TBS「サンデーモーニング」、2019年12月15日放送回の検証報告(中編)です。
今回の報告では、
① イギリスの総選挙における保守党圧勝について報道された部分
② 「風を読む」にて今年の政治について報道された部分
③ グレタ氏の「今年の人」選出と日本の脱石炭見送りについて報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
中編で検証するのは、
② 「風を読む」にて今年の政治について報道された部分
となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
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【VTR要約】
2017年、森友学園・加計学園問題で安倍首相は「信なくば立たず。何か指摘があればその都度真摯に説明責任を果たしていく」と語っていた。しかし今年1年の国会を振り返ると、統計不正問題について政府の説明に納得できないと答えた人が67%に上り、老後資金2000万円問題では麻生大臣自ら諮問したにもかかわらず報告書の受け取りを拒否。火消しを図りたい政府の思惑が垣間見え、党首討論でも枝野代表から「説明責任を果たすべき」との批判があった。内閣支持率は高い水準で推移していたが、10月以降、2人の閣僚が政治とカネをめぐる問題で相次ぎ辞任。両者とも「説明責任を果たす」と話していたが、現在も国会に姿すら見せていない。
秋の臨時国会では桜を見る会をめぐる問題が大きな争点となったが、安倍首相は委員会での質疑に応じず、招待状の電子データの復元は不可能と主張。電子データの復元は考えていないとする答弁書を閣議決定し、説明責任を全うするのに必要な公文書管理への疑問は残されたままである。今月行われた世論調査では、桜を見る会をめぐる首相の一連の説明について納得していないと答えた人は72%に上った。
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【コメンテーターの発言】
姜尚中氏(要約):説明責任をめぐる問題の背景には、政治を企業統治と履き違えているところにある。
政治家の権力が自分たちの意志を命令という形で通す企業の最高責任者的な権力のようになってしまっていて、今の若者もCEO=首相として政府を考えている。しかし政治学は価値の権威的配分。正当性がある必要がある。正当性があるためには説明責任がなければいけないが、いつのまにか政治が企業統治になってしまっている。
浜田敬子氏(全文):これだけ政府の説明に対して納得していないという人が7割っていう数字があるにもかかわらず、支持率が高止まりしているっていう。これ何なんだろうかと思うと、支持率のところをみるとですね、他に選択肢がないとかですね、他よりましっていう人が多いんですよね。で、そこはまあ私メディアの立場としては、メディアも他の選択肢をきちんと示してこなかったっていう反省があるんですね。例えば、自民党VS野党って構造だけでやっぱり物事を捉えてしまう。本当にじゃあ自民党の中でも他に次の指導者、いないのかとか、自民党の中でもっと議論すべきだとかですね、やっぱり選択、あと問題の本質はどこにあるのかというようなことをもっときちんと伝える努力をしなければならないという反省はあります。もう一つはブレグジッドと言われたように、自分の目の前の生活が苦しいと、手近な強い言葉にやっぱり惹かれてしまう。一見それは問題を隠してるにも関わらず、なんかそこにすがれば解決するんじゃないかという幻想とか妄想を抱いている人が多いのではないか。特に今若い人ですね。就職率が良くなったということは本当はアベノミクスの成果ではない。人口減とか労働力不足が背景にあるにもかかわらず、安倍政権のおかげだと思ってしまうというような背景があるのかなということを感じます。
仁藤夢乃氏(全文):桜を見る会の招待者名簿について、シュレッダーにかけたのが障害者雇用の方だったというふうに発言したことは、とても大きい問題だと思っています。で、その必要のないところでわざわざこういう発言をするっていうのは、まあ言い訳として障害者の方を使ったって捉えられても仕方がないことで、真っ当な人権感覚があれば、できない発言じゃないかなというふうに思うんですね。安倍政権では官僚のセクハラを擁護するような閣僚の発言などもありましたが、貧困とか虐待。性的搾取など人権問題の取り組みに本気度があまり感じられなくて、働き方の規制緩和とか、外国人労働者の扱いなど弱者にしわ寄せがいくような政治が続いていると思います。医療とか福祉。そういう年金制度の改革などからも、困ったときには自分たちで助け合ってくださいって矜持を求められて、市民に自己責任を押し付けるってことになってきていると思うんですよね。でも若い世代と関わっててもこういう政治に慣れてしまっていて、どうせ変わらないって諦め感を感じている人も多いと感じています。でも、もっと怒っていいし、それを表明することで、その政治の姿勢を正していくということが必要なのかなと思っています。
松原耕二氏(全文):なぜこんな政治になってしまったのかというのを考えると、第一次安倍政権のときには結構実は生真面目に説明して大臣が次々辞めて。そういうこともあって退陣に追い込まれてるんですね。その反省というかその経験から今の政権はですね、どうしたら政権維持できるかと、長くできるかって、これが目的化してるように見えるわけですね。だから大臣も少々のことがあってもなかなか辞めない。そしてまあ、官邸独裁といわれる体制を敷いて、官僚を抑え、自民党内を抑えるわけですね。そうすると、少々のことがあったりして、まあ公文書が消えたり、あるいは説明しなくても野党は、まあ弱くてその、代わりがなかなかない、選択肢がないわけですから政権を維持できるわけですね。だから今の政権のふるまいの根っこにはそういうところがあるんじゃないかと思うんですね。じゃあどうすればいいのかと。なかなか妙はないんですが、先ほどもあったようにまあ、野党がなんとか元気になってもらうように育てるようとすること。あとは、国民がやっぱり声を上げなきゃいけないと思いますね。メディアを含めてですけど、もっと怒んなきゃいけないとさっきおっしゃいましたが、私もそう思いますね。
