2019年8月22日 報道ステーション

2019年8月22日 報道ステーション

8月22日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。

・日韓関係に関するスタジオ解説

まずは放送内容から確認していきます。
VTRを一部要約してお伝えします。
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【VTR】(要約)

24日に期限を迎えるGSOMIA日本と韓国の軍事情報包括保護協定について、韓国は破棄すると決定を下しました。GSOMIAは日韓の防衛協力のシンボルといえるものでしたが、日本の輸出管理強化に対し強い対抗措置をとった形になります。
破棄の理由は日本がとった輸出管理強化の措置で両国の信頼関係が損なわれたからといいます。
GSOMIAは北朝鮮の核やミサイルなどの軍事機密情報を日韓で共有するための防衛協定です。通常1年ごとに自動更新されますが毎年8月24日までに通告すれば協定を破棄できることになっています。

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【スタジオ】
小木逸平アナウンサー(小木アナ)この韓国のGSOMIA破棄という判断についてまずはソウル支局の高橋支局長に聞きます。高橋さんGSOMIA破棄に至る背景には一体何があったんでしょうか。

高橋政光支局長(以下高橋支局長):韓国大統領府の関係者は昨日の北京で行われた日韓外相会談でも日本の姿勢に変化がなかったことを挙げました。韓国政府としましてはこれまで日本に特使を2度派遣し大阪で行われたG20で日韓首脳会談をしようと提案したんですが、ことごとく断られたと外交努力を無視されたという感覚があり、更に日本への信頼を失ってしまったと。また、文政権としては日本政府の対応が文政権を打倒するためのものではないかといった疑心暗鬼の声まで上がっていて強硬姿勢をとらざるを得なかったといえます。

小木アナ:ただ、高橋さん。8月15日の光復節での文大統領の演説では対日批判についてはトーンが抑制的でしたけれども、この短期間に何か変わったんでしょうか。

高橋支局長:おっしゃるとおり日本に対してのメッセージかなり抑制的だったんですがこれも韓国政府関係者に言わせると日本に対する対話をしたいという重要なメッセージだったということなんです。ただ、これにも反応がなかったということで韓国軍の現場ではGSOMIAなんですが、非常に有効だという声も多かったんです。ただ、文政権としては国民の声を大事にする政権ですから国民の意見を考えたときにGSOMIAを破棄すべきというカードを切ることが経済面の対抗措置よりも有効だと考えたわけですね。そして、文政権としては将来的に日米韓の枠組みではなく日本に頼らなくても韓国と北朝鮮、アメリカこの3国の協力関係でやっていけるんじゃないかという構想もあるんです。

徳永有美アナウンサー(以下徳永アナ):続いてなんですが、政治部の官邸キャップ吉野真太郎記者に話を聞きます。吉野さん、協定の破棄まではないんじゃないかという見方もあったんですけど実際、今回、日本政府どんな受け止めをしているんでしょうか?

吉野真太郎記者(以下吉野記者):日本政府側は今回の判断は合理的な判断とはいえないと極めて冷ややかです。ある政府高官はGSOMIAが破棄されたとしても日本に影響はない。日米で緊密に連携すれば問題はないと、ある意味強気の姿勢なんですね。どういうことかといいますと一番気になるのは北朝鮮のミサイルですけどもまず、ミサイルの発射情報はアメリカからの情報がメイン。そしてどこに着弾するかという情報は日本独自の情報におおむね依存していまして、韓国からの情報がなくても直ちに脅威になることはないということなんです。ただ、別の政府関係者からは軍事情報のやり取りというよりもGSOMIAの破棄自体が日韓関係の悪化の象徴となってしまう。後戻りできない一線を越えてしまったと危惧する声も聞かれています。

