、
① 韓国によるGSOMIA破棄の示唆について報道された部分
② 輸出優遇措置撤回に対する韓国の対抗措置について報道された部分
③ 「表現の不自由展」中止について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
中編で検証するのは、
② 輸出優遇措置撤回に対する韓国の対抗措置について報道された部分
となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
【VTR要約】
日本政府はホワイト国から韓国を除外することを閣議決定し、日韓関係は新たな局面を迎えた。韓国の緊急閣僚会議で文大統領は「盗人猛々しい」と強く非難したが、菅官房長官は「禁輸措置ではない」と説明した。ホワイト国からの除外によって、韓国経済が打撃を受けるのは避けられず、韓国側の反発はエスカレートしている。韓国側も対抗措置として、日本をホワイト国から除外し、WTOに提訴する準備を加速させるとしている。日米韓外相会談では、ポンペオ国務長官の発言をめぐり日韓両国でズレが生じるなど、問題解決の糸口は見えない。
【アナウンサーによるパネル説明】
橋谷アナ(全文):いわゆるホワイト国から韓国を除外する問題なんですけれども、担当の世耕大臣は理由について、「あくまでも韓国の輸出管理に不順分な点があることなどを踏まえた運用見直しであって、対抗措置ではない」としています。さらに、「ASEAN諸国など日本と友好関係にある国と同様の扱いに戻すだけで禁輸措置ではない」と話しているんですね。
対する韓国なんですけれども、文在寅大統領。「盗人猛々しい」という言葉を使いまして非常に強く日本を非難しました。「私たちは2度と日本には負けない」というふうに国民を鼓舞するようなことも言っています。一方で、「報復の連鎖を止められる道はただ1つ。日本政府が一方的で不当な措置を一日も早く撤回し、対話への道に出てくることだ」と対話を促すような発言もしてるんですよね。
【コメンテーターの発言】
姜尚中氏(要約):経済と歴史と安保がごちゃ混ぜになっている。これは日韓関係のいばらの道だが、これを通り過ぎないと次が見えてこない。韓国にとってこの日本の措置はいい機会。いつかは材料を国産化していかないいけない。むしろ重要なのは歴史の問題。相当危機が深まると思う。もっと重要なのは安保。安保が揺らぐと東アジアの秩序それ自体が揺らいでくる。
大宅映子氏(全文):今、世界中で貿易のいろん争いごとがありますよね。で、中心がトランプだと。で、そのトランプ流のね、流れで、今回のがあるんじゃないかと。世界中が困ってるっていう論調ですね。ヨーロッパなんかも。それで、歴史戦争が、世界のハイテク企業をね、人質にとってこういう状況になってると。まさしくそういうことですよね。今おっしゃったみたいに、政策なのかっていう。政策ならね、ここまでこうしたら、こうなってこうなってで、落ちるところはここってなるんだけど、それがあるように見えないので。報復じゃないといくら言っても、どっちにも文句をつけたいですね私は。
岡本行夫氏(要約):今までの経緯を見て韓国が悪いことは明白だが、経産省のやり方は荒っぽすぎて不必要に韓国世論を挑発した気がする。経産省の最初の発表では、「二国間の信頼関係が著しく損なわれた」ということを強調していた。誰が見ても報復だと思ってしまう。後から報復ではないと言っても日本の立場は弱くなってしまう。「韓国の除外」と強調せず、リストを再検討して複数の国を入れ替えたと発表すれば韓国はあんなに反発しなかったと思う。双方で不必要に国民感情を煽ってしまっている。
西崎文子氏(全文):誰のための利益になってるのかって非常に不思議に思いますね。今、本当に冷え込んでしまって。例えば夏休みに行く子どもたちとか学生の交流があるのが次々にダメになっている。これはかなり今までにないことだと思うんですけれども。それでその裏にあるのは、やはりその、先ほど姜さんがおっしゃったように歴史問題に根がある色々な二国間の問題っていうのを、結局解決ができないように拗らせるように、こう動かしていってると。経済問題。あるいは安保の問題だったら不適切な事実っていうのが、それを直せば、経済については本当は改善するわけですよね。だけどそれを、そういった方向にはもっていってないわけで。それでそうこうしているうちに、面子の、面子が立てるために、みたいな。双方の首相、大統領たちが言葉を強くするっていう。そういう状況が生まれてる。やっぱり、多くの人が迷惑を被る状況になっていると思います。
青木理氏(全文):その、何を目指すのかって、まさに関口さんがおっしゃってましたけど、その通りですよね。多分本音はね、過去の話をいつまでも持ち出してきて。韓国がね。で、合意も守らないと。だから、懲らしめるんだ。一泡吹かしてやるんだっていうのが、多分これ本音だと思うんですけれども、しかし、そのこれ当初は徴用工のことで信頼関係が崩れたって言ってたのに、今は安保の問題って言い出してるわけですよね。つまり、これ、韓国としても、何をしていいのかよくわからないような状況に追い込まれてるって言えるわけで。で、そもそも安保で信じらんねって言ったら、姜さんがおっしゃいましたけど、これ、日本と韓国の根本的な問題ですよね。北朝鮮政策でも外交関係でも、お前本当に信用できない奴だって言っちゃたにも等しいわけで。これ、どうなるのか。で、そもそもこれ、韓国内でも当初は、文在寅政権の態度にも問題あったよねっていう論調がメディアにもあったんですね。つまり、ずっと日本から言われてる放りっぱなしじゃないかって批判もあったんだけれど、先ほどVTRにもあったように、この今回のホワイト国からの除外で、僕が見てる限り、ほぼ韓国メディアで文在寅政権批判の論調が消えましたよね。つまりむしろ、国がまとまって、反発でまとまってしまって国会でも日本政府の撤回決議出したんだけど、これも前回は一致で決議してるんですよ。つまり、日本政府が何を目指してるのか。むしろ韓国を頑なにして頑なにして、解決するような状況じゃなくなっちゃってる。つまり、何も落としどころを考えないで、感情的に、こう、なんていうのかな。いろんな通商圧力を振り回すっていうのは、僕はこれ本当に愚かなことだと思いますよ。(関口氏の「両政権とも、国民の動きを見てるでしょ。国民がまず冷静でいなきゃいけませんよね」という発言に対し)国民は、でもやっぱりこうなってくると煽られるんですよ。だから本来は、政治とそれから我々のようなメディアが煽っちゃいけないのに、今はもう完全に煽るモードに入って、文在寅政権の支持率も上がってきてるんですよね。だからもう本当にそも、両政権の責任でちゃんと向き合って、どっかで落としどころを見つけていただかないと、もうこれ本当泥沼ですよね。
