2019年8月25日 サンデーモーニング(中編)

2019年8月25日 サンデーモーニング(中編)

TBS「サンデーモーニング」、2019年8月25日放送回の検証報告(中編)です。

今回の報告では、
① 横浜市がカジノ誘致に名乗りを上げた件について報道された部分
② 韓国のGSOMIA破棄について報道された部分
③ 防衛省の予算増額について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

中編で検証するのは、
② 韓国のGSOMIA破棄について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
8月25日、G7サミットに合わせて日米首脳会談が予定されており、韓国がGSOMIA破棄を決めた問題についての対応が注目されている。なぜGSOMIAの破棄に踏み切ったのか。

金鉉宗氏(字幕):日本側の対応は単なる”拒否”を超え韓国の”国家的自尊心”まで傷つけるほどの虫で一貫し“外交的失礼”を犯した。

直後のアナウンサーの発言:韓国が問題視したのは、光復節の演説に対する日本の対応だと言います。日本の植民地からの解放を祝う式典で、例年、韓国の大統領は歴史問題で日本に対する厳しい言及を行います。今回、文大統領はそれを一部抑制した形で、対話を呼びかけました。にもかかわらず、日本の態度に変化がみられなかったことが破棄の理由だと韓国側は主張しています。

韓国の世論調査では多くの国民の支持を得た一方、野党からは批判の声があがり、米国務省は文大統領を厳しく批判した。これに対し韓国側は、アメリカと緊密に連携を取っていると説明した。
こうした中、北朝鮮は短距離弾道ミサイル2発を発射し、日米韓の連携を揺さぶるような動きをみせた。韓国によるGSOMIA破棄の通告により、日米韓の連携が大きく揺らいでいる。

【アナウンサーによるパネル説明】
・GSOMIAで日本と韓国が共有していた情報のほとんどは北朝鮮のミサイルに関するものである
・日本はイージス艦やレーダーなどでミサイルの航路の情報収集を、韓国は電波傍受や偵察機などでミサイル発射の兆候の情報収集を、アメリカは偵察機や高性能偵察衛星などで精度の高い情報収集を行い、3か国で共有していた
・GSOMIA破棄の理由
①韓国の政府高官が大統領の演説内容を事前に日本側に伝えていたが、日本側から何の反応もなかった
②日本は安全保障上、問題が発生したとして韓国を優遇国から除外した。(こんな国と)安全保障上デリケートな軍事情報交流を持続させることはできない

【コメンテーターの発言】
寺島実郎氏(全文):これはもう自殺行為のようなものがどんどんエスカレートしてると思うんですよね。どちらにとっても。で、注目すべきことはね、僕自身思いますけれども、その少し我々もちょっと深呼吸してですね、そもそもどうしてこういう行動が起こってるんだろうかってってことを問い直す必要があるって言いますかね、国民レベルでの対立がですね、エスカレートしてきて、政治が眺めてるんじゃないんですね。逆なんですね。政治リーダーが主導する形で対立がエスカレートしてきてる。でしかもですね、そのテーマはなんなんだって言ったら過去のことなんですよ。今のことって言うよりもね。つまり、日本帝国主義がね、36年間、要するにあの、韓国を支配してた時代があるってことを引きずってるわけですよ。で、文在寅って人はですね、その時代に対するあらゆる恨みつらみを今でも引きずってるっていうふうも思うんですね。で、一方日本の政権もですね、戦前の日本は間違ってなかったって空気をですね、国権主義国家への傾斜みたいな形でこう見せてるわけですよ。で、僕はね、この段階で大人として日本人としてやっぱりしっかりしなきゃいけないのは、未来志向ってことなんですよね。で少なくともね、我々がやらなきゃいけないことは、これからの世代の人たちにですね、日韓のコミュニケーションのパイプを太くしていくっていう努力をしなくちゃいけない。今僕も大学の関係者ですけれども、日中韓の大学の単位互換協定ってのが、いよいよまた9月にまた一つ議論が行われるんですけれども、韓国側もこれに向き合おうとしてきてるんです。実は。で、つまりですね、学生たちの交流ってプログラムはですね、アジアのレベルでこれから拡大していこうという考え方をですね、しっかり腹にくくって向き合わなきゃいけないっていうかですね、これがやっぱり未来に種を植えることなんですね。そういう意味でね、我々は過去に引っ張られるんじゃなくて未来に向かうんだっていうメッセージをですね、国民レベルでいろんな立場の人が語るべきだと僕は思います。

田中優子氏(全文):私はね、あの8月15日の光復節の文在寅大統領の演説にちょっと注目しているんですね。これ、何をおっしゃったのかというと、2045年に南北統一を目指すと。はっきり言ってるんですよ。それ、あの昨年はそういう言い方してない。友好を進めるって言ってるだけなんです。ところが2045年っていう、年まで出てきているということは、もしかしたらと思うのは、こう、中国と非常に密接な今、貿易関係があって、で中国と関係を密にし続けてるんですね。で、そのことを前提にして中国の後ろ盾で南北統一を考えてるんじゃないかという気がするんです。そうすると、南北の国民の意思を統一するためには、日本を利用するのが一番手っ取り早いんですね。で、そういうようなプログラムに入ってるとすると、このやり方は大変納得できるんですね。で、そもそもの日本がそのホワイト国を除外したのは、中国との貿易の関係に火を感じてやってるわけですから、やっぱり、そのことは考えておいた方がいいのではないか。そうすると次に何が起こるかというと、在韓米軍の縮小が起こるかもしれない。そういうこう、未来図も考えるべきだなというふうに思っています。

