サンデーモーニング、2019年12月8日分の検証報告(前編)です。
今回の報告では、
① 米国による各国への国防費増加要求について報道された部分
② 「桜を見る会」の文書破棄について報道された部分
③ 「風を読む」にて中村哲氏の死去について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
前編で検証するのは、
① 米国による各国への国防費増加要求について報道された部分
となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
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【VTR要約】
アメリカの同盟国がトランプ流の外交に困惑している。NATO首脳会談で、トランプ大統領は相手を待たせたまま記者からの質問に答え続け各国首脳を困惑させた。待たせた時間は計2時間にも及び、一部の首相が晩餐会に遅刻する事態となった。トルドー首相が「開いた口が塞がらなかった」と話したことに対し、トランプ大統領は「トルドー首相には裏表がある。2%を支出していないと指摘したことが気に食わないのだろう」と反撃。NATO加盟国はアメリカの負担を減らすため国防費を対GDP比2%まで引き上げる目標を掲げているが、加盟29ヵ国中20ヵ国が未達成という現状がある。一方、トランプ大統領は目標を達成した国の首脳たちをランチに招き食事を振舞った。
今回のNATO首脳会議では中国への対応等が議題となったが、もう一つのテーマはアメリカが加盟国に迫る国防費の増額だった。また、韓国や日本にも米軍の駐留経費負担を増やすよう要求していることが明らかになった。日本政府はそうした要求はないと否定しているが、共同通信石井編集委員は「さすがに自民党の国防族の有力議員たちも(増額の要求に)呆れかえっている」と語った。
【アナウンサーによるパネル説明】
・米軍基地は45の国と地域に514か所ある
・最も基地の数が多いのはドイツ(194か所)で、日本(121か所)、韓国(83か所)と続く
・米軍の駐留兵士の数はそれぞれ3万5200人(ドイツ)、5万5000人(日本)、2万8500人(韓国)
・アメリカや韓国メディアは「駐留経費負担を日本に4倍、韓国に5倍引き上げるよう要求」と報道
・在日米軍関係費には駐留経費負担のほか、米軍再編費用など約1935億円が拠出されている
・さらに負担金とは別にイージスアショア・F35等の軍事品購入が決定している
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【コメンテーターの発言】
寺島実郎氏(要約):100年前にアメリカを中心にした世界秩序が作られたが、この秩序を維持するための負担にアメリカ自身が耐え切れなくなり、苛立ちが爆発して同盟国をなで斬りにしているというのが今の現状。アメリカにとっては国内より日本に基地を置いた方が(経費負担が少なく)優位に基地を海外に展開できる。日本人としてアジアの安定のために本当に必要な基地とは何なのか、次の時代の日米同盟がどうあるべきかを正面から議論しなければいけないところにきたということ。
青木理氏(全文):先週、韓国に行ってきたんですけれど、まあ日本のことを良く知る韓国の外交関係者とかジャーナリストも同じようなことを言ってたんですけど、まさに石井さんが言う通り、こういうアメリカのね、ある種の不当な要求だったりとかってことに関しては本来であれば、日韓が協力をして、ちょっとおかしいじゃないですかって言うべきなんだけど、まったくそういう状況にない。むしろ逆に、日韓がギクシャクしてると困るんじゃないかっていうことでアメリカからある種韓国も圧力をかけられて、GSOMIAの話もなんかこう、ちょっと方針転換したりとか。それを見て今度日本はパーフェクトゲームだなんて言って喜んでいるようなバカみたいな状況になっているわけなんですね。だから本当にその、ひたすら武器を爆買いしてアメリカの機嫌をとって、何とかこう、嵐が過ぎ去るのを待つのが本当にその、日本にとって得策なのか。やっぱり地域の平和と安定のためにも、あるいは日本のまあ、僕あんまり好きじゃない言葉なんですけれども、国益のためにも、やっぱりこう70数年前の歴史問題乗り越えて、日本と韓国アジアできちんと団結をした上で、こういろいろバランス外交をとるってことができないのかということを、本当にその外交関係者はもちろんですけれども、我々メディアの人間も真剣に考えなきゃいけない。新しい年はそういう年にしなきゃいけないなと思いますけどね。
