2019年12月8日 サンデーモーニング(後編)

2019年12月8日 サンデーモーニング(後編)

サンデーモーニング、2019年12月8日分の検証報告(後編)です。

今回の報告では、
① 米国による各国への国防費増加要求について報道された部分
② 「桜を見る会」の文書破棄について報道された部分
③ 「風を読む」にて中村哲氏の死去について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

後編で検証するのは、
③ 「風を読む」にて中村哲氏の死去について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容を見ていきましょう。

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【VTR要約】
ペルシャワール会現地代表中村哲さんが銃撃を受けて死亡した。現地当局は襲撃の事前情報があり中村さん側に注意を呼び掛けていたという。地元警察は中村さんを狙った計画的な犯行とみて捜査を進めている。現在、アフガニスタン東部でテロを繰り返しているタリバンは関与を否定している。
 今回の犯行に内外から非難の声が上がり銃撃が起きたジャララバードでは追悼集会が開かれた。生前、中村さんは「100の診療所よりも1本の用水路」と医師でありながら自ら用水路の建設に取り組むとともに、中村さんは軍事に頼らない国際貢献の大切さを繰り返し訴えてきた。中村さんはアフガニスタン空爆など武力による解決を非難し、日本の自衛隊派遣に反対する立場を国会で訴えていた。憲法9条についても「民族の理想であり、それと同時に世界の人たちの理想である」と話し、「あと20年はやる」と強い活動継続の意思を語っていたという。自身の著書の中では「裏切られても裏切り返さない誠実さこそが人々の心に触れる」と伝えていた。

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【コメンテーターの発言】
関口宏氏(要約):この間フランシスコ教皇が日本にいらっしゃったときにも、そのようなことを言っていた気がするんですが。

安田菜津紀氏(全文):まさにおっしゃる通りで、武力と一体になるっていうことはその、中立ではなくなるのでかえって身を危険に晒すんだということを繰り返しおっしゃってたと思うんですけれど、私もそれはいろんな紛争地なんかに取材に足を運んで、非常に現場で実感するところなんですね。なのであの安保法制の議論のときになんかこう、何度も警鐘を鳴らされていたと思うんですけれど、ただ同時に、忘れたくない。忘れてはいけないのが、日本から来た中村さんと一緒に5人の現地の方々がともに亡くなられているということと、やはりこう、治安状況によって、その市民の方々がテロなんかで犠牲になり続けているという状況。つまり中村さんほどの信頼関係があったとしても、命が狙われてしまうほどの状況が現地にあるということにまず、思い渡らせたいというふうに思うんですね。その中でこうして積み重ねられてきた功績というのも計り知れないものがあると思うんですけれど、だからこそ私たちはまた中村さんのようなすごい人が現れて、きっとすごいことをまたやってくれるだろうというふうにこう、他人任せでいいんだろうかっていうことを考えるんですね。で、こうしたヒーロー、ヒロインの出現を待望するということではなくて、小さくてもいいから私たちが一人ひとりどんな役割を持ち寄ることができるのかというのが私たちに残された宿題ではないかなというふうに感じます。

大宅映子氏(要約):あまりにも崇高な方は近寄りがたい感じがするが、中村さんはそうではない人間らしさを持っていることに惹かれる。世界において数少ない尊敬される日本人がこんな形で亡くなってしまったのは本当に残念。

寺島実郎氏(要約):キリスト教徒だった中村さんがあえて最澄の「一隅を照らす」という言葉を使っているので、本当に善意の人だったんだなと思う。一方で、アフガニスタンで世界の麻薬原料の75%が作られているという現実がある。アフガニスタンでは善意で関わった人を残酷に踏みつぶす様々な人たちが蠢いている。善意で関わった人がこういう形で踏みつぶされるんだなと思うとやり切れない気持ちになる。

涌井雅之氏(要約):本当に残念。中村さんが生きているうちに自分ができることを一緒にやりたかったが、何もできなかったことが自分にとって苦しい。戦前のアフガニスタンは美しい国土と宮殿があって緑も豊かだった。戦乱によって国土を滅茶苦茶にしてしまっている。我々は一つの綱になってでも、とにかく緑を増やして人々を安定させることが一番大事だと思う。こういう方こそ国民栄誉賞に相応しい。

青木理氏(全文):テロの温床がその、貧困だとか飢餓だっていうのは僕らもこういう番組でよく申し上げたりとか。で、これは正しい。その通りだと思うんですけれども、しかしそれに対処するにはどうするか。で、中村さんVTRにもありましたけれど、軍事によらない国際貢献。あるいはその武力では平和は訪れないと。これも正しい。まさに憲法、今の憲法の理想でもあるんだけれど、ただこれよく言われるのア、夢物語だとかね、あるいは最近ネットなんかではお花畑なんていう言葉があって、脳内お花畑と。そういうことを言うとね、しかし現実に中村さんがこうやって亡くなったってことを目の当たりにすると、この理想を実現するっていうのは相当な覚悟と相当な努力が必要なんだと。ついには残念なことに命を落とすようなことすら覚悟しなくちゃいけないくらい、この理想を目指すのは難しいんだなっていうことを改めて僕は教えられた感じしますよね。で、じゃあどうするのかと。その理想をあきらめるのか。ある意味安易な武力とかそういう方向に走ってしまうのか。そうじゃない、やっぱりこう立ち止まって、中村さんが掲げたある種本当に地道な努力の先にあるだろう、理想みたいなものを私たちは目指すんですか?諦めるんですか?っていうことをちょっと問われてるなという感じがしますね。で、残念だったでしょうけど、恨めとかっていうことはおそらく中村さんはおっしゃらないと思うんですね。だからそういうことを冷静に考えたうえで、さあどちらを選ぶのか。僕は当然やっぱり人類は理想の方を目指すべきだというふうには思ってますよね。
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以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、安田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、安田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
安田氏は今回の報道で、以下のように述べています。

