2019年10月6日 サンデーモーニング(中編)

2019年10月6日 サンデーモーニング(中編)

TBS「サンデーモーニング」、2019年10月6日放送回の検証報告(中編)です。

今回の報告では、
① 「風を読む」にて日本社会の国際化について報道された部分
② トランプ米大統領のバイデン前副大統領の捜査要求について報道された部分
③ あいちトリエンナーレの補助金不交付について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

中編で検証するのは、
① 「風を読む」にて日本社会の国際化について報道された部分における
検証4「萩上氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている」
および
検証5「松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている」

ならびに、
② トランプ米大統領のバイデン前副大統領の捜査要求について報道された部分
となります。

では、さっそく①の検証3、検証4をみてみましょう。

4、萩上氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
萩上氏は今回の報道で、以下のように述べています。

萩上氏(抜粋):そうですね、社会心理学ですとね、偏見や差別についての研究が随分盛んなんですけれども、その中にあの、接触理論っていうのがあるんです。これは、より多くの、例えば外国人の方とか、さまざまな多様なルーツの方と会って話をして。そうしたことを重ねれば重ねるほど偏見などが取り除かれていくっていう効果なんですね。これは、かつては直接会った効果だけが語られてたんですけども、最近はメディアを通じて知るっていうことも、この接触の効果があるというふうに言われてるんです。だからこういったスポーツ選手などの活躍を通じて接触をすることも大きな一歩ですし、と同時に問われるのはメディアなんですね。それを何か面白おかしく、何か特殊な人が頑張ってるって話じゃなくて、とても身近な生活の背景がそこにあって、日本国の住人として共に暮らしてるんだっていうところをちゃんと伝えていくっていうことが必要になる。最近だとメディアがむしろ、憎悪を煽るような報道や、あるいは放送や、出版をしてしまっていうようなところもあるので、そうしたような接触を促すような報道。そういったものも責任を持ってやっていく必要があるのかなと思います。

要旨をまとめると、
・社会心理学の「接触理論」によると、多様なルーツを持つ相手との接触を重ねれば重ねるほど偏見が取り除かれるという効果が示されている。
・最近では直接会うだけではなくメディアを通してでも接触の効果があると言われている。このためスポーツ選手の活躍を報道することは望ましいが、特殊な人が頑張っているという取り上げ方ではなく日本国の住人として共に暮らしているという側面を伝えていくべきだ。
・最近だとメディアが憎悪を煽る報道、出版をしているところがあるので、接触を促す報道もやっていくべきだ。

というものです。

しかしながら、
・社会心理学において「対立する集団の個人が接触を重ねることで相手集団に対する態度変化が生まれる」という荻上氏の主張を示すのは「接触仮説」であり、「接触理論」なるものは存在しない(単純接触効果という効果は存在するが、別物である)。仮説の段階のものを理論として紹介することは視聴者に対して自らの主張が理論化されたものかのような誤った認識を与える恐れがある。
・「外国人への差別は接触を重ねることで解消できる」とする荻上氏の主張について、「接触仮説」の研究では「研究結果は偏見がなくなるというものと悪化するというものが混在している」「偏見が無くなるには協力的な関係と平等性があること、共通する関心や人間性の認識を促すことなど一定の条件が必要である」など、「ただ接触を重ねることで差別を解消できるとは言えない」とされている。
・カリフォルニア大学サンタクルーズ校のT.F.ペティグリュー教授(2008)のメタ分析では、接触仮説に関する516件の研究のうち95%で「接触すればするほど偏見が悪化する」と示唆されているとまとめられている。
・日本のメディアが外国人アスリートなどについて「特殊な人が頑張っている」という取り上げ方をしているという主張に根拠はない。
・昨今の日韓問題などについての事実に基づく報道や出版、あるいは「外国人に開かれた日本」という主張と立場を異にする報道、出版について、「憎悪を煽る」とひとまとめに扱うことは事実に即しておらず、また政治的に公平とは言えない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での萩上氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

5、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
松原氏は今回の報道で、以下のように述べています。

松原氏(抜粋):外国人の受け入れという意味では、日本は私は今二つの顔を持ってると思うんですね。一つはラグビーに代表されるアスリート達が多様化が進んで日本人の意識も変わってるっていうのが一つの顔。もう一つはその一方でやっぱり難民の受け入れに消極的であったり、入管なんかでは外国人に対するやっぱり抑圧みたいなものが報告されていたり。あるいは外国人労働者の拡大の議論を見ていて去年から今年にかけてはですね、やっぱり家族の帯同はまだほとんど許すという感じになってないわけですね。そのもう一つの顔がやっぱりあると思うんですね。そういう意味では、例えば10年ほど前にはですね、自民党の中で融資で、例えばすごく開かれた移民社会を作ろうなんていう呼びかけも提言があったりもしたんですね。でもその自由さってのは今は大分失われていて。政権は、どっちかと今の政権は逆ブレして、保守層への意識した言動ばかりが目立つというのが今特徴だと思うんですね。ですから、二つの顔があるけれども、それをどうやってまあ、一つにしていくのか。特にまあ、政治と行政の分野がやはり僕は意識は遅れてると思っていると。国民に比べてもね。だからそれを一つの意識にしていくという努力を進めない限り、やはり、ラグビー型の社会っていうのは、まだ難しいだろうなという気がしますね。

