2019年12月15日 サンデーモーニング(前編)

2019年12月15日 サンデーモーニング(前編)

TBS「サンデーモーニング」、2019年12月15日放送回の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
① イギリスの総選挙における保守党圧勝について報道された部分
② 「風を読む」にて今年の政治について報道された部分
③ グレタ氏の「今年の人」選出と日本の脱石炭見送りについて報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
① イギリスの総選挙における保守党圧勝について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

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【VTR要約】
 イギリスで総選挙が行われ、EU離脱を訴える与党保守党が圧勝した。2016年に国民投票でEU離脱が決まったが、離脱に関する協議はなかなか進まず3年半にわたり迷走してきた。野党労働党は2回目の国民投票でEU離脱の是非を問うべきだと主張していたが、迷走に嫌気がさした有権者が保守党に票を投じたとの見方がある。一方、今回の選挙ではEU残留派のスコットランド民族党やアイルランド統一を目指す勢力が議席を伸ばし、4つの地域からなるイギリスの統一が脅かされる懸念も出ている。
 EUは戦争の反省から始まったが、ヨーロッパに移民が大量に流入してきたことで移民を排斥する動きが強まり、イギリスではEU離脱を求める理由の一つとなった。離脱派はEU離脱により経済が良くなると主張しているが、専門家は経済的苦境に陥る可能性があると指摘。EUを主導するドイツのメルケル首相は「イギリスはEUの競争相手になる」と牽制した。

【アナウンサーによるパネル説明】
・与党保守党は67議席増やし、野党労働党は40議席を失った
・スコットランド民族党の躍進により、今後スコットランド独立を目指す動きが強まると考えられる
・離脱協定関連法案が議会承認されれば1月末にはEUを離脱となる
・その後は移行期間となりEUとの間で関税や安全保障に関する交渉が行われる見通し

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【コメンテーターの発言】
姜尚中氏(要約):客観的に見て間違いなく誤りなのに、恍惚状態に陥っている。そういうことが先進国で行われているところに、民主主義の危機がある。ある雑誌では、イギリスはアメリカのプードルになると言われている。そういうシナリオが用意されている気がする。

浜田敬子氏(全文):専門家の方もご指摘されてたように、EUから離脱することはイギリス経済にとっては良くないというふうに皆言ってるにも関わらず、目の前の自分の生活が苦しい。仕事がないという、この、なんか自分だけ自分だけが損しているっていう感じがどうしても今、そのナショナリズムと結びつくという傾向はこれイギリスだけではないですよね。アメリカのトランプ圧勝とかも含めてそうだし、日本にもその傾向がやっぱりあると思います。で、本当にでもその、今回保守派が勝ったことで、自分たちの生活の不安や不満は解消されるのかというと、ここはちょっとやっぱ違うのではないかということを感じます。もうひとつは今回その、選挙の直前ぐらいになって若者は非常に労働党、やっぱり残留支持ということで盛り上がりを見せていたので、やっぱりもう、この若者の時代になってみると、インターネットでグローバルになって、地球上どこでも働きたいという欲求のある人もまあ、イギリスにも多いので、その人たちとの分断。世代間の分断とか、都市と地方の分断ってのはますます進むのかなというふうに感じます。

仁藤夢乃氏(全文):自分の国さえ良ければいいっていう自国第一主義とか、排他的な考え方っていうのが広がっているのかなというふうに思っていて、権力者たちが何かわかりやすい敵を作って票とか支持を集めようとするっていうことが世界中で起きているんじゃないかなと思うんですね。で、その現実の問題に向き合うことよりも、なんかこれこそが解決策みたいなわかりやすい政治っていうのが人気を取っている気がして。その分かりやすい議論になることで解決策もわかりやすくて、それで全て解決できるかのように勘違いしてしまうということがあるかもしれないんですね。少しでも現状を変えてくれるなら良いんじゃないかなって思ってしまう人もいると思うんですけど、このEU離脱に向けては、移民の問題もあったんですけど、まあなんかどう共生していくのか。そういう議論をもっとしていかないといけないと思っています。

