1月8日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。
・様々な論点を提示した放送であったか
まずは放送内容を確認していきます。
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【スタジオ】
富川悠太アナウンサー(以下富川アナ):日本時間の今朝7時半ごろイランが、イラクにありますアメリカ軍の基地に少なくとも十数発ミサイル攻撃をしたんですね。しかも弾道ミサイルだったというんです。その理由についてイランの革命防衛隊はソレイマニ司令官殺害に対する報復の始まりであるとしていますがトランプ大統領はどう対応していくんでしょうか。緊張は一層高まっています。
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【VTR】
ナレーション(以下ナレ):これはイラン西部で撮影された映像です。革命防衛隊の基地からミサイルが次々と打ち上がっていきます。アメリカへの報復を宣言していたイラン。狙ったのはイラクにあるアメリカ軍の駐留基地でした。最高指導者のハメネイ師は…。
ハメネイ師『“平手打ち”をくらわせた。昨夜の軍事行動ではアメリカに対して十分とは言えない。大事なことは――腐敗したアメリカがこの地域から消滅することにある』
ナレ:今回の攻撃に関してイランはアメリカ人を80人殺したとしています。ただ、イランはイラクに対して基地攻撃を事前通告していてトランプ大統領も今のところ人的被害については否定しています。
トランプ大統領『万事良好だ! 被害状況と負傷者の分析を行っている。今のところはまずまずだ。(Twitterから)』
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【記者レポート】(要約)
布施哲ワシントン支局長:緊張が続くアメリカとイラクとの関係ですが、トランプ大統領は本音ではコストがかかる戦争は避けたいと考えており、今回の司令官暗殺は11月の大統領選に向け、強気の外交をアピールすることが目的です。その裏付けとしてアメリカは今回の報復攻撃の兆候を事前に把握しており、先んじて攻撃をすることもできたはずでしたが基地の守りに終始していました。この後トランプ大統領の会見が予定されていますが、大規模な報復は行わず経済制裁などの緩やかな対抗措置をとるのではないかといわれています。
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【コメンテーターによる解説】
富川アナ:このあとトランプ大統領は会見で、どのようなことを主張するのか。
徳永有美アナウンサー(徳永アナ):そこも注目なんですけども内藤さん、イランが実際に報復ソレイマニ司令官の埋葬が終わって、早速という形ではありますね。
内藤正彦氏(以下内藤氏):やるタイミングとしてはこのタイミングとみてた人は現地で多いみたいなんですけど。非常に注意深く慎重に練られた報復なんですよ。3つの効果を狙った形跡があって1つは象徴的な意味で。ソレイマニ司令官を爆殺したドローン、AIで無人で爆弾を落とす。それが要するに発着したといわれているアサド基地をたたいたということ。つまり直接、飛んできたところに報復したことが1つ。
徳永アナ:それが象徴的な攻撃だと。
内藤氏:もう1つは軍事的な実利ですね。テヘランというイランの首都それからアサド空軍基地。この距離というのは東京と博多ぐらいです。もう1つのアルビルの基地は大体東京から広島ぐらいなんです。そこから爆撃機が飛ぶと、すぐに首都がたたかれてしまう。そこの要するに滑走路をたたくことができれば首都を空爆されるリスクは減るんですね。実際、ハメネイ師もそう言ってるんですよ。我々は革命防衛隊の手を逃れたけど我々は、アメリカ軍の足を切り取ったと切断したというふうに言っているのはこの部分だと。
徳永アナ:それがいわゆる滑走路だと。
内藤氏:3つ目は外交的な戦略効果ですね。要するにアメリカ軍の軍人、兵士に人的被害を出さない形で。つまり言い換えればアメリカ軍に反撃軍事的な反撃、報復の動機を高めないでやはりヒートアップを避けたいというメッセージを外に発している。
徳永アナ:今回もイラン攻撃のあとに戦争を求めているわけではないというコメントも出しているわけですね。
内藤氏:ギリギリのところを狙って報復をしたい。この辺なら大丈夫じゃないかという。本音が透けて見えますね。
徳永アナ:11月のトランプ大統領選挙がありますからそこに向けてどうしていくかもありますよね。
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【検証部分】
イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官殺害によってイランとアメリカで緊張が高まっているという論調で報道がなされていました。
イランによる報復のやり方についてはさらなる報復を生まない方法ではあったものの、緊張状態が続いています。
ソレイマニ司令官殺害に端を発する一連のイランとアメリカを巡る国際情勢ですが、ソレイマニ司令官がどのような人物であったかの放送はなされていません。
ソレイマニ司令官はイラン革命防衛隊の工作部隊の司令官です。
工作部隊とは、イラン体制派と同じシーア派勢力に対する武器や資金の支援などテロ活動ともいえる行為です。
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ソレイマニはイラク、シリア、レバノン、イエメンでシーア派民兵に武器を与え訓練を施して懐柔し、彼らを各地の手駒として使うことでイランに利益をもたらすための工作活動を進めてきた。
2011年から始まったシリア内戦では、アサド政権を支えるため中東各地からシーア派民兵を集めて投入し、反体制派を町ごと包囲して人々を飢えさせて降伏に追い込むという極めて残忍かつ非人道的作戦でマダーヤー、クサイル、ザバダーニーなど数々の反体制派拠点を陥落させた。毒ガスなどの化学兵器使用を指示したのも彼だとされる。これらの作戦により殺害されたり、故郷を追われたりした人は数十万人とも数百万人とも言われる。
米国務省は、ソレイマニは600人以上のアメリカ人の殺害に関与したと発表したが、彼はそれよりはるかに多くのシリア人やイラク人、レバノン人、イエメン人などの虐殺・迫害に関与してきた。これら諸国の迫害された市民たちにとって、ソレイマニが「英雄」であるはずがない。
≪引用 飯山陽 現地SNSに溢れるハッシュタグ「イラン人はソレイマニが大嫌い」 メディアが“偏向報道”する「イランの真実の姿」
週刊文春デジタルhttps://bunshun.jp/articles/-/25001?page=3≫
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このようなテロ活動を行っていた人物の排除により、中東情勢を安定化させるという狙いもトランプ政権にはあったのでは、と飯山氏は続けて解説しています。
ソレイマニ司令官殺害によってイランは面子を守るためにも報復を行う必要がありましたが、ソレイマニ司令官殺害がなぜ必要であったのか、という論点には全く触れられていない放送であったと言えます。
このような放送は以下の放送法に抵触する恐れがあります。
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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して今後も監視を続けて参ります。