2019年11月24日 サンデーモーニング(前編)

2019年11月24日 サンデーモーニング(前編)

サンデーモーニング、2019年11月24日分の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
① 韓国によるGSOMIA破棄一時撤回について報道された部分
② 「風を読む」にてローマ教皇来日について報道された部分
③ 日本における初の武器見本市の開催について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
① 韓国によるGSOMIA破棄一時撤回について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

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【VTR要約】
 11月22日、失効期限が迫るGSOMIA破棄が撤回され、日本政府はGSOMIAとは関係がないとしたものの、輸出管理政策対話に応じることを明らかにした。土壇場での譲歩の裏側には何があったのか。
コリア・レポート編集長辺真一氏は「アメリカからの強い圧力が効いた」と指摘しており、アメリカの本気度が文政権に伝わったことで、破棄撤回へ傾いたとみられる。
GSOMIA失効は回避されたものの、23日の日韓外相会談では、日本側は国際法違反の状態の早期是正を求めるなど従来の姿勢を崩しておらず、破棄撤回に対する韓国国民の反発もあり、課題は山積みのままである。

【アナウンサーによるパネル説明】
GSOMIA破棄撤回の背景について解説
・韓国の世論調査では、GSOMIA破棄を支持する人が51%、支持しない人が29%だった
・辺氏はアメリカからの圧力だけでなく、韓国経済の不況があったと指摘しており、「早期規制解除を目指す事情があった」と話している
・韓国の10月の輸出は前年同月比-14.7%、半導体-32.1%、ディスプレイ-22.5%

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【コメンテーターの発言】
寺島実郎氏(全文):日韓の双方のメンツを立てる形でね、実体的な延長で動くなというふうにみてたんですけども、これ、言われてるように米国の圧力ももちろんあったと。ただしもう一件だけですね、この背景にあった構図を一言申し上げておきたいなと。実は米朝のね、つまり北朝鮮とアメリカとの協議っていうのがドンと前に出てきてですね、強硬派のボルトンという補佐官が去ってからね、トランプとしては、要するに金正恩と3回会ったんだけどもあってどうなったと。大統領選挙睨んでですね、ゲームを動かさなきゃいけないと、成果があったと何らかの形で核廃棄に向けての妥協させて、で、いわゆる制裁解除にアメリカ側が動くっていうかですね、分かりやすく言うと置き去りにされる同盟国日韓っていう構図がね、つまりアメリカの今の政権の最優先事項が北朝鮮との関係を動かすっていうのが東アジアのゲームの中心にきちゃってるわけですよ。で、そのことに日韓ともにですね、日韓ともにですね、ドキッとなってるっていうのがね、現在の状況のこの、動かした大きな背景にあるんだってことだけは、一言申し上げておきたいですね。

幸田真音氏(要約):これはもう日韓問題というより米韓問題。文政権の焦りがある。仮想通貨が急騰した2017年は半導体の需要が上がって韓国経済が良くなると思われたが、マイニング関係でガクッと価格が下がったこともあり、かなり韓国経済の焦りみえる。背後には経済問題があると思う。

中西哲生氏(要約):九州では韓国からの観光客が減っているなど、庶民の生活レベルでも影響が出ているが、スポーツではプレミア12で韓国の代表と試合をして盛り上がっている。来月も韓国でサッカーの東アジア選手権があるので、そういうところから少しずつ歩み寄りが生まれるといい。国内でも困っている人がいることは理解してほしい。

涌井雅之氏(要約):一番問題なのは、韓国大統領選挙の頃に韓国経済が最悪になる可能性が高いということ。家計負債や中小企業の借入金がどんどん増えている。その上に米軍の駐留経費が経済を圧迫すると韓国経済が破綻しかねないので、GSOMIA破棄撤回に舵を切ったと思う。しかしこれで事態が収まるわけではなく、いろいろな形で揉め続けると思う。

