2019年11月10日 サンデーモーニング(前編)

2019年11月10日 サンデーモーニング(前編)

サンデーモーニング、2019年11月10日分の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
① 大学入試における民間試験導入の実施について報道された部分
② 日韓首脳の1年ぶりの対話について報道された部分
③ 日本大使館によるウィーン芸術展の公認撤回について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
① 大学入試における民間試験導入の実施について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

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【VTR要約】
 辞任した河井前法相が在任中、秘書に140kmの走行を命じていたというスピード違反の疑惑が浮上している。閣僚の相次ぐ辞任などで連日野党の追及を受ける安倍総理だが、立憲民主党・杉尾議員の発言中、野次を飛ばしたことについて野党が反発。謝罪に追い込まれた。
 4万2000人分の署名を携え東京都内の高校生らが文部科学省を訪れた。高校生が問題にしているのは、来年度から始まる大学入学共通テストの国語と数学で記述式の問題が導入されることについて。採点基準にばらつきがでると懸念する声が上がっている。採点は民間会社に委託することが決まっているが、学生のアルバイトも採点にあたるとされており不安の声が絶えない。
 延期が決まった英語の民間試験の不透明な導入プロセスに野党からは疑問の声が上がっている。議事録を公開するという萩生田大臣だが、野党議員から民間試験についていつからおかしいと思っていたか問われると、「就任のときにそのことは感じていた」と述べた。
 大学入試の民間参入をめぐりさまざまな疑惑が噴出している。

【アナウンサーによるパネル説明】
・河井前法相の妻で自身も自民党参院議員の河井案里氏が、地元・広島で複数の県議会議員に現金を配ったと一部メディアが報道している
・河井氏が送った陣中見舞いが寄付に該当する場合は公職選挙法違反になる可能性があるが、河井氏は事務所を通じて反論している
・英語の民間試験については2016年から有識者会議が議論を続け翌年正式決定
・導入が決まる直前の会議の議事録が公開されておらず批判の声が上がっているが、萩生田大臣はこれを公開すると述べた

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【コメンテーターの発言】
田中秀征氏(要約):早く受験生のためにもはっきりしなければだめ。なぜ英語の民間試験をするという案になったのかを徹底的に検証するべき。記述式なんてとてもじゃないが公正なことは期待できない。英語の「話す」と「聞く」が大事であれば、今まで以上に授業を徹底的に充実強化していけばいい。記述式は授業の中でいくらでも訓練できる。ダメ。出直し。

元村有希子氏(全文):まず、首相の野次ですね。1953年の吉田茂さんのバカヤロー解散につながった野次って言うのをすぐ思い出すんですけども、今年に入って安倍首相の不規則発言、26回あるんだそうです。全部が野次ではありませんけれども、事実誤認のことを言ったりとかですね、たしなめられるというシーンもありました。で、もう一つ気になるのは、言うときに指をさしますよね。指を指す行為ってのは海外でもマナー違反と言われていて、その心理って言うのはその、自分が上に立ちたいという弱い人の衝動が指をさすっていう行為にあたるということで、まさに今総理のその心境を表しているかなと思います。それは、2人の閣僚が立て続けにやめて、そして任命責任がありますと言いながら、何の責任をとっているか分からないという態度にも表れていると思うんですね。ただそんな国会を許してるって言う状況もやっぱり異常です。臨時国会だけでたくさん重要法案があってその審議もやらなければいけないのに、その前にやっぱりこの立て続けの閣僚の辞任をきちんと整理しないといけない。で任命責任があると言いながら、2人の閣僚は、つまり元閣僚は自分で説明なさればいいと言っている。じゃあどういう責任を果たすんですか総理って私も言いたいです。

谷口真由美氏(要約):フェアじゃないことがあまりにもありすぎる。記述式は主観が入る。大学教員をしていても公平さを過剰に求められてきたのに、それがいきなり杜撰になっていいわけがない。何があったのかを知りたいのに議事録が公開されておらず経緯が分からない。結局子どものためにならないことをやってしまったことに対しては、決めた人たち全員で学生さんに謝るべきだと思う。

佐高信氏(要約):当事者や反対者の言葉に耳を傾けることが政治家にとって一番大事なことだと思うが、それが決定的に欠如している。横綱がけたぐりばっかりしているっていう感じ。怒るより悲しくなる。

青木理氏(全文):野次のことね、皆さんそんなことを当然のことだからおっしゃらなかったんでしょうけど、中学校に書いてあるようなことで言うとね、首相は行政府の長なわけですね。その行政府の長が、国権の最高機関で立法府。国会に行ってその質問を受けて、説明をするわけですよ。そうすると自分を支えてる与党はもちろんなんだけれども、野党だって国民の代表なので、最低限の礼節を尽くして説明をする、真摯に説明をするっていうのが、これ別に政治思想の右とか左とかではなくて、近代民主主義の基本的な所作なわけですよ。その基本的な所作をやらないと。しかも今回共産党っつって野次ってましたよね。以前ね、僕聞いたら日教組っつって野次ってるんですよ。なんか共産党とか日教組っていうのが批判の言葉だってとらえる発想っていうのは、あえて言えばちょっとネトウヨ的っていうかね、非常にその低劣っていうか、そういう言葉を批判の言葉だと思っている首相が国会で発している、それも野党に対して言うところの問題の根深さ。つまり、三権分立とか国会とか行政府は何かとかっていうものの根底が、これ、その本当に不快なだけじゃなくて壊れていくっていうよう気配じゃないかっていうのを僕は敏感に感じなくちゃいけないんじゃないかというふうには思いますよね。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、元村氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、元村氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
元村氏は今回の報道で、以下のように述べています。