与良正男氏(全文):私はどうしても日本国内政治とね、比較してみてしまうんですけれども、直近の世論調査でも、EU離脱か残留かっていう世論調査をすれば、ほとんど拮抗している。残留の方が少し上がったりするにもかかわらず、こういう結果になるっていうのが、もう小選挙区制っていう制度のなせる業ですね。それともう一つは、VTRにも出てましたけど、決められない政治っていうものに対するうんざり感ですね。で、しかも労働党の方は、実は党内バラバラなもんだから、結局態度を決められなくて、もう一回国民投票しようとしか言えなかったと。そういううんざり感だったと。で、野党が弱すぎたということに尽きると思うんですけど、じゃあこれで決められる政治になる、スピーディーに決める政治になるってのはやっぱり落とし穴があると思いますよね。ただでさえ選挙前でも今の首相は強引な、国会を無視したりとかですね、穏健派の保守党の議員を追い出しちゃったりとかですね。強引さが目立ってきたわけですよ。これ自信もって進めると、ますますもしかするとね、分断が激しくなる可能性が僕は濃厚だと思うんですね。それをどう抑えられるのかということだと思います。それに尽きますね。世界中、先ほどから出てますけど、同じような傾向がね、やっぱり出てるという、で、強引な政権運営というのが目立つ感じがしますね。

松原耕二氏(要約):イギリスがこんな選択をした大元の理由は国民投票。イギリスは議会制度のお手本と言われてきたが、国民投票で安易に決めてしまったことが大きな過ち。しかもその選挙では様々なフェイクニュースが飛び交い、今も半数の人がそれを信じている。静かな環境で静かに判断できる環境を作らないと、国民投票であっても一歩間違えば危険なことが起き得ることを教訓とするべきだと思う。

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以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、浜田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、仁藤氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、与良氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
4、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、浜田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
浜田氏は今回の報道で、以下のように述べています。

浜田氏(抜粋):専門家の方もご指摘されてたように、EUから離脱することはイギリス経済にとっては良くないというふうに皆言ってるにも関わらず、目の前の自分の生活が苦しい。仕事がないという、この、なんか自分だけ自分だけが損しているっていう感じがどうしても今、そのナショナリズムと結びつくという傾向はこれイギリスだけではないですよね。アメリカのトランプ圧勝とかも含めてそうだし、日本にもその傾向がやっぱりあると思います。で、本当にでもその、今回保守派が勝ったことで、自分たちの生活の不安や不満は解消されるのかというと、ここはちょっとやっぱ違うのではないかということを感じます。もうひとつは今回その、選挙の直前ぐらいになって若者は非常に労働党、やっぱり残留支持ということで盛り上がりを見せていたので、やっぱりもう、この若者の時代になってみると、インターネットでグローバルになって、地球上どこでも働きたいという欲求のある人もまあ、イギリスにも多いので、その人たちとの分断。世代間の分断とか、都市と地方の分断ってのはますます進むのかなというふうに感じます。

要旨をまとめると、
・「EUからの離脱がイギリス経済によくない」とみんなが言っているにもかかわらず、「目の前の自分の生活が苦しい」「仕事がない」という自分だけが損している感覚がナショナリズムと結びついている。これはイギリスだけではなく、トランプ米大統領を生んだアメリカや日本にも同じ傾向がある。
・保守派が勝ったことでイギリス国民の不安や不満が解消されるわけではない。
・選挙の直前に労働党が残留支持で盛り上がっていたが、これは若者の時代がネットでグローバル化し、地球上どこでも働きたいという人が多いからだ。世代間や地域間での分断が深まるだろう。

というものです。

しかしながら、
・「EUからの離脱がイギリス経済に良くない」という立場を「みんなが言っている」とあたかも多数派かのように表現する主張は政治的に公平とは言えず、事実にも即していない。
・イギリス国民がEU離脱を支持する理由は移民の問題など様々あるにもかかわらず「目の前の生活が苦しい」「仕事がない」からだと決めつける主張は事実に即していない。またこうした声を「自分だけが損している」「ナショナリズムの温床」とあたかも身勝手で危険な主張のように表現するのは政治的に公平とは言えない。
・トランプ米大統領や日本の安倍首相が支持される理由を「目の前の生活が苦しいから」「仕事がないから」だとする主張には一切根拠がない。
・保守派が勝ってもイギリス国民の不安や不満は解消されない、という主張には全く根拠がなく、浜田氏の憶測に過ぎない。
・選挙の直前に労働党が残留支持で盛り上がった、とする主張は総選挙における保守党圧勝に影響を与えるものではない。またこうした動きが「ネットでグローバル化した若者による」という主張には根拠がなく、EUを離脱してもイギリス人が地球上どこでも働けることを鑑みれば事実に即しているとは言えない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での浜田氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、仁藤氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
仁藤氏は今回の報道で、以下のように述べています。

仁藤氏(抜粋):自分の国さえ良ければいいっていう自国第一主義とか、排他的な考え方っていうのが広がっているのかなというふうに思っていて、権力者たちが何かわかりやすい敵を作って票とか支持を集めようとするっていうことが世界中で起きているんじゃないかなと思うんですね。で、その現実の問題に向き合うことよりも、なんかこれこそが解決策みたいなわかりやすい政治っていうのが人気を取っている気がして。その分かりやすい議論になることで解決策もわかりやすくて、それで全て解決できるかのように勘違いしてしまうということがあるかもしれないんですね。少しでも現状を変えてくれるなら良いんじゃないかなって思ってしまう人もいると思うんですけど、このEU離脱に向けては、移民の問題もあったんですけど、まあなんかどう共生していくのか。そういう議論をもっとしていかないといけないと思っています。