青木理氏(全文):皆さんがおっしゃるように、日韓の自治能力じゃなくて、まあはっきり言えばアメリカの圧力で互いにとりあえず踏みとどまったっていうのが実態だってみると非常に残念なんだけれども、かろうじてよかったのかもしれないんですが、今は涌井さんがおっしゃったんですけど果たしてこれで何とか良い方向に向かうのかというと、これ日本では撤回、破棄を撤回したって報道されてるんですけど、韓国の政府の発表だったりとか韓国メディアは、条件付きの凍結なんだと。だからいつでもこんなのは破棄できるんだっていうのが一応韓国側の立場なんですよね。でこれは日本側の態度にもかかってるんだっていうのが韓国側の立場だと。で、それぞれの政権が、例えば日本の今の政権の支持層っていうのはもう嫌韓ムードがものすごい蔓延しちゃってる。逆に韓国側は、そもそもその、そこにある半数がGSOMIA破棄をすべきだというのは驚かれたと先ほど関口さんおっしゃいましたけれど、特に政権支持層では、GSOMIAってものに対してそもそも懐疑的なんですね。これなぜかって言ったら、やっぱりその日本との間の軍事同盟とか軍事協定を結ぶってことに関する韓国内の、非常に拒否反応、アレルギー反応があって、これやっぱり基本的には、歴史問題に戻っていくところがあるんですね。だから、やっぱり韓国内で日本との軍事関係、軍事協定に対する反発があって、特に政権支持層ではそれが強いということを考えると、それぞれの政権が国内のそれぞれの支持層に対して、その支持層に対していいことをやれば結局両国関係はどんどん悪くなっていっちゃうんですね。だからそれを踏み越えて、皆さんおっしゃったように、それぞれの政権がそれぞれの支持層に振り回されないで譲歩を一歩ずつしていくってことを積み重ねていかないと、決して今回のことで良くなっていくというふうには僕は思えない。だから政権、両政権、あるいは両首脳の態度に今後ともかかってるんだろうなっていうのは変わらないと思いますよ。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
寺島氏は今回の報道で、以下のように述べています。

寺島氏(抜粋):日韓の双方のメンツを立てる形でね、実体的な延長で動くなというふうにみてたんですけども、これ、言われてるように米国の圧力ももちろんあったと。ただしもう一件だけですね、この背景にあった構図を一言申し上げておきたいなと。実は米朝のね、つまり北朝鮮とアメリカとの協議っていうのがドンと前に出てきてですね、強硬派のボルトンという補佐官が去ってからね、トランプとしては、要するに金正恩と3回会ったんだけどもあってどうなったと。大統領選挙睨んでですね、ゲームを動かさなきゃいけないと、成果があったと何らかの形で核廃棄に向けての妥協させて、で、いわゆる制裁解除にアメリカ側が動くっていうかですね、分かりやすく言うと置き去りにされる同盟国日韓っていう構図がね、つまりアメリカの今の政権の最優先事項が北朝鮮との関係を動かすっていうのが東アジアのゲームの中心にきちゃってるわけですよ。で、そのことに日韓ともにですね、日韓ともにですね、ドキッとなってるっていうのがね、現在の状況のこの、動かした大きな背景にあるんだってことだけは、一言申し上げておきたいですね。

要旨をまとめると、
・米朝の協議が前面に出てきている。ボルトン補佐官が去ってからトランプ米大統領は大統領選目当てに金正恩との会談を進めたが、分かりやすい実績が出ていない。
・トランプ政権としては北朝鮮への制裁解除を通して関係を動かすことが最優先事項であり、同盟国の日韓は置き去りにされている。GSOMIA破棄の撤回はこうした事情によるものだ。

というものです。

しかしながら、
・トランプ米大統領が大統領選目当てに北朝鮮との関係改善を目指しているという主張に根拠はなく、寺島氏の憶測にすぎない。
・トランプ政権の東アジア外交の最優先事項が北朝鮮への制裁解除であるという主張や同盟国の日韓が置き去りにされているという主張には一切根拠がなく、事実に基づいていない。
・米大統領による米朝会談の経緯と韓国によるGSOMIA破棄問題とは全く因果関係のない別個の問題であり、あたかも米国が原因で韓国がGSOMIA破棄を実施しようとしたかのように主張するのは事実に反しており、また政治的にも公平でない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での寺島氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。

