TBS「サンデーモーニング」、2019年12月22日放送回の検証報告(中編)です。
今回の報告では、
① トランプ米大統領の下院での弾劾訴追について報道された部分
② 徴用工問題における韓国国会議長案への反発について報道された部分
③ 「風を読む」にて日本の今年の景気について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
中編で検証するのは、
② 徴用工問題における韓国国会議長案への反発について報道された部分
となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
——–
【VTR要約】
日韓の対立が続く徴用工問題で、韓国の文喜相国会議長らが問題解決に向けた法案をまとめ国会に提出した。日韓両国の企業や個人からの寄付で財団を作り元徴用工らに慰謝料を支払うというものなんですが、一部の元徴用工らは日本企業や日本企業の責任を免除するものだとして猛反発している。一方、輸出管理をめぐっては経産省は半導体などの材料の輸出手続きを一部見直すと発表。特定の条件を満たし企業は手続は簡略化されることになるが、韓国政府は抜本的な解決策としては不十分だとしている。
——-
【コメンテーターの発言】
青木理氏(全文):この間の経緯も含めてざっくりとした解説になりますけれども、日本側・韓国側、この間、日本と韓国の対立がすごい強まったのはですね、日本だとこの官邸ですね。官邸がかなりその、人事だけじゃなくて、政策、外交も主導するようになってる。特にこの安倍さんの支持層、安倍さんご自身もそうなんですけれども、歴史修正主義だったりであるとか保守だったりとか、まあ右派的だったりとかっていう人たちに支えられて、この経産省とかの、いわゆる官邸官僚が牛耳るこの官邸が、例えばその半導体材料の輸出規制ってものをドカンとぶつけたりとかしたわけですね。で、一方の韓国はどうかというと、この韓国ももともと大統領制ですから青瓦台、大統領府の力ってのはものすごく強いんですけれども、まあご存知の通り文在寅さんっていうのは民主化勢力だったりとか非常にリベラルな人たちに支えられていて、側近に実は日本通がいないというようなところで、半導体やられたんだったら今度はGSOMIA、軍事情報の協定でやり返すんだということで、ここで一気におかしくなっちゃったわけですね。で、これにやっぱりさすがにこれはアメリカがまずいだろうということで、トランプ政権、トランプさんご自身は多分あんまり興味ないんだけれども、アメリカの官僚たちがこの日韓に対して圧力をかけたわけですね。お前ら何とかしろと言って、ようやくここにきてこの本来機能するべき外交のその回路ってものが多少動き始めた。日本では外務省。それから韓国では外交通商部ですけども、ここも多少動き始めて、この間のGSOMIAの撤回、廃棄の一時保留っていう決断を韓国側はするようになったんですね。で、もう一個動き始めたのが、日韓っていうのはこれ不思議なことに昔から保守界どうしとの議員外交っていうものがかなりチャンネルとして機能してたんですね。この日韓議連。日韓議員連盟というのがあって、ここに大物政治家がついてこのチャンネルというのがあったんですけど、これも一時期途切れてて今もう人材不足が日韓ともに大変なんですけども、ここも多少動き始めたと。日本ではその、河村建夫さん。幹事長ですね。それから韓国側では文喜相さんという、日韓議連、韓日議連の会長さんが、この人が動き始めて、今VTRにあったアイデアっていうのが出てきたんですね。で、これもVTRにありましたけれども、ようやくこの外交ルートと、それから議員ルートっていうのは少し動き始めたんだけれども、まだ韓国内で、そのVTRにあったように非常に反発が強いんですね。で、日韓の企業と韓国政府が関与する財団だって言ってるんだけれども、韓国側はやっぱり日本政府の真摯な謝罪が必要だというふうに言ってるわけです。だからこれ、ここが対立したまんまで起きたことなんだけど、この動きがうまくいくかいかないかというのは、やっぱり韓国政府がもちろんだけれども、日本政府、日本の官邸がここのところにきちんとフォローする。フォローしてこの動きでまとめていこうっていうようなところに、日本側は、日本の官邸政権の側が寄っていかないと、なかなかこれ実現は難しい。だたせっかくこうやって起きてきた解決の目ですので、両国の政権で、まあ冷静になって日韓が対立して得なことはないんだからこれを育てようという形で、なんていうのかな、うまくコントロールして何とかうまくまとめてもらいたいなと思います。その時のキーワードはやっぱりその日本が過去に犯したことに対する真摯な謝罪だったりとか反省の気持ちってものをちゃんと示して原告の方々を一人でも多く納得させられるかどうか。それが納得させられれば青瓦台もこれでいこうじゃないかという話になるっていう、このフォローの部分がうまくいくかどうかっていうのは、まだ予断を許さないところだなというところですね。
