2019年11月3日 サンデーモーニング(中編)

2019年11月3日 サンデーモーニング(中編)

サンデーモーニング、2019年11月3日分の検証報告(中編)です。

今回の報告では、
① 「風を読む」にて緒方貞子氏の逝去について報道された部分
② イスラム国指導者の死亡について報道された部分
③ 徴用工判決の影響について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

中編で検証するのは、
② イスラム国指導者の死亡について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

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【VTR要約】
 シリアでイスラム国の指導者がアメリカ軍特殊部隊の襲撃を受け自爆した。アル・バグダディ容疑者率いるイスラム国は、2014年にイラクで一方的に国家樹立を宣言。内戦に乗じてシリアとイラクの広い地域を支配した。日本人ジャーナリスト後藤健二さんと湯川遥菜さんら多くの外国人の殺害映像を公開し、世界を震撼させてきた。
10月26日夜、アメリカ軍の特殊部隊がバグダディ容疑者の潜伏先を捜索したところ、軍用犬がバグダディ容疑者を発見。バグダディ容疑者は2人の子どもを道連れに自爆したという。潜伏先の建物は跡形もなく破壊しつくされており、米国防相はDNA鑑定のため遺体の一部と重要書類などを回収した後、“建物が聖地として利用されないよう爆破した”と説明している。
 バグダディ容疑者の死を自らの成果と強調するトランプ大統領だが、この作戦を巡っては米軍のシリア撤退への批判をかわす目的や、大統領選への得点稼ぎとの見方も浮上している。イスラム国は新たな指導者の名前を発表し、「イスラム国は既に欧州の入り口やアフリカの中部まで進んできている」と声明を発表。

【アナウンサーによるパネル説明】
・イスラム国戦闘員は最盛期には3万3000人いたが数は激減し、現在はシリアで1800人、イラクで2000人に減っている
・一方、各地への広がりを見せており、アフガニスタンではイスラム国ホラサンが2000人弱活動
・ナイジャリアではイスラム国西アフリカ州がイスラム国に忠誠を誓い、スリランカでは2つのイスラム教グループがイスラム国とのつながりを疑われている
・トランプ大統領は「犬のように死んだ」と汚い表現で成果をアピールしたが、犬という表現はイスラム教徒にとっては非常に侮辱的な表現だとされている
・トランプ大統領のやり方について、CNNは「場当たり的なトランプ外交への批判の声を押さえるためにバグダディの死を利用した」、英ガーディアン紙は「トランプ氏への復讐心がイスラム国が復活する原因となるかもしれない」と報じている。

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【コメンテーターの発言】
藪中三十二氏(要約):トランプ氏は成果を強調しているが、潜伏先特定に一番貢献したのはクルド人。トランプ氏が見捨てた仲間だったクルド人が一生懸命見つけたという皮肉。そういう意味で仲間を見捨てたアメリカを頼れるのか。米軍は撤退すると平気で言っているが、その後に入ってくるのはロシアやトルコ。今後中東はますます混乱に陥っていくのではないかと心配。

安田菜津紀氏(全文):実は今週、シリアの北東部なんですけれども取材で訪れていまして、やはりその現地では少なくともトランプさんが言うような世界はこれで安全になったという声は全く聞かれなかったんですよね。なぜならこのイスラム国っていうのは人々の不満だったり怒りだったりそれがあるところで力を拡大してきましたし、その構図自体は変わってないからだと思うんですね。例えばその、隣国のイラクで米軍が中途半端な形で撤退をして、その力の空白にイスラム国が入り込んできたという側面があったと思うんですけれど、今度はその隣国のさらにこのシリアで米軍が撤退をするという、その宣伝を待ち望んでいたかのように、今度はトルコが侵攻して。で、また新たな殺戮だったり迫害が起きてしまったわけですよね。彼らにとっては全く世界は安全になっていない。だからこそアメリカが今すべきは、自分たちの功績を自画自賛するのではなくって、もうテロに訴えるしかないと思わせるような社会状況を本来であればなくしていくっていうことではないかと思うんですよね。

浜田敬子氏(全文):トランプさんはその世界はより平和になったと言われてましたけど、本音は「アメリカは」より平和になったというのが本音なんじゃないか。それすらも、でも本当なのかなと思いますよね。来年の大統領選挙に向けての、まあその実績作りの一つというふうにトランプさんは考えていらっしゃると思いますけども、それでもこれだけやっぱりその世界各地に広がっていって、菜津紀さんがおっしゃったように、なぜじゃあテロに若者たちが入っていくのか。このイスラム国に参加したのかっていうことを考えると、やっぱりその格差だったりとか排斥されたという想いがあって、その怒りから入っていく。その状況は何ら変わっていない。前にですね、19歳の女性がイギリスからまあ、イスラム国に参戦して、イギリスの市民権を剥奪されたという事件がありましたけれども、やっぱり欧州から参加した人たちはもう国に帰れないわけですよね。そうなると、もうこの、彼らがどういう次、行動に出るのか。むしろ指導者がいなくなって組織が弱体化したときに、むしろもっと突発的な、刹那的な行動に出るんじゃないかということを心配しています。

竹下降一郎氏(全文):そうですね、今回まあトランプ大統領は、「映画のようだ」と言ったりですね、犬の合成写真を使ったり、あるいはTwitterでちょっとはしゃいで見せたり、なんかゲームのように思ってるんじゃないかと思いましたね。あの今回そのイラクをめぐる状況の複雑さを理解してないというか、そもそもあの、今の混乱というのは、まあ、いろいろ原因ありますけど、2003年アメリカが関わったイラク戦争では5年間で15万人の人が亡くなったりですね、いろいろと複雑な事情があって、そこにアメリカがかなりの原因になっているという状況を理解せずにですね、まあ非常にこれでもう一件落着というのは、まあ本当に単純だなと思いました。現にですね、新しい指導者はもう既に出てきていますし、インターネット上ではですね、あの反米の思想というのも隅々まで広がっていますので、1人が亡くなったからといって解決できるって問題でなくて、今後のその複雑な状況をまずは大統領自ら理解して、それを発信しないと何も解決できないんじゃないかなと思いました。