要旨をまとめると、
・自分の国さえ良ければよいという自国第一主義、排他的な考えが広がっており、権力者たちが分かりやすい敵を作って票や支持を集めることが世界中で起きている。
・現実の問題に向き合うよりも分かりやすい政治が人気を取っている。解決策が分かりやすいからすべて解決すると勘違いしてしまい、現状がよくなるならと投票する人もいるかもしれない。
・EU離脱に関しては移民の問題などどのように共生していくかという議論がもっと必要だ。

というものです。

しかしながら、
・自国の経済や自国民の生活を考えた政治を「自分の国さえ良ければいい」という覇権主義的な政治と一緒くたにする主張は政治的に公平とは言えない。またこうした政治が支持されている現状を「分かりやすい敵を作って支持を集めている」とする主張には一切根拠がなく、事実に即しているとは言えない。
・「解決策が分かりやすいから騙される人がいる」という主張には一切根拠がなく、また政治的な公平性を明らかに欠いた支持者を馬鹿にする暴言だと言わざるを得ない。また「現実の問題に向き合っていない」とする主張には根拠がなく、事実に即しているとは言えない。
・ブレグジットの国民投票が2016年であることを踏まえると、EU離脱に関して議論がなされていないという主張は事実に即していない。また移民の問題について共生を前提とした主張は政治的に公平とは言えない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での仁藤氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、与良氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
与良氏は今回の報道で、以下のように述べています。

与良氏(抜粋):私はどうしても日本国内政治とね、比較してみてしまうんですけれども、直近の世論調査でも、EU離脱か残留かっていう世論調査をすれば、ほとんど拮抗している。残留の方が少し上がったりするにもかかわらず、こういう結果になるっていうのが、もう小選挙区制っていう制度のなせる業ですね。それともう一つは、VTRにも出てましたけど、決められない政治っていうものに対するうんざり感ですね。(中略)これで決められる政治になる、スピーディーに決める政治になるってのはやっぱり落とし穴があると思いますよね。ただでさえ選挙前でも今の首相は強引な、国会を無視したりとかですね、穏健派の保守党の議員を追い出しちゃったりとかですね。強引さが目立ってきたわけですよ。これ自信もって進めると、ますますもしかするとね、分断が激しくなる可能性が僕は濃厚だと思うんですね。それをどう抑えられるのかということだと思います。それに尽きますね。世界中、先ほどから出てますけど、同じような傾向がね、やっぱり出てるという、で、強引な政権運営というのが目立つ感じがしますね。

要旨をまとめると、
・EU離脱か残留かという世論調査は拮抗している、にもかかわらずこうした結果になるのは小選挙区制のなせる業だ。
・決められない政治へのうんざり感が出ているが、スピーディーに決まる政治には落とし穴がある。選挙前でも今の首相は国会を無視したり穏健派を党から追い出したりと強引さが目立っていた。選挙の結果を受けて自信をつけるとますます分断が激しくなる可能性がある。
・世界中でこのような強引な政権運営が目立つ。

というものです。

しかしながら、
・今回の総選挙における保守党の得票率は43.6%、労働党の得票率は32.1%であり、小選挙区制が今回の選挙結果を生んだとする主張は事実に即していない。また世論調査の結果を以て国民投票や総選挙の結果を否定することはできない。
・ボリスジョンソン首相の政治を「落とし穴のあるスピーディーな政治」などと熟慮に欠けるかのように表現する主張は根拠がなく、政治的に公平とは言えない。また首相の国会への対応、党内での動きとブレグジットの推進は別の話であり、これらを一緒くたに「強引」とする主張は事実に即していない。
・世界中で強引な政権運営が目立つという主張には何ら根拠がなく、与良氏の主観的な感想に過ぎない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での与良氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

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4、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「ブレグジット離脱は自国第一主義の現れであり誤りだ」「世界中でのナショナリズムの台頭が懸念される」という立場に立った意見ばかりが出てきました。

ですがこの問題に関しては「自分たちや自国のことを考えたイギリス国民が決断したことだ」「まずは自国のことを大切にすべき」といった反対の意見があります。

にもかかわらず、今回の報道におけるVTRやパネル説明ではそうした意見をほとんど取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② 「風を読む」にて今年の政治について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

③ グレタ氏の「今年の人」選出と日本の脱石炭見送りについて報道された部分
については後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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