2019年12月15日 サンデーモーニング(後編)

2019年12月15日 サンデーモーニング(後編)

TBS「サンデーモーニング」、2019年12月15日放送回の検証報告(後編)です。

今回の報告では、
① イギリスの総選挙における保守党圧勝について報道された部分
② 「風を読む」にて今年の政治について報道された部分
③ グレタ氏の「今年の人」選出と日本の脱石炭見送りについて報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

後編で検証するのは、
③ グレタ氏の「今年の人」選出と日本の脱石炭見送りについて報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

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【VTR要約】
 アメリカの雑誌TIMEは今年の人にグレタ・トゥンベリ氏を選出。これにトランプ大統領はTwitterで「バカバカしい。自分の怒りをコントロールする問題に取り組むべき」と反発。一方トゥンベリ氏はTwitterの自己紹介欄を「怒りのコントロールに取り組む10代」と書き換え、一枚上手の対応を見せた。
石炭火力発電は火力発電の中で温室効果ガスの排出量が最も多いことから、ヨーロッパ各国が撤廃に向けて動いている。一方、今も全体の26.9%が石炭火力発電である日本は国際社会から厳しい批判を浴びている。小泉大臣はCOP25の演説の中で具体的な削減策には踏み込まなかったが、国内の温室効果ガス排出量が5年連続で削減されていることをアピールした。しかし同じ日、COP25の期間中「温室効果ガス削減に最も消極的な国」に毎日送られる化石賞を今月3日に続いて再び日本が受賞。トゥンベル氏は「実際のところ何も実行されていないという事実にどう反応するつもりですか?」と厳しい世界に問いを突き付けた。

【アナウンサーによるパネル説明】
・ヨーロッパ各国は石炭火力発電の具体的な廃止期限を決めているが、日本は未定
・小泉環境大臣は目標すら国際社会に示すことができなかった
・現在日本は22の石炭火力発電所の新設計画があり、稼働すれば年間7474万トン増える可能性も
・ベチナム、インドネシアなど海外への輸出は継続して進められ、日本の投資額等は総額2.8兆円とも
・日本の再生可能エネルギーの割合は5.2%であり、ヨーロッパから遅れを取っている

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【コメンテーターの発言】
仁藤夢乃氏(全文):グレタさんは何もしないことよりも脅威なのは、政治家や企業のトップがやっているように見せていることだっていうふうに話しているんですよね。でも、そのブラジルの大統領は、グレタさんをあんなガキだって言ったり、プーチン大統領も、彼女が現実を知らないかのような発言をしたり、トランプ大統領のTwitterの発言なんかもあるわけですが、まあこういう発言っていうのは、これまで大人たちが直視して行動してこなかったっていうことを指摘されたことに対して、彼らを少女が声をあげたことを揶揄するような発言までしているんですよね。私も活動するなかで、そういう権力者からそういう攻撃にさらされるっていうことはよくあるんですけど、今回このたった16歳の少女を、なんでこんなにも彼らは恐れているのかというと、それは彼女の言っていることが芯をついているからだと思うんです。で、そういうときに彼女は怒っているとか落ち着いてない、狂ってるんだとおかしい人であるかのように扱ったり、彼女は誤解してる、分かってないってして、自分がわかってる、自分の方がわかってるんだよっていう態度を取ったりとか、バカにして耳を傾ける価値もないかのように扱うことで、権力者たちはその自分を守って、批判者を黙らせようとするっていうこと。これはこれまでも繰り返しやられてきたやり方なんですね。で、これは特に声を上げた女性たちに対していつもされてきた攻撃の仕方だと思うんです。で、今回日本でも、小泉大臣の発言。グレタさんからPRばっかりしてるなと言われているわけですけど、それも自分の責任を自覚して反省しようっていう態度ではないと思うんですね。なので、こういう態度を私たちがそのまま受け入れてしまってはいけないと考えています。

与良正男氏(要約):新次郎氏を環境大臣に起用したとき、安倍首相は相当意地悪な人事をしたなと思った。環境省の幹部によれば、演説の原文では火力発電に言及しておらず、小泉大臣は「これでは世界は納得しない」と言って官邸とも話をしたというが、こういう結果になってしまった。せめて記者会見等で自分の意思をきちんと言えば、国内の議論は進んだかもしれないが、問題提起すらしなかったのはもったいない。純一郎元首相は異論があれば必ずテレビや記者会見で発言をして議論を巻き起こしていた。議論さえなかったのはとても残念。

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以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、仁藤氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、仁藤氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
仁藤氏は今回の報道で、以下のように述べています。