徳永アナ:となると、日韓関係今後修復というのはできるんでしょうか。

吉野記者:もはや感情的な問題になっていますから当面の修復は難しいと思います。そもそも、この日韓関係どうしてここまでこじれたかというと、韓国側が1965年の日韓請求権協定に反する行動をとっているからなんです。官邸関係者からは今回の判断は北朝鮮を利するだけ。対立をあらゆるテーマに拡大するのではなくてまずは国交正常化の前提だった協定を守るべきだと話しています。関係改善にはクールダウンが必要といったところだと思います。

徳永アナ:ありがとうございます。後藤さん、今回の決定ですが日本政府、実際に驚きはあったんですかね。

後藤謙次氏(以下後藤氏):やはり想定外だったと思います。日本政府はホワイト国から韓国を除外したときに貿易面で多少の痛みは与えようというのはあったんですが、ここまで逆ギレするとは思っていなかったと言っているわけです。その意味では想定外だったと思います。今回の文大統領の決定ですが安全保障分野で日本とは組めないと協力を断つと。そういう政治判断を内外に示したとそう受け止めていいと思います。

小木アナ:気になるのはアメリカの反応も気になりますね。対北朝鮮などですけれどもやはり、日米韓のこの3つの枠組みというのが非常に重要でした。その一角である日本と韓国の情報のやり取り。ここに亀裂が入ったということでアメリカは一体どう見ているんでしょうか。ワシントン支局の布施哲支局長に聞きます。布施さん、アメリカの反応をまず伝えてください。

布施哲支局長(以下布施支局長):朝を迎えたワシントンですが、まだアメリカ政府から公式な反応は出ていません。ただ、今回の決定はアメリカ政府にとっては大きな痛手となります。水面下では強い懸念を伝えたにもかかわらず韓国が今回決定したことは、大きなショックをアメリカ政府の中に広げています。アメリカ政府としては日米韓が情報を共有しながら一致団結をして短期的には北朝鮮長期的には中国に対抗していこうというのがアメリカの戦略です。GSOMIAはその土台になるものなんですけど、韓国がそのGSOMIAの破棄を決めたことで日本政府に対してだけではなくてアメリカ政府に対しても今後、一緒にはやれないというメッセージにもなりかねません。そのため、アメリカ政府としては今回の決定があくまでも一時的なものなのかそれとも今後も続いていくものなのかそこを見極めたい考えです。

小木アナ:ビルの火災報知機の音が入っているようなんですが。ということは布施さん、アメリカは今後より具体的に何か行動に出てくるということは考えられるでしょうか。

布施支局長:これまではあくまでも二国間問題だという立場のアメリカは本格的に仲介に乗り出すことはありませんでした。ただ、今回の決定でそうも言ってられない状況になっています。あるワシントンの専門家はこう言っているんですね。今後、考えられる最悪の展開は日韓の問題に中国が仲介に乗り出してくるということなんです。中国からすればアメリカが手をこまねいている間にアジアのリーダーにふさわしいのは、中国なんだとアピールできる絶好の機会になるからなんです。そのため、今回の韓国の決定は日韓関係のみならず日米韓の連携そして、ひいては東アジア全体の問題として波及していく可能性を秘めているといえそうです。

小木アナ:ワシントンからでした。ここで河野外務大臣の取材に応じたVTRをお聞きいただきます、どうぞ。

河野太郎外務大臣『今般、韓国政府が本協定の終了を決定したことは現下の地域の安全保障環境を完全に見誤った対応と言わざるを得ません。韓国政府が、今般の発表の中で安全保障の文脈において、韓国政府による協定の終了の決定と、先般の我が国による輸出管理の運用見直しを関連付けておりますが、この2つは全く異なる次元の問題であって韓国側の主張は全く受け入れられるものではありません。こうした全く次元の異なるものを混同してこういう決定をしていることに断固として抗議したいと思います』

小木アナ:河野外務大臣先ほど取材に応じた様子をご覧いただきました。ここで専門家の方に今後の状況などを詳しく聞いていきたいと思います。日韓関係に詳しい慶應大学の西野教授にお話をお伺いします。よろしくお願いします。西野先生は今、ソウルにいらっしゃいます。西野先生、ソウルでいろんな関係者の感触等も聞いている中でGSOMIA破棄ということについてこんなことが起きると思っていらっしゃいましたか?