姜尚中氏(要約):不買運動とか日本に来ないとか、そんなことは止めないといけない。今だからこそ、民間・自治体・文化レベルでの交流をもっと深めないといけない。これに逆行したことをやるのは市民レベルでも良いことではない。
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の4点です。
1、大宅氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、西崎氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
4、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
それぞれ順を追って解説します。
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1、大宅氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
大宅氏は今回の報道で、以下のように述べています。
大宅氏(抜粋):今、世界中で貿易のいろんな争いごとがありますよね。で、中心がトランプだと。で、そのトランプ流のね、流れで、今回のがあるんじゃないかと。世界中が困ってるっていう論調ですね。ヨーロッパなんかも。それで、歴史戦争が、世界のハイテク企業をね、人質にとってこういう状況になってると。まさしくそういうことですよね。今おっしゃったみたいに、政策なのかっていう。政策ならね、ここまでこうしたら、こうなってこうなってで、落ちるところはここってなるんだけど、それがあるように見えないので。報復じゃないといくら言っても、どっちにも文句をつけたいですね私は。
要旨をまとめると、
・世界中で貿易の争いがあり、ヨーロッパなど世界中が困っている。その中心はトランプ米大統領で、今回の問題もトランプ流の流れで今回の問題も起きている。
・今回の歴史戦争のなかで世界のハイテク企業を人質にとった形で輸出規制が取られた。これは落としどころのある政策ではなく報復だと思う。
というものです。
しかしながら、
・世界の貿易摩擦すべての原因がトランプ米大統領にあるとする主張は明らかに事実に反しており、政治的な公平性を欠く。また今回の輸出優遇措置撤回が「トランプ流」だとする主張は事実に反している。
・今回の輸出優遇措置撤回は安全保障上の懸念払しょくのための政策であり、「歴史戦争」の一環だとする認識は事実に基づいていない。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での大宅氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
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2、西崎氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
西崎氏は今回の報道で、以下のように述べています。
西崎氏(抜粋):誰のための利益になってるのかって非常に不思議に思いますね。今、本当に冷え込んでしまって。例えば夏休みに行く子どもたちとか学生の交流があるのが次々にダメになっている。これはかなり今までにないことだと思うんですけれども。それでその裏にあるのは、やはりその、先ほど姜さんがおっしゃったように歴史問題に根がある色々な二国間の問題っていうのを、結局解決ができないように拗らせるように、こう動かしていってると。経済問題。あるいは安保の問題だったら不適切な事実っていうのが、それを直せば、経済については本当は改善するわけですよね。だけどそれを、そういった方向にはもっていってないわけで。それでそうこうしているうちに、面子の、面子が立てるために、みたいな。双方の首相、大統領たちが言葉を強くするっていう。そういう状況が生まれてる。やっぱり、多くの人が迷惑を被る状況になっていると思います。
要旨をまとめると、
・この問題は誰の利益にもなっていない。子どもたちの交流が中止になるなど日韓関係が冷え込んでおり、その背景には歴史問題に根を持つ二国間の問題を解決不可能な方向にこじらせていることがある。
・経済問題や安全保障の問題は不適切な事実を直すだけで改善できるのに、それをしないで問題をこじらせ、メンツを立てるために双方のトップが言葉を強くする現状がある。
というものです。
しかしながら、
・今回の輸出優遇措置撤回は安全保障上の懸念を払拭できるという明確なメリットが日本と国際社会に存在する。
・輸出管理の問題やレーダー照射の問題など、不適切な問題への指摘を無視して改善しない韓国側に明らかな非があるため、日本側が問題をこじらせ言葉を強くしているとする主張は事実に反しており、政治的に公平とは言えない。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での西崎氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
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3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「歴史問題で日韓が対立するなか、日本が輸出管理の問題をカードにすることは不当だ」「この問題を長引かせても誰も得しない、日本は韓国と対話すべきだ」という立場に立った意見のみが出てきました。
橋谷アナ(抜粋):一方で、「報復の連鎖を止められる道はただ1つ。日本政府が一方的で不当な措置を一日も早く撤回し、対話への道に出てくることだ」と対話を促すような発言もしてるんですよね。
など、こうした姿勢が顕著にみられる発言もありました。
ですがこの問題に関しては「今回の輸出管理の問題は安全保障上の措置で歴史問題とは関係ない」「過剰に反応しているのは韓国側で、喧嘩両成敗とはいかない」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の中編となります。中編では政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
② 輸出優遇措置撤回に対する韓国の対抗措置について報道された部分における
検証4「青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている」
ならびに
③ 「表現の不自由展」中止について報道された部分
については、後編の報告をご覧ください。
① 韓国によるGSOMIA破棄の示唆について報道された部分
については前編の報告をご覧ください。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。