——-
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。
1、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
それぞれ順を追って解説します。
———————————————————————————————————————-
1、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。
青木氏(抜粋):この間の経緯も含めてざっくりとした解説になりますけれども、日本側・韓国側、この間、日本と韓国の対立がすごい強まったのはですね、日本だとこの官邸ですね。官邸がかなりその、人事だけじゃなくて、政策、外交も主導するようになってる。特にこの安倍さんの支持層、安倍さんご自身もそうなんですけれども、歴史修正主義だったりであるとか保守だったりとか、まあ右派的だったりとかっていう人たちに支えられて、この経産省とかの、いわゆる官邸官僚が牛耳るこの官邸が、例えばその半導体材料の輸出規制ってものをドカンとぶつけたりとかしたわけですね。
で、一方の韓国はどうかというと、この韓国ももともと大統領制ですから青瓦台、大統領府の力ってのはものすごく強いんですけれども、まあご存知の通り文在寅さんっていうのは民主化勢力だったりとか非常にリベラルな人たちに支えられていて、側近に実は日本通がいないというようなところで、半導体やられたんだったら今度はGSOMIA、軍事情報の協定でやり返すんだということで、ここで一気におかしくなっちゃったわけですね。
で、これにやっぱりさすがにこれはアメリカがまずいだろうということで、トランプ政権、トランプさんご自身は多分あんまり興味ないんだけれども、アメリカの官僚たちがこの日韓に対して圧力をかけたわけですね。お前ら何とかしろと言って、ようやくここにきてこの本来機能するべき外交のその回路ってものが多少動き始めた。日本では外務省。それから韓国では外交通商部ですけども、ここも多少動き始めて、この間のGSOMIAの撤回、廃棄の一時保留っていう決断を韓国側はするようになったんですね。
で、もう一個動き始めたのが、日韓っていうのはこれ不思議なことに昔から保守界どうしとの議員外交っていうものがかなりチャンネルとして機能してたんですね。この日韓議連。日韓議員連盟というのがあって、ここに大物政治家がついてこのチャンネルというのがあったんですけど、これも一時期途切れてて今もう人材不足が日韓ともに大変なんですけども、ここも多少動き始めたと。日本ではその、河村建夫さん。幹事長ですね。それから韓国側では文喜相さんという、日韓議連、韓日議連の会長さんが、この人が動き始めて、今VTRにあったアイデアっていうのが出てきたんですね。
で、これもVTRにありましたけれども、ようやくこの外交ルートと、それから議員ルートっていうのは少し動き始めたんだけれども、まだ韓国内で、そのVTRにあったように非常に反発が強いんですね。で、日韓の企業と韓国政府が関与する財団だって言ってるんだけれども、韓国側はやっぱり日本政府の真摯な謝罪が必要だというふうに言ってるわけです。
だからこれ、ここが対立したまんまで起きたことなんだけど、この動きがうまくいくかいかないかというのは、やっぱり韓国政府がもちろんだけれども、日本政府、日本の官邸がここのところにきちんとフォローする。フォローしてこの動きでまとめていこうっていうようなところに、日本側は、日本の官邸政権の側が寄っていかないと、なかなかこれ実現は難しい。だたせっかくこうやって起きてきた解決の目ですので、両国の政権で、まあ冷静になって日韓が対立して得なことはないんだからこれを育てようという形で、なんていうのかな、うまくコントロールして何とかうまくまとめてもらいたいなと思います。
その時のキーワードはやっぱりその日本が過去に犯したことに対する真摯な謝罪だったりとか反省の気持ちってものをちゃんと示して原告の方々を一人でも多く納得させられるかどうか。それが納得させられれば青瓦台もこれでいこうじゃないかという話になるっていう、このフォローの部分がうまくいくかどうかっていうのは、まだ予断を許さないところだなというところですね。
要旨をまとめると、