藪中三十二氏(要約):日韓だけの問題ではない。GSOMIAはプロの間では物凄く大事な協定。それを破棄するなんて有り得ないと思う。日本はアメリカとだけやればいいという声もあるが、肝心のトランプ大統領はさほど同盟関係を重視していない。北朝鮮があれだけミサイルの発射を続けても「金正恩は良い奴だ」と言っている。昔であれば日米韓の連携を崩さないためのきちんとした仕組みがあったが、今はそれが壊れている。非常に怖いことだと思う。日本はそこを理解した上で米韓と向き合うことが大切。辺真一氏(全体):(関口宏氏:韓国国内で文大統領に対する反発は起きないんですか?)いや、実際にあの評価が真っ二つに割れてますね。今回の破棄についてもですね、ですから当然、まああの、いろいろ世論調査では破棄すべきでないという声が上回ったりですね、まして野党第一党、穏健な第2党も反対でアメリカも反対。それを押し切ってですね、こういう決断をしたということは、それはもう文大統領も覚悟の上だと思うんですね。(関口宏氏:文さんの意思なんですか?)もちろん韓国の大統領としてのリーダーシップ。これがこういう破棄につながったんですけども、そりゃあG20のときもね、袖にされたと。あるいは今回の破棄直前の演説も無視されたと。そういうことで自尊心がどうのこうの言ってますけど、確かにですね、自尊心にうるさい国ですけども、それは表向きの理由で、これは明らかにですね、ホワイト国除外の対抗措置だと思いますね。日本がホワイト国を除外した理由っていうのは、韓国は安全保障上信用できない。信頼できない。友好国じゃないっていう、そういうような前提で破棄した。ならばこっちもですね、信頼・有効が条件であるGSOMIAを維持すべきじゃない。で、日本はですね、いやもう除外したことはもう2004年前に戻しただけの話だという。韓国もじゃあ2016年11月前に戻しただけの話ってお互いにね、言ってることがもう売り言葉に買い言葉なんですね。そうすると、もうどうにも歯止めがかからない。じゃあ我々国民はどうするべきか。これは私の持論なんですけども、韓国の国民も日本の国民もですね、これ政権同士の対立に引きずられないように。これ大事だと思うんですよね。おそらく、まあ、あの政権というのは短命でですね、安倍さんもあと2年、文さんはあと3年でおやめになるわけですけれども、国民はですね、まさにそのずっと永遠に、隣国として存在するわけですから、そう考えますと、あの、政府同士はもはや友好国ではないと通告したかもしれませんけども、国民はですね、やっぱり政府、政権とは違いますから、将来、未来志向のことを考えてですね、これ以上ですね、両政府が暴走しないように、これは歯止めをかけていくようなね、声を上げていくのが大事じゃないかと思いますね。(関口宏氏:でもまた文さん方針に乗せられちゃう国民もたくさんいるわけでしょ?)今後の日本の対応次第によってはですね、また韓国も次のカードを持ってると思うんですね。ですから、カードを切らさないようにするってことは、お互い大事じゃないかと思うんですよ。

松原耕二氏(全文):田中優子さんの話をちょっと付け加えるとですね、文在寅大統領になってから、コレグジットという言葉が、懸念する声が聞こえてくるんです。つまり、コレクジット。ブレグジットに引っ掛けて、日韓から、つまり韓国は北朝鮮の方にいっちゃうんじゃないかと。出ていっちゃうんじゃないかと。で、今回の、まあ破棄を受けて、さらに心情的に文在寅さん、あっちにいっちゃうんじゃないかという意味で、このことを思い出しましたね。(関口宏氏:だけど北もあんまり歓迎してないって情報も入ってきてるよね。)まあそうですね。文在寅さんの頭ん中はやはり、北朝鮮というのが常に全面に出てますから、田中優子さんがおっしゃったシナリオも、あながち僕はですね、実現性がないとは言えないと。頭の中はですよ。と同時にあの政府関係者の人に行くとですね、やはり今回の背景には、トランプ大統領の間違ったメッセージがあると。先ほど藪中さんがおっしゃいましたけど、同盟軽視と同時に短距離ミサイルいいじゃないかと、いうことになると、つまり、今、北朝鮮は短距離の新型ミサイル、迎撃が難しいやつを次々と今開発してるわけですよね。つまり韓国と、その中にある在韓米軍を人質にするような形になってると。これが背景にあるんじゃないかということを指摘してました。もう一つだけ。まあ日韓の関係でいえばですね、やっぱり今両国が、強い言葉をお互いに言って。まあ、国内向けと言ってもいいかもしれない。それをメディアが報じ、そして時に煽り、そしてまあ国民がそれを支持するという悪循環に陥ってる気がするんですね。だから、本来のゆっくりきちんと地道にする水面下の外交。これに立ち戻るしかもうないんじゃないかという気がしますね。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の4点です。

