2019年8月29日 報道ステーション

2019年8月29日 報道ステーション

8月29日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。

・日韓関係で取り上げられている論点と歴史問題の扱いに関する報道

まずは放送内容を確認していきます。
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【スタジオ】
徳永有美アナウンサー(以下徳永アナ):続いて、出口の見えない日韓関係ですが側近をめぐる問題で揺れる文在寅大統領と同じく側近をめぐる問題がきっかけで失脚した朴槿惠前大統領です。今日、文大統領は歴史問題などで再び強く日本を批判しました。そして、朴前大統領の裁判では大きな動きがありました。

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【VTR】
ナレーション:朴槿惠前大統領の国政介入事件で今日、韓国の最高裁は2審判決を破棄しソウル高裁に審理を差し戻しました。1審と2審は、朴被告に対する収賄や職権乱用など18の罪をまとめて審理しましたが最高裁は別々での審理が必要だと判断したからです。これにより、2審の懲役25年の実刑判決よりも更に重い量刑となる可能性があります。贈収賄などに問われているサムスングループのトップイ・ジェヨン被告と大統領の側近だったチェ・スンシル被告の2人についても審理を差し戻しました。文在寅政権も大統領側近のスキャンダルで大きく揺れています。

今日、文大統領の最側近チョ・グク氏に加え別の側近にも捜査のメスが入ったのです。チョ・グク氏の娘に対する奨学金の不正受給疑惑について検察は、文大統領の側近である釜山市長が関与した疑いがあるとみて市長室の捜索に踏み切りました。

最新の世論調査では政権支持率は更に下がっています。そんな中、今日、文大統領は再び厳しい言葉で日本を批判しました。

文大統領『日本が加害者というのは動かせない歴史的事実です。過去の過ちを認めも反省もせず歴史を歪曲する日本政府の血合い度が被害者の傷と痛みを大きくしています。一度反省を口にしたから、合意したからといって、過去にケリがつくというものではないのです』

これに対し…。

菅義偉官房長官『韓国の大統領の発言ひとつひとつにコメントは差し控えたいと思います。韓国側に作り出された国際法違反の状態を解決するように引き続く強く求めていきたいと思います』

日韓対立の影響が数字にも表れました。財務省によると、先月のフッ化水素の韓国向け輸出が6月に比べて80%以上減りました。日本がフッ化水素の輸出手続きを厳しくしたのは先月4日です。一方、米韓の間にも不協和音が生じています。

韓国大統領府の会見『GSOMIA問題に関して検討する過程で随時アメリカとは意思疎通していた』

としていますがアメリカは…。

シュライバー国防次官補『破棄決定について事前通告はなかった』

軋轢は、ほかにも。昨日、韓国外務省はアメリカのハリス駐韓大使を呼び出しアメリカ政府が繰り返している失望の表明を自制するよう求めたといいます。ところが、その後も…。

シュライバー国防次官補『アメリカは文政権がGSOMIAを破棄したことに強い懸念と失望を表明した。文政権に対してはGSOMIA破棄が日韓関係だけでなくアメリカや他の同盟国の安全保障にも弊害が出ると何度も伝えた』

北朝鮮では今日日本の国会にあたる最高人民会議が開かれました。4月にも開催したばかりで1年に2回開くのは5年ぶりです。先週、北朝鮮のリ・ヨンホ外相はアメリカに対しこんなメッセージを送っています。

リ・ヨンホ外相『我々は対話にも対決にも準備はできている』

その準備の1つなのでしょうか。28日アメリカのシンクタンクは北朝鮮がSLBM・潜水艦発射弾道ミサイルの発射実験の準備を進めている可能性があると分析しました。この場所では新型の潜水艦を建造していて実戦配備に向けた動きとの見方もされています。日米韓3か国の連携は今後どうなるのか。今日、日韓の外務省局長級会談では問題解決の糸口は見つかりませんでした。