元村氏(抜粋):まず、首相の野次ですね。1953年の吉田茂さんのバカヤロー解散につながった野次って言うのをすぐ思い出すんですけども、今年に入って安倍首相の不規則発言、26回あるんだそうです。全部が野次ではありませんけれども、事実誤認のことを言ったりとかですね、たしなめられるというシーンもありました。で、もう一つ気になるのは、言うときに指をさしますよね。指を指す行為ってのは海外でもマナー違反と言われていて、その心理って言うのはその、自分が上に立ちたいという弱い人の衝動が指をさすっていう行為にあたるということで、まさに今総理のその心境を表しているかなと思います。それは、2人の閣僚が立て続けにやめて、そして任命責任がありますと言いながら、何の責任をとっているか分からないという態度にも表れていると思うんですね。ただそんな国会を許してるって言う状況もやっぱり異常です。臨時国会だけでたくさん重要法案があってその審議もやらなければいけないのに、その前にやっぱりこの立て続けの閣僚の辞任をきちんと整理しないといけない。で任命責任があると言いながら、2人の閣僚は、つまり元閣僚は自分で説明なさればいいと言っている。じゃあどういう責任を果たすんですか総理って私も言いたいです。

要旨をまとめると、
・安倍首相の不規則発言は全部で26回あるが、事実誤認やたしなめられるシーンもあった。
・指をさす行為は海外ではマナー違反とされており、また自分が上に立ちたいという弱い人の衝動の現れである。まさに今の安倍総理の心境と言える。
・2人の閣僚が立て続けに辞めているにもかかわらず、何の責任も取っていないという態度にも弱い心が洗われている。
・臨時国会だけでもたくさん重要法案があってその審議もやらなきゃいけないが、その前にこの閣僚の辞任を整理する必要がある。にもかかわらず安倍総理は「本人が説明すればいい」と言い責任を取るつもりがない。

というものです。

しかしながら、
・安倍首相の不規則発言が事実誤認だという主張には何ら根拠がない。また、野党議員による不規則発言は26回をはるかに上回っており、安倍首相の不規則発言のみを問題視する主張は政治的に公平とは言えない。
・指をさす行為が「自分が上に立ちたいという弱い人の衝動」だという主張には何ら根拠がない。また、安倍首相が「自分が上に立ちたいという弱い人」だとする主張は根拠のない誹謗中傷に過ぎず、また政治的公平性を欠く。
・2人の閣僚の辞任についての安倍首相の責任の取り方が、安倍首相の心の強弱を表すものではない。
・既に辞任した閣僚の問題を重要な法案の審議より優先すべきだという主張は政治的に公平とは言えず、また優先順位をはき違えており事実に即していない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での元村氏の発言は(政治的に公平でなく、また)事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条(第2号「政治的に公平であること」、同)第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。

青木氏(抜粋):野次のことね、皆さんそんなことを当然のことだからおっしゃらなかったんでしょうけど、中学校に書いてあるようなことで言うとね、首相は行政府の長なわけですね。その行政府の長が、国権の最高機関で立法府。国会に行ってその質問を受けて、説明をするわけですよ。そうすると自分を支えてる与党はもちろんなんだけれども、野党だって国民の代表なので、最低限の礼節を尽くして説明をする、真摯に説明をするっていうのが、これ別に政治思想の右とか左とかではなくて、近代民主主義の基本的な所作なわけですよ。その基本的な所作をやらないと。しかも今回共産党っつって野次ってましたよね。以前ね、僕聞いたら日教組っつって野次ってるんですよ。なんか共産党とか日教組っていうのが批判の言葉だってとらえる発想っていうのは、あえて言えばちょっとネトウヨ的っていうかね、非常にその低劣っていうか、そういう言葉を批判の言葉だと思っている首相が国会で発している、それも野党に対して言うところの問題の根深さ。つまり、三権分立とか国会とか行政府は何かとかっていうものの根底が、これ、その本当に不快なだけじゃなくて壊れていくっていうよう気配じゃないかっていうのを僕は敏感に感じなくちゃいけないんじゃないかというふうには思いますよね。

要旨をまとめると、
・行政府の長である首相が国権の最高機関である立法府の国会で説明をする際、国民の代表である与野党議員に最低限の礼節を尽くすのが近代民主主義の基本である。
・「共産党」や「日教組」などという野次はネトウヨ的で低劣である。またこうした言葉を野党に向けて言っているところや批判の言葉だと思っているところに三権分立が壊れていく気配を感じる

というものです。

しかしながら、
・現代の三権分立原理は「三権の相互抑制・均衡によってどれか1つの国家権力が汎用されるのを制限する」というもので、「国権の最高機関」という文言に法的意味はないというのが通説(政治的美称説)である。
・行政府は立法府に対して政治的責任を負うことで間接的に国民に対して政治責任を負うが、これは野党議員に行政府の長である首相が「礼節を尽くす」必要があるという主張の根拠にはならない。したがって「礼節を尽くすのが近代民主主義の基本」だという青木氏の主張は事実に即していない。
・「共産党」や「日教組」という野次がネトウヨ的、低劣、三権分立の瓦解だとする主張は青木氏の主観に基づく感想に過ぎず、事実に即していないだけでなく政治的に公平とも言えない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「記述式の試験では公平性を担保できない」「大臣が立て続けに辞任したことについて安倍首相は責任を取るべきだ」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「大学の二次試験における記述試験の存在を考えれば問題なく、記述力が重要なことに変わりはない」「大臣のスキャンダルが安倍首相によって起きたわけではない」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② 日韓首脳の1年ぶりの対話について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

③ 日本大使館によるウィーン芸術展の公認撤回について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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