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以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。
1、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
それぞれ順を追って解説します。
1、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。
青木氏(抜粋):先週、韓国に行ってきたんですけれど、まあ日本のことを良く知る韓国の外交関係者とかジャーナリストも同じようなことを言ってたんですけど、まさに石井さんが言う通り、こういうアメリカのね、ある種の不当な要求だったりとかってことに関しては本来であれば、日韓が協力をして、ちょっとおかしいじゃないですかって言うべきなんだけど、まったくそういう状況にない。むしろ逆に、日韓がギクシャクしてると困るんじゃないかっていうことでアメリカからある種韓国も圧力をかけられて、GSOMIAの話もなんかこう、ちょっと方針転換したりとか。それを見て今度日本はパーフェクトゲームだなんて言って喜んでいるようなバカみたいな状況になっているわけなんですね。だから本当にその、ひたすら武器を爆買いしてアメリカの機嫌をとって、何とかこう、嵐が過ぎ去るのを待つのが本当にその、日本にとって得策なのか。やっぱり地域の平和と安定のためにも、あるいは日本のまあ、僕あんまり好きじゃない言葉なんですけれども、国益のためにも、やっぱりこう70数年前の歴史問題乗り越えて、日本と韓国アジアできちんと団結をした上で、こういろいろバランス外交をとるってことができないのかということを、本当にその外交関係者はもちろんですけれども、我々メディアの人間も真剣に考えなきゃいけない。新しい年はそういう年にしなきゃいけないなと思いますけどね。
要旨をまとめると、
・アメリカの不当な要求に対して本来は日韓が協力して抗議することが求められるにもかかわらず、日韓はギクシャクしたままである。
・逆に日韓がギクシャクしていると困るということで韓国はアメリカに迫られGSOMIA破棄を凍結し、日本はそれを喜んでいる。バカみたいな状況だ。
・武器を爆買いしてアメリカの機嫌を取ることは日本にとって得策ではない。日本の国益と地域の平和と安定のために70年前の歴史問題を乗り越えて日韓アジアが団結してバランス外交をすべきだ。
というものです。
しかしながら、
・日本政府はアメリカによる米軍の駐留経費負担増の要請を否定しており、日韓が連携して負担増の要請を撥ねつけるべきとする青木氏の主張は事実に反している。
・理由の如何に関わらずGSOMIA破棄の凍結は日本の安全保障にとってプラスとなるもので、「アメリカの圧力によるもので喜ぶべきでない」とする青木氏の主張は明らかに事実に反している。
・韓国によるGSOMIA破棄が凍結に追い込まれ、日本政府が安堵したことを「バカみたいな状況」と表現する姿勢は、韓国の立場に偏っており政治的に公平とは言えない。
・米国からの武器購入は日本の安全保障上必要だから実施されているもので、アメリカのご機嫌取りだという主張は事実に即していない。
・地域の平和・安定とそれに基づく日本の国益を守る基軸となるのは、安全保障において戦後一貫して良好な関係が続いてきた日米同盟である。よって、アメリカと比べて実力も関係性も弱い韓国や中国などを念頭に置いたアジア諸国との団結を以てアメリカと距離を取るべきだとする主張は明らかに事実に反しており、また政治的に公平とも言えない。
・日韓の歴史問題は日韓基本条約で最終的かつ完全に解決しており、日本と韓国がともに乗り越えるべきだとする主張は事実に反している。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「アメリカの各国への負担要求は国際協調を乱すものでトランプ米大統領の気まぐれだ」「日本は駐留経費や武器購入でアメリカにしっぽを振るのを止め、バランス外交に転ずるべきだ」という立場に立った意見のみが出てきました。
ですがこの問題に関しては「NATO加盟国が目標額をちゃんと支払っていないことが問題だ」「アメリカは日本の最も重要な同盟国であり、韓国のような『コウモリ外交』に転ずるべきではない」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
② 「桜を見る会」の文書破棄について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。
③ 「風を読む」にて中村哲氏の死去について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。