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【スタジオ】
徳永アナ:北朝鮮の動きも非常に気になるんですけれども文在寅大統領は再び今日になってまた日本に対する非難を強めてきたんですがそのわけはなんでしょうか。

後藤謙次氏(以下後藤氏):やはり文在寅大統領の側近表面化したスキャンダルの問題ですね。そしてVTRにありましたように朴槿惠前大統領の判決が出た日なんです。朴槿惠さんの不正というのもまさに韓国人が一番忌み嫌う兵役ですね。兵隊に徴集される。それともう1つは大学の入試の不正。この2つの不正は絶対に許せないんですね。そこで疑惑が生じてると。朴槿惠さんと同じじゃないかと。あの大統領選挙で朴槿惠さんの不正を糾弾して正義と公正を訴えた文在寅大統領。結局同じようなことを側近がやってるじゃないか。これが今日の日に増幅される。そこで反日を強く強調することによってそれを覆い隠そうとした。もう1つは、ワシントンに向けたメッセージだともいわれているんですね。今回の原点は歴史問題にあるんだと。そこをきちんと理解してもらいたい。これがワシントンに対するメッセージですね。

徳永アナ:ただアメリカは理解どころか非常に失望していると言っていますよね。

後藤氏:2つあると思います。1つはGSOMIAの破棄によって東アジアの安全保障体制に穴が開いて中国を利してしまう。プラス、アメリカに事前に通告していなかったじゃないか。面子をつぶされた。この2つに対する怒りがアメリカは強いですね。

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【検証部分】

今回検証するのは日韓関係に関して取り上げられている論点と歴史問題の扱いについてです。

具体的には、
① 提示が必要な論点であるにも関わらず、日韓関係悪化の要因が取り上げられていない点
② 韓国の外交カードのことである歴史問題の番組中の扱いが視聴者に与えかねない影響
この2点について見ていきます。

放送では、文大統領は側近の不正疑惑もあり、低迷している支持率を打開するために反日的な言動を繰り返しており、文大統領の以下の発言をそのまま取り上げていました。

文大統領『日本が加害者というのは動かせない歴史的事実です。過去の過ちを認めも反省もせず歴史を歪曲する日本政府の血合い度が被害者の傷と痛みを大きくしています。一度反省を口にしたから、合意したからといって、過去にケリがつくというものではないのです』

日韓関係の悪化の一番の要因は韓国側が徴用工問題を蒸し返したことにあります。
後藤氏もこの発言について、支持率打開のための発言というような解説を行っていますが、この発言の正誤や正当性について言及していません。

過去のことについて合意をしたからといってケリがつかないという点についてですが、これについて日本の外務省の見解は取り上げるべきでしょう。
以下が日本外務省の認識です。

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1 日韓両国は,1965年の国交正常化の際に締結された日韓基本条約及びその関連協定の基礎の上に,緊密な友好協力関係を築いてきました。その中核である日韓請求権協定は,日本から韓国に対して,無償3億ドル,有償2億ドルの経済協力を約束する(第1条)とともに,両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産,権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題は「完全かつ最終的に解決」されており,いかなる主張もすることはできない(第2条)ことを定めており,これまでの日韓関係の基礎となってきました。

2 それにもかかわらず,昨年一連の韓国大法院判決が,日本企業に対し,損害賠償の支払等を命じる判決を確定させました。これらの判決は,日韓請求権協定第2条に明らかに反し,日本企業に対し一層不当な不利益を負わせるものであるばかりか,1965年の国交正常化以来築いてきた日韓の友好協力関係の法的基盤を根本から覆すものであって,極めて遺憾であり,断じて受け入れることはできません。

(引用:大韓民国による日韓請求権協定に基づく仲裁に応じる義務の不履行について(外務大臣談話)https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/page4_005119.html)

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このように今回の日韓関係の悪化の要因となった歴史問題についてはっきりと反論をしています。

このような関係悪化の要因やそれついての日本の立場を述べず報道することは以下の放送法に抵触する恐れはあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けて参ります。

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