与良正男氏(要約):国民が声を上げなければという話だったが、まず忘れないこと。桜を見る会も年が明ければ忘れるんだと高をくくられているから、そうさせないこと。メディアの責任ももちろん重要で、私もしつこく追及していかないといけないと思っている。
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以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で我々が問題だと考えたのは、以下の4点です。
1、浜田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、仁藤氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
4、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
それぞれ順を追って解説します。
1、浜田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
浜田氏は今回の報道で、以下のように述べています。
浜田氏(抜粋):これだけ政府の説明に対して納得していないという人が7割っていう数字があるにもかかわらず、支持率が高止まりしているっていう。これ何なんだろうかと思うと、支持率のところをみるとですね、他に選択肢がないとかですね、他よりましっていう人が多いんですよね。で、そこはまあ私メディアの立場としては、メディアも他の選択肢をきちんと示してこなかったっていう反省があるんですね。例えば、自民党VS野党って構造だけでやっぱり物事を捉えてしまう。本当にじゃあ自民党の中でも他に次の指導者、いないのかとか、自民党の中でもっと議論すべきだとかですね、やっぱり選択、あと問題の本質はどこにあるのかというようなことをもっときちんと伝える努力をしなければならないという反省はあります。もう一つはブレグジッドと言われたように、自分の目の前の生活が苦しいと、手近な強い言葉にやっぱり惹かれてしまう。一見それは問題を隠してるにも関わらず、なんかそこにすがれば解決するんじゃないかという幻想とか妄想を抱いている人が多いのではないか。特に今若い人ですね。就職率が良くなったということは本当はアベノミクスの成果ではない。人口減とか労働力不足が背景にあるにもかかわらず、安倍政権のおかげだと思ってしまうというような背景があるのかなということを感じます。
要旨をまとめると、
・メディアとしては自民党対野党の構造で物事をとらえるあまり、安倍政権以外の選択肢や問題の本質がどこにあるのかを示してこなかったという反省がある。
・ブレグジットのように自分の目の前の生活が苦しいせいで手近な強い言葉に惹かれる人が多いがそれは問題を隠している幻想や妄想だ。
・若い人の就職率がよくなったのはアベノミクスの成果ではなく、人口減や労働力不足が背景にある。若い人はこれを安倍政権のおかげだと思っているのではないか。
というものです。
しかしながら、
・サンデーモーニングをはじめとする一部のマスメディアは政権批判の側や野党側に偏った報道を繰り返すことで視聴者に安倍政権以外の選択肢をアピールしてきた経緯があり、浜田氏の主張は事実に即していない。また安倍政権以外の選択肢を選ぶことがあたかも必要かのように主張することは政治的公平性を欠く。
・安倍政権を支持する理由について「自分の目の前の生活が苦しいせいで強い言葉に惹かれる」からだとする主張には全く根拠がなく、事実に基づいておらず政治的公平性を欠く。
・大卒就職率が98%まで上昇したのはアベノミクスによる好景気によって雇用が伸びたからである。安倍政権が発足した2013年以降は労働力人口が増加しているにもかかわらず就業者数も共に増加しており、これは労働需要(雇用)が労働供給(働き手)以上に拡大したからである。したがって、人口減や労働力不足が就職率の上昇の理由だとする浜田氏の主張は明らかに事実に反している。
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での浜田氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
2、仁藤氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
仁藤氏は今回の報道で、以下のように述べています。
仁藤氏(抜粋):桜を見る会の招待者名簿について、シュレッダーにかけたのが障害者雇用の方だったというふうに発言したことは、とても大きい問題だと思っています。で、その必要のないところでわざわざこういう発言をするっていうのは、まあ言い訳として障害者の方を使ったって捉えられても仕方がないことで、真っ当な人権感覚があれば、できない発言じゃないかなというふうに思うんですね。安倍政権では官僚のセクハラを擁護するような閣僚の発言などもありましたが、貧困とか虐待。性的搾取など人権問題の取り組みに本気度があまり感じられなくて、働き方の規制緩和とか、外国人労働者の扱いなど弱者にしわ寄せがいくような政治が続いていると思います。医療とか福祉。そういう年金制度の改革などからも、困ったときには自分たちで助け合ってくださいって共助を求められて、市民に自己責任を押し付けるってことになってきていると思うんですよね。でも若い世代と関わっててもこういう政治に慣れてしまっていて、どうせ変わらないって諦め感を感じている人も多いと感じています。でも、もっと怒っていい
要旨をまとめると、