西野純也教授(以下西野教授):率直に申し上げまして延長される方向ではないかと私を含めて多くの専門家が思っていたと思います。その理由は先ほど来お話が出ているように1つには8月15日の大統領の演説が極めて抑えたトーンであったということ。それから、もう1つはアメリカのハイレベルの高官が何度もソウルを訪れていましたしそして、まさに今ビーガン特別代表がソウルを訪れている。このようなタイミングで延長しないというような決定がされたということは率直に言って驚きであると言っていいかと思います。

小木アナ:非常に難しいと思うんですけど、日韓関係の今後というのは、西野さんはどういうふうになっていくと思われますか?

西野教授:今回の問題は安全保障の情報を管理する土台が失われたということのみならずいわゆる歴史の問題が経済の領域に広がりそして更に安全保障の領域にまで広がったということで日韓関係の全体に極めてマイナスな影響をもたらしますしそして、何よりもお互いの国民感情更にはお互いの政府間の信頼関係というものが本当に崩壊してしまいかねないそういう極めて危機的な状況であるというふうに考えたほうがいいと思います。

小木アナその青瓦台大統領府の考え方と、西野先生がソウルに行って感じるような韓国の雰囲気というのは一致してるんでしょうか。

西野教授:私は先週実は1週間ソウルにいたんですけど、いろいろな話を聞きますとやはり大統領の演説があったということもあって、国民レベルではやはりこの問題は慎重に対応しなければいけないというムードになってきていたまさにその矢先に、このような形の決定がなされてしまったので、私は必ずしも今回の大統領府の決定というものが国民感情というものを反映したものではないのではないかというふうに考えております。

小木アナ:そしてアメリカや中国等全体像を含めた関係というものに影響はどういうふうに出ていくと考えられますか。

西野教授:GSOMIAというのは日韓二国間の協定ではありますけれども、専門家の間では日米韓の3か国の安全保障協力の重要な柱の1つであるという、そういう象徴として見ていた側面がありますので、その柱の1つが失われたということは日米韓の安全保障協力にとっては極めて大きなマイナスであると。日韓関係も含めて日米韓の関係というのは実質もさることながら極めて象徴的な認識的な意味合いによって作られていることもありますので、そのような観点から今回の措置というのは日本政府関係者だけではなくてアメリカ政府関係者にとっても非常に大きな衝撃であるし非常に残念憂慮すべき事態であると感じていると思っております。

小木アナ:西野教授にお話をお伺いしました。ありがとうございました。

徳永アナ:後藤さん、今回韓国は破棄という決定を下した。日本政府はそこに対して今後どう対応していくんでしょうか?

後藤氏:当面は文大統領の決断に対して非常にある面で怒りをもって受け止めているということで、当面、韓国には頭を下げて手を打つようなことはしないと。今回のことによって文政権の正体が見えてきた。それというのはGSOMIAを維持することより北により軸足を置いた政権であると。その意味では支持層を失うようなGSOMIAを切ったとしてもそれよりも、支持層をきちっと守ると。今の大統領は場当たり的な来年の総選挙4月に行われますが。これを睨んで、全ての決断をしているのではないか。ですから当面じっくり静観をしないと。次に日本が手を打っても再びそれによってさまざまな反応が起きてしまっては困るという意味では静観をする。それしかないと思います。

徳永アナ:ここまできてしまって日韓首脳の間で意思疎通の手段というのは残されているんですか。

後藤氏:昨日の日韓外相会談の中では外務当局同士の協議は続けましょうということがありますからそれをやりながらなんらかのタイミングを探るということだと思いますね。
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【検証部分】