・日韓対立が深化したのは、日本の官邸が人事だけではなく政策や外交を主導するようになり、歴史修正主義で保守的・右派的な安倍首相の支持層や首相本人の意向によって、官邸官僚が牛耳る経産省が半導体の輸出規制を韓国にぶつけたことなどが原因だ。
・韓国は大統領制ゆえに大統領の力が強く、文在寅氏がリベラルで側近に日本通がいないことが影響して輸出規制にGSOMIAで対抗してしまったので物事がおかしくなった。
・GSOMIAの破棄はアメリカにとってはまずいことなので、あまり興味のないトランプ米大統領に代わってアメリカの官僚が日韓に対して圧力をかけた。ここにきてようやく日韓双方の外交が機能し始め、GSOMIAの撤回を韓国が決断した。
・日韓は不思議なことに保守界同士の議員外交が強く、日韓議員連盟が人材不足ながら動き始めた。日本側は日韓議員連盟の河村健夫幹事長が、韓国側は文喜相韓日議連会長が動いたことで、「日韓両国の企業や個人から寄付を募り財団を作って徴用工に慰謝料を払う」という案が出てきた。
・しかし財団を作る案には「日本政府の真摯な謝罪が必要だ」という韓国国内での反発が大きい。日本政府、日本の官邸がこれをフォローし、日本が過去に犯したことに関する真摯な謝罪や反省の気持ちを示して原告の方々を納得させる必要がある。日韓が得なことはない、日韓関係を育てようという風にコントロールし、日本側が歩み寄っていかなければならない。
というものです。
しかしながら、
・今回の日韓対立は、徴用工訴訟問題において韓国最高裁が日本企業へ賠償を命じるなど韓国側が国際法である日韓請求権協定に違反したことが発端であり、日韓対立の原因があたかも日本側にあるかのような説明は明らかに事実に反している。
・日本によるいわゆる「ホワイト国」除外措置、輸出管理適正化は韓国側の危険物管理に安全保障上の懸念があることが直接的な理由であり、安倍首相や支持層の保守的な意向によるものとする主張は事実に即しているとは言えない。
・時の政権が政策や外交を主導することはごくごく当然のことであり、これを問題視する姿勢は事実に即した物とは言えない。また、安倍政権ならびにその支持者を「歴史修正主義者」とする主張は何ら根拠のない誹謗中傷であり、事実に即しておらず政治的公平性を著しく欠く。
・文在寅氏がリベラルであることや、側近に日本通がいなかったことは、韓国が日本への一方的な報復措置として安全保障を棄損するGSOMIA破棄を持ち出したことを何ら正当化するものではない。また一方的に文政権を庇う主張は政治的な公平性を欠く。
・GSOMIA破棄についてアメリカから考え直すように強く迫られたのは韓国であり、日本も韓国と同じように圧力を受けていたとする主張は明らかに事実に反している。また日本は今般の日韓対立において一貫した外交姿勢を取っており、日本の外交が機能していなかったとする主張は事実に即していない。
・日韓徴用工問題は韓国側が一方的に日韓請求権協定に違反している問題であり、韓国側が国際法を遵守することが求められる問題である。したがって「日韓議員連盟が出した財団を作る案を実現すべき」「日本政府や官邸が韓国側の意向をフォローして真摯な謝罪や反省の気持ちを示して歩み寄るべき」といった主張は明らかに事実に反しており、また国際法に違反する韓国側を不当に庇うもので政治的に公平とは言えない。
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「日本は過去に犯したことに関する真摯な謝罪や反省を示して韓国に歩み寄るべきだ」「日韓対立が続いて得なことはないのではやく韓国と折り合いをつけるべき」という立場に立った意見ばかりが出てきました。
ですがこの問題に関しては「日韓請求権協定を破る韓国側に100%責任があるので日本は毅然とした態度で韓国に国際法順守を求めるべき」「日韓関係による損得は韓国による国際法違反を黙認する理由にはならない」といった反対の意見があります。
にもかかわらず、今回の報道におけるVTRやパネル説明ではそうした意見をほとんど取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の中編となります。中編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
③ 「風を読む」にて日本の今年の景気について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。
① 徴用工問題における韓国国会議長案への反発について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。