・桜を見る会の招待者名簿について、シュレッダーにかけたのが障害者雇用の方だったと発言したことは大きな問題だ。必要のないところでわざわざこうした発言をすることは言い訳として障害者を使ったと思われても仕方がない。真っ当な人権感覚があればこんな発言はできないはずだ。
・安倍政権では貧困や虐待、性的搾取など人権問題への取組に本気度が感じられない。働き方の規制緩和や外国人労働者の扱いなど弱者にしわ寄せがいくような政治が続いている。
・医療や福祉、年金制度の改革も共助を求められ、市民に自己責任を押し付けている。若者世代はこうした政治に慣れてしまって諦めているが、もっと怒ってもいい。
というものです。
しかしながら、
・シュレッダーにかけた職員についての説明は野党の質問に対して事実を回答したものであり、必要のないところで発言して言い訳に使ったとする仁藤氏の主張は明らかに事実に反している。またこうした事実を無視して「真っ当な人権感覚がない」と主張する仁藤氏の主張は明らかに政治的公平性を欠く。
・安倍政権では景気回復を通した雇用の改善や働き方改革、外国人労働者の受け入れに関する制度改革や児童虐待への対策など各種取組を行っており、仁藤氏の主張は事実に即していない。また「人権問題への取組に本気度が感じられない」「弱者にしわ寄せがいく」という主張は仁藤氏の主観的な感想に過ぎず、政治的公平性を欠く。
・医療や福祉、年金制度改革について「市民に自己責任を押し付けている」とする主張は仁藤氏の主観的な感想に過ぎない。また安倍政権への支持率が7割を超える若者世代について「こうした政治に慣れて諦めている」とする発言には何ら根拠がなく、また「他の内閣より良い」「実行力がある」「政策に期待できる」とする安倍内閣を支持する理由を無視しており事実に即していない。
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での仁藤氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
3、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
松原氏は今回の報道で、以下のように述べています。
松原氏(抜粋):なぜこんな政治になってしまったのかというのを考えると、第一次安倍政権のときには結構実は生真面目に説明して大臣が次々辞めて。そういうこともあって退陣に追い込まれてるんですね。その反省というかその経験から今の政権はですね、どうしたら政権維持できるかと、長くできるかって、これが目的化してるように見えるわけですね。だから大臣も少々のことがあってもなかなか辞めない。そしてまあ、官邸独裁といわれる体制を敷いて、官僚を抑え、自民党内を抑えるわけですね。そうすると、少々のことがあったりして、まあ公文書が消えたり、あるいは説明しなくても野党は、まあ弱くてその、代わりがなかなかない、選択肢がないわけですから政権を維持できるわけですね。だから今の政権のふるまいの根っこにはそういうところがあるんじゃないかと思うんですね。じゃあどうすればいいのかと。なかなか妙はないんですが、先ほどもあったようにまあ、野党がなんとか元気になってもらうように育てるようとすること。あとは、国民がやっぱり声を上げなきゃいけないと思いますね。メディアを含めてですけど、もっと怒んなきゃいけないとさっきおっしゃいましたが、私もそう思いますね。
要旨をまとめると、
・第一次安倍政権の際には生真面目に大臣が辞任して退陣に追い込まれている、その経験から今の政権はどうしたら政権を維持できるかが目的化している。だから大臣もなかなか辞めないのだ。
・官邸独裁と言われる体制を敷き、官僚を抑え、自民党内を抑える。そうすると公文書が消えたりそれについて説明しなくても野党が弱いから変わりがなかなかいない、だから政権を維持できる。
・野党に何とか元気になってもらうように育てるようにすることとメディアや国民がもっと怒りの声を上げることが必要だ。
というものです。
しかしながら、
・安倍政権の人事について、過去の政権運営で大臣を辞任させたことが退陣につながったので今の政権では辞めさせないのだという松原氏の主張には一切根拠がない。
・政権が維持できるのが「野党が弱いから」であるならば、安倍政権の人事政策の如何に関わらず原因は野党にある。
・「野党に何とか元気になってもらう」「メディアや国民が怒りの声を上げるべき」という主張は明らかに野党側に肩入れしたもので政治的公平性を欠く。
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での松原氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
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4、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「安倍政権は桜を見る会でも火消しに躍起になっており、責任を取ろうとしない」「安倍政権を打倒するためにメディアと国民が怒りの声を上げ、野党を育てるべき」という立場に立った意見ばかりが出てきました。
ですがこの問題に関しては「安倍政権には桜を見る会以上に大事な仕事がある」「国民は安倍政権にではなく野党とメディアに怒っている」といった反対の意見があります。
にもかかわらず、今回の報道におけるVTRやパネル説明ではそうした意見をほとんど取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の中編となります。中編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
③ グレタ氏の「今年の人」選出と日本の脱石炭見送りについて報道された部分
については中編の報告をご覧ください。
① イギリスの総選挙における保守党圧勝について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。