仁藤氏(抜粋):
グレタさんは何もしないことよりも脅威なのは、政治家や企業のトップがやっているように見せていることだっていうふうに話しているんですよね。でも、そのブラジルの大統領は、グレタさんをあんなガキだって言ったり、プーチン大統領も、彼女が現実を知らないかのような発言をしたり、トランプ大統領のTwitterの発言なんかもあるわけですが、まあこういう発言っていうのは、これまで大人たちが直視して行動してこなかったっていうことを指摘されたことに対して、彼らを少女が声をあげたことを揶揄するような発言までしているんですよね。私も活動するなかで、そういう権力者からそういう攻撃にさらされるっていうことはよくあるんですけど、今回このたった16歳の少女を、なんでこんなにも彼らは恐れているのかというと、それは彼女の言っていることが芯をついているからだと思うんです。で、そういうときに彼女は怒っているとか落ち着いてない、狂ってるんだとおかしい人であるかのように扱ったり、彼女は誤解してる、分かってないってして、自分がわかってる、自分の方がわかってるんだよっていう態度を取ったりとか、バカにして耳を傾ける価値もないかのように扱うことで、権力者たちはその自分を守って、批判者を黙らせようとするっていうこと。これはこれまでも繰り返しやられてきたやり方なんですね。で、これは特に声を上げた女性たちに対していつもされてきた攻撃の仕方だと思うんです。で、今回日本でも、小泉大臣の発言。グレタさんからPRばっかりしてるなと言われているわけですけど、それも自分の責任を自覚して反省しようっていう態度ではないと思うんですね。なので、こういう態度を私たちがそのまま受け入れてしまってはいけないと考えています。

要旨をまとめると、
・グレタ氏は「何もしないことより脅威なのは、政治家や企業のトップが何かやっているように見せかけていることだ」と話している。
・ブラジルの大統領がグレタ氏を「あんなガキ」と呼んだり、プーチン大統領が彼女が現実を知らないかのように発言をしたり、トランプ米大統領のTwitterの発言などもあるが、こういう発言は大人たちが直視して行動しなかったことを指摘されたことに対して身を守るために少女だからと揶揄するものだ。私も活動するなかで権力者からの攻撃にさらされることはよくあるが、グレタ氏を権力者が恐れるのは彼女の発言が真を突いているからだ。
・権力者たちはグレタ氏を「狂っている」「落ち着きがない」「おかしい人である」かのように扱ったり、グレタ氏が「(環境問題について)誤解している、分かってない」かのように扱ったりし、バカにして耳を傾ける価値がないかのように扱うことで批判者を黙らせようとする。これは特に声を上げた女性たちに対していつもされてきた攻撃だ。
・小泉大臣はグレタ氏から「PRばかりしてる」と言われているが、自分の責任を自覚して反省しようとする態度ではない。こういう態度を我々はそのまま受け止めてはいけない。

というものです。

しかしながら、
・地球温暖化をはじめとする環境問題について、現在国連SDGsをはじめ様々な取り組みや技術開発が世界規模で進行している。したがって「政治家や企業のトップは何かをやっているように見せかけていて何もしていない」とする主張は明らかに事実に反している。
・ジャイール伯大統領やプーチン露大統領、トランプ米大統領の発言はグレタ氏に対する評価の一つに過ぎず、これらを「行動しなかったことを指摘されて身を守るために揶揄した」とする仁藤氏の主張には一切根拠がなく、事実に即しているとは言えない。
・グレタ氏への批判が「真を突いているから恐れられているのだ」とする仁藤氏の主張には客観的な根拠が一切なく、またグレタ氏の主張を真実だとする立場に一方的に寄っており政治的公平性を欠く。また仁藤氏による自身の活動とグレタ氏の活動および批判される理由を同一視する主張は、活動の規模や内容等を鑑みても事実に即しているとは言えない。
・グレタ氏の演説は「過剰にヒステリック」「大人を一方的に敵対視」「科学的根拠に欠ける」など客観的に見ても明らかに過激かつ根拠に欠けており、こうした演説を行ったことで「落ち着きがない」「誤解している」という批判がされることはある種当然の反応である。にもかかわらずこうした批判や反論についてあたかも事実ではないかのように扱い、「権力者がバカにして耳を傾ける価値がないように扱うことで批判者を黙らせようとしている」と主張する仁藤氏の主張は事実に即しているとは言えない。また、こうした批判が特に声を上げた女性に対してされてきたとする主張には根拠がない。
・小泉大臣によって環境問題が起きているわけではないので、小泉大臣が「責任を自覚して反省すべき」とする主張は事実に即していない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での仁藤氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「グレタ氏の主張は真実であり、大人たちは子どもたちのこうした声を真摯に聞くべきだ」「化石賞を受賞する日本はもっと環境問題に真剣に取り組むべきだ」という立場に立った意見ばかりが出てきました。

ですがこの問題に関しては「グレタ氏の演説は明らかに常軌を逸している」「グレタ氏は中国を批判できないなど明らかに怪しい部分がある」「グレタ氏の主張は事実に基づいておらず真実とは言えない」「日本は技術開発やSDGsをはじめ様々な取り組みを行っている」といった反対の意見があります。

にもかかわらず、今回の報道におけるVTRやパネル説明ではそうした意見をほとんど取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の後編となります。後編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

① イギリスの総選挙における保守党圧勝について報道された部分
については前編の報告を、

② 「風を読む」にて今年の政治について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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