今回検証する発言は以下の部分です。

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吉野記者:もはや感情的な問題になっていますから当面の修復は難しいと思います。そもそも、この日韓関係どうしてここまでこじれたかというと、韓国側が1965年の日韓請求権協定に反する行動をとっているからなんです。官邸関係者からは今回の判断は北朝鮮を利するだけ。対立をあらゆるテーマに拡大するのではなくてまずは国交正常化の前提だった協定を守るべきだと話しています。関係改善にはクールダウンが必要といったところだと思います。

徳永アナ:ありがとうございます。後藤さん、今回の決定ですが日本政府、実際に驚きはあったんですかね。

後藤謙次氏(以下後藤氏):やはり想定外だったと思います。日本政府はホワイト国から韓国を除外したときに貿易面で多少の痛みは与えようというのはあったんですが、ここまで逆ギレするとは思っていなかったと言っているわけです。その意味では想定外だったと思います。今回の文大統領の決定ですが安全保障分野で日本とは組めないと協力を断つと。そういう政治判断を内外に示したとそう受け止めていいと思います。

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今回の発言の問題点は以下の点です。

・政治的に公平ではない放送であった可能性がある
・視聴者に誤った印象を与えかねない発言があった可能性がある

1点目から順にみていきます。
先般日韓関係が悪化した、背景には日韓請求権協定が遵守されてなかったという面があります。

8月21日の報道ステーションのレポートでも取り上げた日韓請求権協定ですが、改めてその内容と韓国側がその協定を破った経緯を見ていきます。

これについて日本の外務省が今年7月に発表した見解を以下に取り上げます。

——————————————————————————————————-1 日韓両国は,1965年の国交正常化の際に締結された日韓基本条約及びその関連協定の基礎の上に,緊密な友好協力関係を築いてきました。その中核である日韓請求権協定は,日本から韓国に対して,無償3億ドル,有償2億ドルの経済協力を約束する(第1条)とともに,両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産,権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題は「完全かつ最終的に解決」されており,いかなる主張もすることはできない(第2条)ことを定めており,これまでの日韓関係の基礎となってきました。

2 それにもかかわらず,昨年一連の韓国大法院判決が,日本企業に対し,損害賠償の支払等を命じる判決を確定させました。これらの判決は,日韓請求権協定第2条に明らかに反し,日本企業に対し一層不当な不利益を負わせるものであるばかりか,1965年の国交正常化以来築いてきた日韓の友好協力関係の法的基盤を根本から覆すものであって,極めて遺憾であり,断じて受け入れることはできません。

大韓民国による日韓請求権協定に基づく仲裁に応じる義務の不履行について(外務大臣談話)より
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/page4_005119.html
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「両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産,権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題は「完全かつ最終的に解決」されており,いかなる主張もすることはできない(第2条)ことを定めて」いるにも関わらず、韓国はこの国際的な取り決めを破り、日韓関係を悪化させたのです。

問題の発端となった出来事でありながら、今回の放送ではこの請求権協定について一か所のみしか触れられていませんでした。
このような放送の取り上げ方は結果として韓国にとって不都合な事実を隠すことになり、以下の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(2)政治的に公平であること
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続いて2点目の検証点について見ていきます。

後藤氏は今回のGSOMIA破棄は韓国側が日本を信用していないからだ、との解説をしています。
日本はこの韓国の対応について驚いているといった解説もしていますが、この解説では信用されていない日本に不手際があったとの印象を与えかねません。

しかし、今回のGSOMIA破棄の発端は以下の2点が要因であると考えられます。
① 検証点1でも見たような韓国側が国際間の取り決めを守らなかったことについて日本が反発していること。
② 輸出管理が不徹底だったために日本がホワイト国から韓国を除外したことに対する反発。

つまり態度を改め、信用の回復に努めなければいけないのは本来は韓国側であるはずなのです。

このような事情があるにも関わらず、日本が信用されていないためにGSOMIAがされるに至ったという解説をするのは、視聴者に誤った印象を与えかねず、我々は問題であるととらえます。

視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して今後も監視を続けて参ります。

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