要旨をまとめると、
・日本における外国人の受け入れには2つの側面がある。1つはアスリートの多様化などによる意識の変容という側面、もう1つは消極的な難民受け入れや入管での外国人抑圧、外国人労働者の家族帯同を認めないなどといった排他的な側面である。
・10年前には自民党内部でも移民社会を検討する動きもあったが、今はその自由さが失われている。今は反対に安倍政権による保守層を意識した言動が目立っている。
・外国人受け入れについて、国民と比べると政治や行政の分野は意識が遅れている。これを一つの意識にしていくことが重要だ。

というものです。

しかしながら、
・アスリートの多様化による外国人を受容する意識は、日本に難民を受け入れるべきか、外国人労働者の家族帯同を認めるべきかという議論と全く関係のない事柄である。
・安倍政権は外交面で着実に成果を上げており、外交問題に対して毅然として対処することもその成果の一因である。こうした外交面での動きを「保守層を意識した言動」と根拠もなくレッテルを張る主張は事実に基づかないだけでなく政治的に公平とも言えない。
・外国人受け入れを国民が認めているという主張には何ら根拠がない。また、個々の国民の意識と国家政策レベルでの認識は一概に比較できず、これを一緒くたに議論することは事実に即しているとは言えない。また、外国人を受け入れるという主張に一本化すべきだという主張は政治的に公平とは言えない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での松原氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

続いて、
② トランプ米大統領のバイデン前副大統領の捜査要求について報道された部分
となります。では、放送内容を見ていきましょう。

【VTR要約】
 トランプ大統領が来年の大統領選の有力候補・民主党バイデン氏について捜査するようウクライナの大統領に圧力をかけたとされる問題で、米下院議会ではトランプ大統領弾劾に向けた動きが進んでいる。
トランプ大統領はバイデン氏の息子が中国でも不正に大金を得ていたと主張し、中国に対しても公の場で捜査要求した。トランプ大統領の姿勢に野党側は反発を強めている。

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【コメンテーターの発言】
西崎文子氏:弾劾の理由とされていることをカメラの前でまたやるわけですよね。ですからやっぱり驚愕してしまうんですけれども、でも根本的にやはりトランプ大統領は自分の政治的な利益のために他国の政府、あるいはそれ以外の人達の行為を得ると。援助を得るっていうことが、アメリカの国益をどれぐらい損ねるかと。翻って見れば、その相手の国にとってみれば、弱みを握るわけですよね。だから、そこのその、国益に反するということを本当には認識してないんだと思うんですよね。ですからアメリカにとって今度の弾劾。罷免まで行くとは思われてないですけれども、少なくとも弾劾手続きは非常に重要ですし、それから翻ってやはり日本政府も、トランプ大統領個人と接触するときに、かなり注意が必要だと思います。彼に政治的に利用されないということが必要だと思います。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。

1、西崎氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

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1、西崎氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
西崎氏は今回の報道で、以下のように述べています。

西崎氏(抜粋):弾劾の理由とされていることをカメラの前でまたやるわけですよね。ですからやっぱり驚愕してしまうんですけれども、でも根本的にやはりトランプ大統領は自分の政治的な利益のために他国の政府、あるいはそれ以外の人達の行為を得ると。援助を得るっていうことが、アメリカの国益をどれぐらい損ねるかと。翻って見れば、その相手の国にとってみれば、弱みを握るわけですよね。だから、そこのその、国益に反するということを本当には認識してないんだと思うんですよね。ですからアメリカにとって今度の弾劾。罷免まで行くとは思われてないですけれども、少なくとも弾劾手続きは非常に重要ですし、それから翻ってやはり日本政府も、トランプ大統領個人と接触するときに、かなり注意が必要だと思います。彼に政治的に利用されないということが必要だと思います。

要旨をまとめると、
・トランプ米大統領は政治的利益のために他国の政府の援助を得ているが、これは相手の国がアメリカの弱みを握ることになるのでアメリカの国益を大きく損ねる行為である。
・弾劾手続きは非常に重要なものなので、日本政府はトランプ米大統領に利用されないように注意すべきである。

というものです。

しかしながら、
・バイデン元副大統領が不正をしていた場合、それを明らかにすることはアメリカの国益にかなうものである。
・国防機密等を扱うわけではないので、他国政府への援助要請はアメリカにとって「借り」になっても「弱み」になることはない。
・弾劾調査によって公式にトランプ米大統領の非が認められたわけではないため、日本の言動をトランプ米大統領が利用することを一方的に問題視する姿勢は政治的に公平とは言えない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での西崎氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「トランプ米大統領はバイデン元副大統領の捜査に他国の政府を巻き込むべきではない」「トランプ米大統領の弾劾は着実に行われるべきだ」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「バイデン元副大統領が不正を行っているのであれば暴くべきだ」「トランプ米大統領の弾劾調査は採決なく行われており不当なものだ」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の中編となります。中編では政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
③ あいちトリエンナーレの補助金不交付について報道された部分
については後編の報告を、

① 「風を読む」にて日本社会の国際化について報道された部分
については前編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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