1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、田中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
4、辺氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
5、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている

それぞれ順を追って解説します。

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1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
寺島氏は今回の報道で、以下のように述べています。

寺島氏(抜粋):これはもう自殺行為のようなものがどんどんエスカレートしてると思うんですよね。どちらにとっても。(中略)政治リーダーが主導する形で対立がエスカレートしてきてる。でしかもですね、そのテーマはなんなんだって言ったら過去のことなんですよ。(中略)一方日本の政権もですね、戦前の日本は間違ってなかったって空気をですね、国権主義国家への傾斜みたいな形でこう見せてるわけですよ。で、僕はね、この段階で大人として日本人としてやっぱりしっかりしなきゃいけないのは、未来志向ってことなんですよね。で少なくともね、我々がやらなきゃいけないことは、これからの世代の人たちにですね、日韓のコミュニケーションのパイプを太くしていくっていう努力をしなくちゃいけない。今僕も大学の関係者ですけれども、日中韓の大学の単位互換協定ってのが、いよいよまた9月にまた一つ議論が行われるんですけれども、韓国側もこれに向き合おうとしてきてるんです。実は。(中略)これがやっぱり未来に種を植えることなんですね。そういう意味でね、我々は過去に引っ張られるんじゃなくて未来に向かうんだっていうメッセージをですね、国民レベルでいろんな立場の人が語るべきだと僕は思います。

要旨をまとめると、
・現在の日韓対立は現在のことではなく過去のことが原因で起きており、双方が自殺行為をエスカレートさせたことで起きている。
・これは韓国だけに限ったことでなく、日本も国権主義国家への傾倒を通して戦前の日本は間違っていなかったという空気を出し始めている。
・我々がすべきことは日韓のコミュニケーションのパイプを太くすることだ。日中韓の大学の単位互換協定などは韓国も前向きなので、こうした形で歴史ではなく未来に向かうことが肝要だ。

というものです。

しかしながら、
・GSOMIA破棄や徴用工問題などの現在の日韓対立は、安全保障上の懸念を払しょくするための日本の輸出管理に対する韓国の異常な反発や韓国による一方的な国際条約違反が背景にあり、日本が自殺行為をしているという主張は政治的に公平でなく、また明らかに事実に反している。
・安倍政権は国内において言論弾圧などを実施したことはなく、また国際関係においても力による現状変更を認めない姿勢を維持している。よって、日本が国権主義国家へ傾倒し戦前の日本へ回帰しようとしているという主張は事実に即しているとは言えない。
・日中韓の大学の単位互換協定は、現在の日韓関係悪化の原因を解決するものではないため、日韓関係を好転させることにはならない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での寺島氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

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2、田中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
田中氏は今回の報道で、以下のように述べています。

田中氏(抜粋):私はね、あの8月15日の光復節の文在寅大統領の演説にちょっと注目しているんですね。これ、何をおっしゃったのかというと、2045年に南北統一を目指すと。はっきり言ってるんですよ。(中略)もしかしたらと思うのは、こう、中国と非常に密接な今、貿易関係があって、で中国と関係を密にし続けてるんですね。で、そのことを前提にして中国の後ろ盾で南北統一を考えてるんじゃないかという気がするんです。(中略)で、そもそもの日本がそのホワイト国を除外したのは、中国との貿易の関係に非を感じてやってるわけですから、やっぱり、そのことは考えておいた方がいいのではないか。

要旨をまとめると、
・8月15日の文大統領の演説で、南北統一の具体的な年度まで明言するほど自信を持っていたのは中国の後ろ盾があるからだ。
・日本がホワイト国から韓国を除外したのは、韓国と中国との密接な貿易関係に非を感じたからだ。

というものです。

しかしながら、
・中国が南北統一を支援しているという主張には何ら根拠がない。
・日本がホワイト国から韓国を除外したのは、ミサイル製造などに使われる物品の管理不十分という韓国が持つ安全保障上の懸念を考慮したもので、中韓の貿易関係が理由ではない。したがって田中氏の主張は事実とは言えない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での田中氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

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3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通し「今回のGSOMIA破棄は日韓双方に非がある」「日本と韓国の政府やメディアが対立を煽っている」「日韓の国民は冷静になって友好関係を維持するべく務めるべきだ」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「今回のGSOMIA破棄は日本のホワイト国除外に対する一方的な報復措置だ」「GSOMIAの破棄は日米韓の信頼関係を壊す最悪の一手だ」「日本国民は冷静にこの問題をとらえている」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の中編となります。中編では政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② 韓国のGSOMIA破棄について報道された部分における
検証4「辺氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている」
検証5「松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている」

ならびに
③ 防衛省の予算増額について報道された部分
については、後編の報告をご覧ください。

① 横浜市がカジノ誘致に名乗りを上げた件について報道された部分
については前編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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