安田氏(抜粋):まさにおっしゃる通りで、武力と一体になるっていうことはその、中立ではなくなるのでかえって身を危険に晒すんだということを繰り返しおっしゃってたと思うんですけれど、私もそれはいろんな紛争地なんかに取材に足を運んで、非常に現場で実感するところなんですね。なのであの安保法制の議論のときになんかこう、何度も警鐘を鳴らされていたと思うんですけれど、

要旨をまとめると、
・武力と一体になることは中立ではなくなることなので、かえって身を危険にさらすことになる。これは紛争地を取材するときに感じることで、安保法制の議論の際にも警鐘されてきた。

というものです。

しかしながら、
・国連のPKOなど中立性を維持しつつ武力による平和維持を行う活動が現在多数実施されており、武力と一体化することが中立ではなくなることだとする安田氏の主張は事実に即していない。
・武力と一体にならずに非武装で危険地帯に入る方が安全だとする安田氏の主張は明らかに事実に反している。また、個人での活動と安保法制のような国単位での活動を一緒くたに扱う安田氏の主張は事実に即していない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での安田氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。

青木氏(抜粋):テロの温床がその、貧困だとか飢餓だっていうのは僕らもこういう番組でよく申し上げたりとか。で、これは正しい。その通りだと思うんですけれども、しかしそれに対処するにはどうするか。で、中村さんVTRにもありましたけれど、軍事によらない国際貢献。あるいはその武力では平和は訪れないと。これも正しい。まさに憲法、今の憲法の理想でもあるんだけれど、ただこれよく言われるのア、夢物語だとかね、あるいは最近ネットなんかではお花畑なんていう言葉があって、脳内お花畑と。そういうことを言うとね、しかし現実に中村さんがこうやって亡くなったってことを目の当たりにすると、この理想を実現するっていうのは相当な覚悟と相当な努力が必要なんだと。
ついには残念なことに命を落とすようなことすら覚悟しなくちゃいけないくらい、この理想を目指すのは難しいんだなっていうことを改めて僕は教えられた感じしますよね。で、じゃあどうするのかと。その理想をあきらめるのか。ある意味安易な武力とかそういう方向に走ってしまうのか。そうじゃない、やっぱりこう立ち止まって、中村さんが掲げたある種本当に地道な努力の先にあるだろう、理想みたいなものを私たちは目指すんですか?諦めるんですか?っていうことをちょっと問われてるなという感じがしますね。で、残念だったでしょうけど、恨めとかっていうことはおそらく中村さんはおっしゃらないと思うんですね。だからそういうことを冷静に考えたうえで、さあどちらを選ぶのか。僕は当然やっぱり人類は理想の方を目指すべきだというふうには思ってますよね。

要旨をまとめると、
・テロの温床が貧困や飢餓だという主張は正しく、対処するためには軍事によらない国際貢献が必要で、武力で平和は訪れないという主張も正しい。これは今の日本の憲法の理想でもあるが、「夢物語」だとか「脳内お花畑」などと言われている。
・中村さんが亡くなったことで軍事によらない国際貢献の難しさを目の当たりにするが、だからといって理想をあきらめたり安易な武力に走ったりせず、地道な努力で理想を目指すべきだ。

というものです。

しかしながら、
・アルカイダやISといったテロ組織の幹部がエリート・富裕層出身であったり、先進国の若者がISに参加、あるいはホームグロウンテロが台頭したりと、テロが起きる理由は決して飢餓や貧困だけではない。したがって「テロの温床は貧困や飢餓だ」と一概に決めつける青木氏の主張は事実に即していない。
・こうしたテロ行為を止めるために軍事以外の国際支援が必要なことは確かだが、まず地域の安定化が必要なことを鑑みれば「だから武力では平和が訪れない」とする主張は明らかに事実に反している。
・また、一般に「夢物語」「脳内お花畑」と言われているのは軍事によらない国際貢献「だけを」主張する場合であり、「軍事によらない国際貢献」を主張する人すべてがこのようなレッテルを張られているという青木氏の主張は事実に即していない。
・地域の安定化のために多国籍軍やPKOなど武力を適切に行使し、そのうえで非軍事による支援を実施するのが国連をはじめとする国際社会の平和構築である。したがって、武力と理想を相対化する主張は明らかに事実に反しており、政治的に公平とは言えない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「中村さんの理想である軍事に依らない国際貢献を我々も志向していくべきだ」「憲法9条の理想を固持していくべき」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「地域の安定化のため、護身のために軍事力は必要だ」「理想だけではなく現実を踏まえるべきだ」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の後編となります。後編では政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

① 米国による各国への国防費増加要求について報道された部分
については前編の報告を、

② 「桜を見る会」の文書破棄について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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