青木氏(抜粋):皆さんがおっしゃるように、日韓の自治能力じゃなくて、まあはっきり言えばアメリカの圧力で互いにとりあえず踏みとどまったっていうのが実態だってみると非常に残念なんだけれども、かろうじてよかったのかもしれないんですが、今は涌井さんがおっしゃったんですけど果たしてこれで何とか良い方向に向かうのかというと、これ日本では撤回、破棄を撤回したって報道されてるんですけど、韓国の政府の発表だったりとか韓国メディアは、条件付きの凍結なんだと。だからいつでもこんなのは破棄できるんだっていうのが一応韓国側の立場なんですよね。でこれは日本側の態度にもかかってるんだっていうのが韓国側の立場だと。で、それぞれの政権が、例えば日本の今の政権の支持層っていうのはもう嫌韓ムードがものすごい蔓延しちゃってる。逆に韓国側は、そもそもその、そこにある半数がGSOMIA破棄をすべきだというのは驚かれたと先ほど関口さんおっしゃいましたけれど、特に政権支持層では、GSOMIAってものに対してそもそも懐疑的なんですね。これなぜかって言ったら、やっぱりその日本との間の軍事同盟とか軍事協定を結ぶってことに関する韓国内の、非常に拒否反応、アレルギー反応があって、これやっぱり基本的には、歴史問題に戻っていくところがあるんですね。だから、やっぱり韓国内で日本との軍事関係、軍事協定に対する反発があって、特に政権支持層ではそれが強いということを考えると、それぞれの政権が国内のそれぞれの支持層に対して、その支持層に対していいことをやれば結局両国関係はどんどん悪くなっていっちゃうんですね。だからそれを踏み越えて、皆さんおっしゃったように、それぞれの政権がそれぞれの支持層に振り回されないで譲歩を一歩ずつしていくってことを積み重ねていかないと、決して今回のことで良くなっていくというふうには僕は思えない。だから政権、両政権、あるいは両首脳の態度に今後ともかかってるんだろうなっていうのは変わらないと思いますよ。

要旨をまとめると、
・結果としてはよかったが、日韓の自治ではなくアメリカの圧力で互いに踏みとどまったのは残念だ。
・日本では破棄を撤回したと報道されているが、韓国の政府発表や報道では「条件付きの凍結」だと報道されている。よっていつでも破棄できるもので日本の対応次第だというのが韓国の立場だ。
・日本では今の政権の支持層に嫌韓ムードが蔓延している一方、韓国の政権支持層はGSOMIAに懐疑的である。これは日本との間の軍事関係、軍事協定に対する反発があるからで、歴史問題に戻っていくものだ。
・こうした形でそれぞれの政権がそれぞれの支持層を向いた政策をすると両国関係がどんどん悪化していく。支持層に振り回されず譲歩していくことが両政権に求められている。
というものです。

しかしながら、
・今回アメリカの要請でGSOMIA破棄を踏みとどまったのは韓国であり、アメリカが日本にも譲歩を求めたかのような主張は事実に即していない。
・読売新聞と韓国日報の共同世論調査では「韓国を信頼できない」とする日本人は全体の74%を占めており、韓国に対して批判的なのが安倍政権支持層だけだとする主張は明らかに事実に反している。また、こうした韓国への厳しい目線を「嫌韓ムードが蔓延」などとレッテル張りをする姿勢は政治的に公平とは言えない。
・韓国国民がGSOMIAに懐疑的な理由が歴史問題だとする主張には根拠がなく、青木氏の憶測にすぎない。また日韓関係は日韓基本条約によって正常化されており、こうした主張は政治的に公平とは言えない。
・GSOMIA破棄は韓国が輸出管理適正化の報復として行ったものであり、日本側が韓国に譲歩しなければいけない事項は存在しない。したがって「日本も譲歩しなければいけない」とする青木氏の主張は事実に即していない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「GSOMIA破棄はあくまで一時的なものであり、今後の日本の対応にかかっている」「日韓関係を修復するためには双方の譲歩が必要だ」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「GSOMIA破棄は韓国側が一方的に進めたことで日本に責はない」「昨今の日韓問題はすべて韓国側にその責がある」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② 「風を読む」にてローマ教皇来日について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

③ 日本における初の武器見本市の開催について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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