松原耕二氏(要約):最近のトランプ大統領の動向を見ていると、イランから一方的に離脱すると思えば今度はホルムズ海峡を守ろうと有志連合を募ったり、クルド人を見捨てる形で撤退したかと思うと今度はバグダディ容疑者死を手柄にするなど、一貫性のかけらもない。元が取れるものだけコミットしようとする投資みたいな考え方が見える。来年の大統領選に向けてますますこの傾向が強くなると思う。ホワイトハウスでは、モノいう人はすべて更迭されてきたという話を聞くので、これからこの1年どうなっていくのか心配。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の4点です。

1、安田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、浜田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
4、竹下氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている

それぞれ順を追って解説します。

1、安田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
安田氏は今回の報道で、以下のように述べています。

安田氏(抜粋):実は今週、シリアの北東部なんですけれども取材で訪れていまして、やはりその現地では少なくともトランプさんが言うような世界はこれで安全になったという声は全く聞かれなかったんですよね。なぜならこのイスラム国っていうのは人々の不満だったり怒りだったりそれがあるところで力を拡大してきましたし、その構図自体は変わってないからだと思うんですね。(中略)彼らにとっては全く世界は安全になっていない。だからこそアメリカが今すべきは、自分たちの功績を自画自賛するのではなくって、もうテロに訴えるしかないと思わせるような社会状況を本来であればなくしていくっていうことではないかと思うんですよね。

要旨をまとめると、
・シリアの北東部に取材に行ったが、現地ではトランプ米大統領が言うような「世界が安全になった」という声は聞かれなかった。イスラム国は人々の怒りや不満を代弁する形で拡大してきたからだ。
・現地住民にとって世界は安全になっていない。アメリカがすべきは功績の自画自賛ではなく「もうテロに訴えるしかない」と思わせる状況を解決していくことだ。

というものです。

しかしながら、
・紛争中の地域で「世界が安全になった」という意見がないことを以て「世界が平和になったわけではない」と主張するのは明らかに事実に即していない。
・テロ集団の最重要人物を排除することはテロリズムに苦しむ世界を安全にする非常に大きな一歩であり、「世界は安全になっていない」とする主張は明らかに事実に反している。
・イスラム国が拡大したのは武力による領土拡大と恐怖政治、イスラム原理主義への共鳴によるものであり、人々の不満や怒りを代弁して拡大したという主張は事実に即していない。
・アメリカのテロ組織への強硬姿勢を「功績の自画自賛」として扱うのは政治的に公平とは言えない。
・「もうテロに訴えるしかない」と思わせる状況があることはテロ行為を正当化する理由にはならない。こうした発言は事実に基づかず政治的に公平と言えないだけでなくイスラム国のテロ行為を正当化する危険なものである。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での安田氏の発言は日本の公安を害し、政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第1号「公安及び善良な風俗を害しないこと」、同第2号「政治的に公平であること」、ならびに同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、浜田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
浜田氏は今回の報道で、以下のように述べています。

浜田氏(抜粋):トランプさんはその世界はより平和になったと言われてましたけど、本音は「アメリカは」より平和になったというのが本音なんじゃないか。それすらも、でも本当なのかなと思いますよね。来年の大統領選挙に向けての、まあその実績作りの一つというふうにトランプさんは考えていらっしゃると思いますけども、それでもこれだけやっぱりその世界各地に広がっていって、菜津紀さんがおっしゃったように、なぜじゃあテロに若者たちが入っていくのか。このイスラム国に参加したのかっていうことを考えると、やっぱりその格差だったりとか排斥されたという想いがあって、その怒りから入っていく。その状況は何ら変わっていない。

要旨をまとめると、
・トランプ米大統領の本音は「アメリカが」より平和になったというものだが、来年の大統領選に向けての実績づくりでしかない。
・イスラム国が世界各地に広がり、若者がそこに入っていく理由は格差や排斥などに対する怒りによるものである。

というものです。

しかしながら、
・トランプ米大統領の本音が「アメリカが平和になった」というものであるという主張と、イスラム国の指導者排除が大統領選目当てだという主張には一切根拠がなく、政治的に公平とは言えない。また、イスラム国の指導者を排除することはアメリカだけでなく世界中の安全に大きく資するものである。
・イスラム国に若者が参加する理由として確かに孤立した若者がネットを通して取り込まれるという事実は存在するが、イスラム国が世界各地に拡大する理由は現地のイスラム過激派が忠誠を誓うケースなど多岐にわたるため、両者を同列に扱うことは事実に即していない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での浜田氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

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3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「バグダディの排除はトランプ米大統領の大統領選に向けた点数稼ぎでしかない」「問題がこれで解決するわけではない」「イスラム国が拡大した理由は人々の不満や怒りを代弁するからだ、彼らにテロをさせない世界を作る必要がある」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「バグダディの排除を通してトランプ米大統領の株が上がるのは自然なことだ」「テロ組織の最重要人物の排除は安全に大きく寄与する行為だ」「いかなる理由があっても人々を傷つけるテロ行為を正当化してはならない」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の中編となります。中編では政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② イスラム国指導者の死亡について報道された部分における
 検証3「竹下氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている」

ならびに
③ 徴用工判決の影響について報道された部分
については、後編の報告をご覧ください。

① 「風を読む」にて緒方貞子氏の逝去について報道された部分
については前編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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